◆演繹推理と帰納推理
演繹推理とは、普遍的な知識や法則から出発し、これらを用いて、個別的な状況を予測する推理です。「AならばBである」と「BならばCである」から「AならばCである」を導き出す三段論法は演繹推理です。演繹推理では前提となる知識や法則が正しければ、得られる結論も正しいものが得られます。しかし、演繹推理では前提の中にもともと推理される内容が含まれており、新しい法則や知識を必要とする場合には対応することができません。
帰納推理とは、個別的な知識から出発し、これらを総合することにより、より普遍的な知識や法則を得ようとする推理です。演繹推理と異なり、新しい法則や知識を導き出すきっかけとなるものです。しかし、帰納推理は不確実なもので、結論が正しいとは限りませんので、さらに検証が必要になります。
◆科学的真理の認識の過程
科学において、真理の認識のためにまず行われることは、観察や実験によるデータの収集です。そして収集されたデータが、整理され分析されます。このような観察や実験によるデータの整理分析から、帰納推理により仮説が作られます。帰納推理は不確実なものであり、結論が正しいとは限りませんので、さらに検証が必要になります。
仮説の検証の方法としては、仮説を前提として、演繹推理により別の特定状況に関して予測が行われます。一方、その特定状況の実測データをとり、予測データと実測データとの比較が行われます。これらのデータが一致すれば仮説が正しい可能性が高まります。
新たな特定状況のデータは、多くの場合は実験により得られます。しかし宇宙に関するものなど、実験できない場合は、仮説をつくるために用いたデータとは異なった、別の特定状況の対象から得たデ-タを用いることもできます。仮説による別の特定状況の予測データと、その特定状況の対象から得た実測データとを、比較することになります。いずれにしても、仮説に基づく予測と、他の実測データとの照合による検証という手続きを踏むことでは同じと言うことができます。
このように、帰納推理による仮説の設定、特定状況に関する、仮説に基づく演繹推理による予測データと、その特定状況の実測データとの比較による検証を経て、仮説は確立された理論へと発展していきます。
◆科学的真理認識の基準
要するに、「仮説により描かれる像」は、「現実の像」である実測データによる検証にさらされるのであり、真理の基準は現実によって与えられるということです。その現実は、実験と言う形で、人為的に単純化される場合もあります。
宇宙の出来事に関する理論に関しては、人為的に条件を設定する「実験」が困難な場合が多いでしょう。そこにある現実とのかかわりはすべて「観測」データとしてしか与えられません。しかし、このように実験ができない状況においても、検証は可能です。
科学的検証は、実験によるか、よらないかを問わず、ある特定状況の「仮説による予測」と、その状況の「現実」との比較、すなわち現実を基準にすることにあるのであって、実験は、そのひとつの態様にすぎないと思います。