前回なんともストーリーチックなオチを付けてしまったがそのカミングアウトというのはこんなものであったのである。田嶋省吾。彼は高校時代からの友人であり、まあ現在は奇しくも同様の学者として、地質学者として社会の発展のため邁進している。
「旅ならいつでもできるだろう。学会なんか常にちょっとした旅行だぜ」
「違う違う。大体学会なんてロクに遊べやしないだろ。そういうんじゃなくて長旅がしたいの。よく見るだろ、あの200万くらいで世界一周とかいう張り紙。あんな感じの大それた旅だよ」
「そこそこ稼いでんだから行けばいいじゃないか。達者でな。今迄楽しかったぜ」
「そんな煙に巻こうとするなって。あと今生の別れになるような危険な旅はしねーよ。面倒を承知なのも分かってる」
「それより俺しか反応していないところを見ると他の三人は会話すること自体面倒くさがってるんじゃないのか」
「酷いこといいやがるな。既読は付いていないからきっと寝てるんだよ。折角の休日だし。まあ聞いてくれる奴がいるだけありがたいさ」
意外とポジティブな奴である。因みにさっき他の三人はTwitterで発言していることも確認済みだ。そりゃ面倒臭いさ。この類の宣言はこれで四回目だもの。
「それで、今度は何に影響されたんだ?確かついこの前までは若き天才魚類学者に触発されて東京海洋大学の研究室に突撃しようとしていたじゃないか」
「アレは忘れろ」
あの件は大学に俺が海洋生物の実地調査で知り会った教授がいたので俺が全力で取り抑えた。当たり前だ。俺の差し金だと思われるだろうが。
「それなりにいい大学出てるんだ、その職を手放すのはどうかと思うぞ」
「いや研究室は抜けねーよ。地質調査という名目で行くさ」
「なら最初からそう言え。松尾芭蕉みたいな旅をするのかと思ったじゃないか」
「奥の細道通りに旅をする自信は俺にはねーって。別に今回は相談って訳じゃない。単なる雑談だよ」
単なる雑談のために週末の時間を潰してくれたのかこいつは。このような会話は常にしているが今回は特にウンザリする内容である。オチも何もないがこれも日常だ。平和でよろしい。
