700,000人の物語 | フィラデルフィア ICM 便り

フィラデルフィア ICM 便り

ソーシャルワーカーの見たアメリカ底辺事情

先週はPhiladelphia Forensic Task Forceの月例ミーティングでした。


今月は大変に興味深いドキュメンタリー映画の紹介と鑑賞。



Pull of Gravity



刑務所から出所した男達のその後を追ったドキュメンタリーです。


3人の男達が主人公。


一人は州刑務所経験のあとHalfway House(出所した人たちが社会への復帰へのクッションとして数ヶ月から半年ほど暮らすグループホームです。ソーシャルワーカーも常駐していて、元受刑者の仕事・アパート探しの監督・サポートをします。門限など厳しい決まりがあります。)を経て、今では地域で自分の二の舞を踏ませまいと若年層をモニター、サポートする仕事をしています。


この男性、エルさんはミーティングにも来られていて、映画の説明にもあたっていました。ポジティブで頭の切れる男性というイメージでした。


後の二人のうちの一人はまだ20代そこそこの若さ。

もう娘も居ます。このドキュメンタリーを撮り始めた時点では、出所して3日目。近所のドラッグギャングにまみれて育った若者。彼の不安定な状況や不安、若い彼の家族への重責などが画面に映し出されていきます。


もう一人は40代の男性。

彼は年季の入った中毒者です。この人は映画の中で過去20年からのドロ沼人生の苦悩と後悔を吐き出すように語り続けます。


エルさんも含めて3人の母親や妻などの家族、彼らの周辺の人々の苦悩や状況も映画は追っていきます。


このドキュメンタリーはペンシルヴァニア州のU.S. Atorney's Officeが後押しして製作されたものです。


映画の紹介冒頭にも出ますが、アメリカで毎年700,000人からの受刑者が出所しています。その多勢が再度、刑務所に戻ってくるのが現状。法曹界がようやく「これはどういうことだ。犯罪と出戻り受刑者の数を減らすには何か違うアプローチをしなければいけないのではないか」という視点に立って、何が問題なのかを元受刑者を追うことで見せよう、考えようと試みたものです。


上映の後にエルさんが映画の中の二人の男性達が残念なことに再び刑務所に逆戻りしてしまったことを報告されました。これが現実なんです。


映画内でも語られますが、例えば仕事やアパート探しに付きもののバックグラウンド(犯罪歴)チェックは社会復帰への大きな足かせのひとつとなっています。


家に戻っても仕事はない、自分と家族を食わせないといけないなどで、違法行為にあっという間に走ってしまう輩が多勢。出所後、戻る先が貧困、暴力、ドラッグにまみれていれば、更正のチャンスもわずかです。そういう状況と彼らの苦悩を追ったドラマでした。


この映画プロジェクトはすでに大きな反響が出始めていて、他の州や連邦レベルからの問い合わせにも対応しているとの事。


こういう取り組みが法曹側からも始まっていることを嬉しく思う反面、実際の改革は多角的な取り組みと協力が必要なものだけに大変な道のりと思われます。


とにかく、このような意識の変化が出てきたことはおよそ初めてだと思うので、期待をしたいところです。


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フィラのダウンタウンより北に上がった地域にあるAmerican Street。

昔は広い道路に倉庫などが並んでいた、もっと活発な地域だったようです。今でも(恐らく倉庫への搬入・搬出用に使われた)路面電車のレールが残っています。