『乳と卵』の8年後。
小説家としてデビューしたもののパッとしない毎日の夏子。
そんな中、夏子の心の中に湧き上がる思いが・・・
「自分の子どもに会いたい」
しかし恋人のいない夏子は
AID(非配偶者間人工授精)について調べ始める。
そう、ちょうど8年前、姉の巻子が
とりつかれたように豊胸手術について調べていたように。
実際にAIDで生まれて苦しむ人々との出会い。
自分は何のために子どもを望んでいるのか?
揺れ動く自分の心に真摯に向き合う中で夏子の出した答えとは。
『乳と卵』はとにかく読みづらさが先に立って
あんまり入っていけなかったけど、
本作は、対照的に、しつこいくらいの事細かな心理描写で
なかなかなボリュームだった。
どの部分に、誰の言葉に、引っかかるかは、人それぞれだと思うけれど、
私の一番の感想は
「巻子はほんといい人だな〜!」
あんなに繊細だった思春期前の緑子が
溌剌とした明るい若者に成長しているのが何よりよかった。
夏子も緑子も、巻子の愛情をいっぱい受けているのが分かる。
善さんにも光が当たりますように
というより、善さん自身が光に気づけますように
望んでいなくても、
生まれたからには死ぬまで生きていくしかないのだから
闇に沈まないで、しぶとく光の方へ進んでほしいと思う。
正直、善さんにしろ逢沢さんにしろ
問題の本質はAIDではない気がしたけれど。