境内に足を踏み入れると風見幽香は差していた日傘を畳んだ。
今日は神社の桜が満開になっていた。今年は昨年に六十年周期の花の異変があった影響か、開花日がなかなか定まらずに春が来ようとしていたが、ここの一番の古株にちょいと刺激を与えたらすぐに美事(みごと)な花を咲かせだした。
幽香は数歩進むと、ちらと舞い散る花びらを仰ぎ見て両手を前に伸ばし、瞑目した。すると薄紅の花びら達は一斉に踊り出し、彼女を彩るように包み込んだ。
ふう、と一息吐き、両手をおろすと花びら達は蜘蛛の子を散らすように霧散していった。
それから神社の奥の方へ足を向けた。
社務所まできてみたが、そこに期待する人影はなく、代わりに花見酒の名残か酒瓶と杯が縁側に放置されていた。
丁度いいと幽香は縁側に座り込み、酒を注ぎだした。
しかし、いざ呑もうとするところに横合いから声をかけられた。
「こら、なに勝手に人ん家の酒のんでる。」
「いいじゃない、そこにお酒とお花があるんだから。私はそれ以上は望まないの。」
居直り強盗も唖然とする言い草に声をかけてきた主、神社の巫女を務める博麗霊夢は溜息すらでず、瓶を挟んだ隣に腰掛けた。
霊夢は縁側に座るや否や懐から杯を取り出し、酒を注いで一気にあおった。
というよりも巫女にとっては神社に妖怪が入り込むよりも酒を飲まれることの方が重要なのか、この巫女は常に杯を携帯しているのかと色々つっこみたいことはあったが、横目に流し見るまでに留めて幽香も酒をあおった。
ちらりと霊夢の顔を見やると桜の花を仰いだままぽけーっと口を半開きにしていた。
面白いからその隙だらけの頬っぺたをつまんでみた。
「い゛っ!」
そしたら針が飛んできた。
しかし、至近距離で霊夢の放った幾本の針は幽香に当たる寸前で花びら一枚一枚に受け止められた。
ああもう、と霊夢は自棄になったかのように二杯目の酒を注ぎ、一気に呑み干した。そんな霊夢が可愛らしく思えてきて幽香はくすりと微笑んだ。
「あによ。」
「なーんにも。」
幽香は霊夢の手から酒瓶をひったくり、二杯目を呑んだ。
視線をあげると一際美事な桜の花が咲いていた。幹に最近できたような痛々しい傷跡があったが、咲かせる花は幻想郷一桜の綺麗な場所と言われる博麗神社の中でも一層誇らしげに咲いている。
「桜を見るだけなら冥界にでも行けばいいのに。」
「あっちは何か、肌に合わないのよ。」
「なんだそれ。」
「そこにせっかく素晴らしいものがあっても、楽しめないんじゃ仕方ないじゃない。」
適当に詭弁を弄し、幽香はまた踊り狂う花びら達を眺め始めた。
ほんのりと頬が熱くなっているのを幽香は自覚した。
「でも、これほど綺麗な桜の花を見るとね、」
「あん?」
「昔のことを想い出すのよ。」
遠い、紫の花。真っ赤な花。そして、目の前にあるような、薄紅。
甘く、この上なく苦い。遠い昔のジュブニリア。
やけに静かだと思ったら霊夢は幽香を見て目を真ん丸にし、これまたぽかーんと口を開けていた。
とりあえず幽香はその頬っぺたをひねりあげておいた。
_______________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
はい、こんにつわ。
今回はプロローグとなります。予告のようなもんですね、次回となるかはさておき‥‥‥
タイトルは予告なく変更になる場合がございます。てか変更する予定があります。
文章の書き方がまるで安定していないですが‥‥‥^^;
行間あけすぎると携帯だとすんごい読みづらいんで今回は出来るだけ詰めときました。
内容についてなんですけども、幽香の回想っぽくなってますが本編は別の人が主人公です。誰かって?あの方ですよ。
こんなん書いても桜はもう散ってますよぉ、えぇ。この時期だけは家からでなかったことを後悔しました。
とりあえず本編は来年ということで( おい
ではでは[壁]_-)