ジェネリック・パラドックス | 薬剤師発!健康へのブログ

ジェネリック・パラドックス

保険薬剤師の米澤よしゆきです。

今回は、いま医療が抱える問題についてお話します。


この問題はさまざまな意見、考え方がありますので正解は僕にはわかりません。
皆さんも医療現場の人間の気持ちで考えてみてください。


昨年末、

厚生労働省は生活保護の受給者にジェネリック医薬品を服用するように通達しました。強制ではないのですが、生活保護受給者は福祉事務所の相談員などと話し合い、医薬品の処方はジェネリックを選ぶようにとのことです。


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ここで、ジェネリック医薬品について簡単に述べますと・・

特許の切れた医薬品(先発品)について、同じ有効成分で製造された安価な医薬品で、厚労省が「先発品と同等の効果を持つ」と認定した薬です。日本での普及率は20%となっています。ちなみに、09年ではアメリカで普及率70%、イギリスで65%、日本はジェネリック後進国といえます。
ちなみに僕の薬局で30%ほどです。

今回のハナシはジェネリックの是非を語るものではありません。ジェネリックの使用について賛成の人、反対の人、さまざまな意見があるでしょうが、今回は横においておきましょう。


現在、サラリーマン家庭や自営業の方の医療は医療保険で支えられていますが、国の医療費の増大に伴って、医療保険サイドからもジェネリックの使用を薦められていることと思います。

実際、僕の調剤薬局でも「少しでも薬の負担金額が抑えられる」と、ジェネリックに変更する方が多いです。厚生労働省が「効果は同等」としているんですから、1円でも安いほうがいいという考え方はもっともであると言えます。(これにも賛否あるとおもいますが、本題はここではありません)

これによって、家庭の負担も軽くなり、国の医療費も削減されるという訳ですが、生活保険受給者の場合はお薬の負担が無料ですのでジェネリックに変更するケースが極めて少ないのです。

これはやや乱暴な意見ですが、「負担額のある患者が安いジェネリックを使って医療費を削減しているのに負担無料の患者が高い先発品を選ぶのか」という多くの声が役所に届いてるようです。

もし、生活保護受給者の6割がジェネリック医薬品を選択すると、生活保護費のうち医療費に充てる医療扶助を国・地方分で計141億円削減できるとしています。

しかし、一方で、生活保護受給者にジェネリックを選ばせることは弱者への差別的行為という声もあります。強制ではなくてもこのような通達があれば、プレッシャーになりますよね。
また、調剤薬局としても生活保護受給者にジェネリックを窓口で薦めた場合、他の薬局に行かれてしまうと考え、ジェネリックを薦めないケースも多いのです。

医師や薬剤師がフラットな目で「ジェネリックに変更しても支障がないもの」を厳選して生活保険受給者にジェネリックへの変更を相談すると言うのが正解なんでしょうが、受給者側にもジェネリックへの充分な理解が必要です。


難しい問題です・・・

しかし、このあたりの問題をクリアしないかぎり、国が目指すジェネリックの普及率が上がることはありえないでしょう。