宿便について | 薬剤師発!健康へのブログ

宿便について

保険薬剤師の米澤よしゆきです。


先日、ある20代後半のOLさんが皮膚科を受診され

僕の薬局に来局されました。


急に顔中ニキビのような吹き出物ができて、慌てて

皮膚科に駆け込んだとのこと。


処置としては、とりあえず肌のコンディションが悪いので

しっかりと低刺激性のスキンケアを薦めつつ、抗生物質の

塗り薬と飲み薬が処方されました。


この女性いわく、今までこれほどニキビができたことないので

すごく驚いているようですが、話を聴くと10日前ほどに友人と

腸内洗浄を行ったとのこと。

「宿便を取ったら3キロ痩せると言われたから」


これは誤った情報を信じてしまった典型的なケースです。

結論から言いますと、腸内洗浄でいくらかの腸内細菌が流され、

何種類もの細菌でこれまで数十年間良好に築いていた腸内環境が

崩れた可能性があります。それでニキビとなって肌が荒れ始めたと

考えて良いと思います。


腸内洗浄とは宿便を取り除いて便秘解消やダイエットに役立てようと

いうものですが、はたして宿便とはどういうものなのでしょう???


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医学的には宿便という言葉は存在しません。

また、「腸壁にこびりついて取れない便」も存在しません。

腸の壁は山と谷を交互にして動かし、こびりつく便というものは

発生しないことがわかっています。

「腸壁にこびり付いた老廃物」

「ヘドロ状の便で排出されず、血液を汚して病気を引き起こす」

「タール状のもので、体内毒素を発生させる」


など、実際自分のお腹にこんな便があるとなれば、誰だって怖いです。

しかし、ご安心ください。

そのような便はありません。

面白いことにウィキペディアの「宿便」の項では、あまりにも書くことが

なさすぎて仮説や滞留便についての記載がほとんどで、宿便本来の意義と

しては「甲田光雄」の怪しいトンデモ持論しか載っていません。




しかしながら、実際に「滞留便」というものは便秘症の方に

見受けられます。

この滞留便とは、本当なら数時間から1~2日で排泄される便が

数日間排便されず腸内に滞在しているものです。

たしかに滞留便も便秘・肌荒れの原因であることに違いないですが、

わざわざ腸内洗浄せずとも他にもっとローリスクな排泄の方法が

あります。

仮に腸内洗浄で滞留便と腸内細菌を全部流したとしてせいぜい2kg

までですが、数日(数時間の場合も)で元の体重に戻ります。

また、「野菜を多くとって宿便を取ろう!」

という話もよく耳にします。

たしかに食物繊維は滞留便解消に役立ちますが、宿便と結び付けては

いけません。酵素も関係ありません。



「じゃあ、断食したときに何も食べてないのに便が出るでしょ!

あれは宿便でしょ!!」

という方多いです。

あれは宿便ではありません。

たとえ毎日水しか取らなくても腸内ではこれらの腸内細菌が次々に

増殖しています。同時に腸壁の細胞が新しい細胞に入れ替りはがれ落ち

ますので、これらが合さって何も食べないときでも便として毎日出て

くるんです。前述のような「宿便」ではありません。


ここまで宿便については警鐘を鳴らす記事になりましたが、

決して便秘症を軽んじているわけではありません。

便が出にくいというのは早めに治療するべきものです。

しかしながら、おせっかいかもしれませんが

医療従事者として、宿便をうたうものについては疑ってかかる

ほうが良いのではと思います。



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