――――――
――――
兄「……う」
妹「……」
兄「此処、は……? え……い、妹……!?」
妹「お兄ちゃん」
兄「妹ッ!? お前、お前――」
妹「お兄ちゃん、お話しに来たの」
兄「お話……? ああ、そんなこと、いくらだって……」
兄「でも、此処は……俺は……」
妹「思い出せない? お兄ちゃんは……飛び降りたんだよ」
兄「……ああ、ああ……そうだ、俺は……死のうと……」
妹「……どうして? どうして飛び降りたの?」
兄「……分からなくなったんだ。自分が何のために……頑張ってるのか。何のために生きてるのか」
兄「お前は死んじまった。幼馴染にも、俺はどんな顔して会えばいいんだ。妹を殺した、俺が。俺なんか、生きてても……」
妹「……お兄ちゃんまで、そんなこと言うの?」
兄「妹……」
妹「幼馴染さんも、言ってた。妹さんが死んだのは、私のせいだって。二人とも、どうしてそんなことを言うのかな」
兄「だって、そうだろ。あの時、俺がお前を注意していれば。しっかり手を握っていれば!」
妹「私のしたことは、私の責任だよ! お兄ちゃんは悪くない! 幼馴染さんだってそう。死んだのは、私。なにも……お兄ちゃんまで死ぬ必要なんか、無い!」
兄「……」
妹「……」
兄「……泣くなよ」
妹「……お兄ちゃんだって」
兄「俺は……」
兄「俺は、死んだのか?」
妹「……ううん。まだ死んでない。意識を失ってるだけ」
兄「……どうすればいい。俺は、これから……」
妹「生きて」
兄「……」
妹「もう二度と、飛び降りたりなんかしないで。生きてることを無駄にしないで。
お兄ちゃんは、私と違って、生きてるんだから」
妹「ほら、聞こえるでしょ。幼馴染さんの声。お兄ちゃんのこと、呼んでるんだよ」
妹「答えてあげてよ、お兄ちゃん」
兄「……妹」
妹「……うん」
兄「……俺は、やり直す。今度こそ、生きてみせる」
妹「うん。頑張ってね」
兄「ありがとう。……それと。ごめんな。あの時、お前を守ってやれなくて」
妹「ううん。私こそ、ごめんなさい。お兄ちゃんの言葉、無視して」
兄「……じゃあな」
妹「……うん」
――――――
――――
兄「……う」
幼馴染「――!? あ、兄! 兄っ!! 目が、覚めたの!?」
兄「幼馴染……」
幼馴染「そう、よ! 私よ! あぁ……良かった……本当に……」
兄「……ごめんな。ずっと……お前のこと、避けたりして……」
幼馴染「え……い、いいよ、そんな……そんなこと、気にしてないから」
兄「……妹と、話をしたんだ」
幼馴染「え……?」
兄「あいつが……助けてくれた。生きろ……って。生きてることを、無駄にすんなって……」
幼馴染「やっぱり……妹さんが……」
兄「はぁ……馬鹿だな俺は……なんで……なんで、こんなことしちまったんだろうな……」
幼馴染「もう……いいの。これから、私も頑張るから。あなたが抱え込まないように、私も、一緒にいるから」
兄「……ああ。ありがとう。幼馴染」
幼馴染「礼を言うなら……妹さんに、ね」
幼馴染「妹さん――……」クルリ
振り返った視界の中に、その気配は無かった。
本に刻まれていたはずの言葉は、跡形もなく消えている。
彼女は――既に消えてしまっていた。
幼馴染「……妹、さん」
――
「――ごめんな。ずっと、お前のこと避けたりして――」
「――い、いいよ、そんな……そんなこと、気にしてないから」
妹「……はぁー……やることやったし、帰ろっか……」
妹「あいたたた……体の節々が……痛い……痛む体なんて、無いはずなのになぁ……」
妹「ぁ……眠い……眠いなぁ……」
妹「……お兄ちゃん……幼馴染さん……」
妹「……」スゥ
一年後
――墓地
兄「――よう、妹」
妹「あ、お兄ちゃんじゃーん! お久しぶりぃ! 一年ぶりだねー!」
兄「悪いな。墓参り、遅くなって。リハビリとか色々あってさ。でも、去年と同じ日に来れたのは……良かったかもしれない」
妹「そうだねー。でも、元気になったみたいで良かったよ、私」
兄「ほら、これ。ヒマワリ持ってきてやったぞ」
妹「わぁ! ありがとお兄ちゃんっ! やっぱり華があるかないかじゃ違うね! 嬉しいなぁ……」
兄「俺は幼馴染みたいに、上手くないけど……ほら、これなら、暫く大丈夫だろ」
妹「あ、良かった、幼馴染さんと仲良くしてるんだね? ずっと心配だったんだー、最後の方、聞いてなかったからさ!」
兄「……ありがとな、妹」
妹「うひひ。二度も言われて私興奮しておりますよ。うひひ」
兄「あれから、また頑張って仕事してるんだ。辛い仕事だけどさ……幼馴染が、支えてくれるんだ。勿論、母さんたちもだぞ?」
兄「心の支えがあるってのは……本当に、力強いことなんだな」
妹「お兄ちゃんからそんな言葉が聞けるなんてなー。私も……私も。頑張った甲斐があったよ」
兄「俺は、これからも頑張る。自分の為、幼馴染の為、母さんたちの為……それと、お前の為に」
兄「お前は俺に、そうしてほしかったんだよな」
妹「……うん。うん、そうだよ……ほんと、にっ。そうして……ほしかった」
妹「私はお兄ちゃんに、幸せになってほしかったんだ」
――
兄「……また、来るよ。今度は幼馴染も連れてくる。いいよな?」
妹「もっちろん! 大歓迎しちゃいますよ!」
兄「……ま、どっちにしろ、連れてくるけどさ」
妹「そうそう、むしろそうしてよね!」
兄「……じゃあ、また」
妹「うん! ばいばい!」
妹「……」
妹「――元気でね、お兄ちゃん!」
終わり