先日亡くなられた偉大なるチャック・ベリー先生により世に生み落とされたロックという最高のエンターテインメント。
そいつが生まれて半世紀以上が経ちますが、時代と共にジャンルの細分化が進み、いまや数え切れないほどの種類のロックが蔓延しています。
プログレッシヴ・ロックというのはまた最近じゃ耳に馴染みのない響きかも知れませんが、60年代後半から70年代にかけてブームとなったロックのジャンルのひとつで、ざっくりとした特徴として長尺の曲が多い、技巧的、複雑な曲構成といったところが挙げられます。
僕の贔屓はルネッサンス。70年代に大活躍したプログレッシヴ・ロックバンド。シンフォニック・ロックというクラシック的アプローチの強いジャンルにカテゴリーされることもありややこしい連中なのですが、とってもいいバンドです。
まるで絵本や童話の中に迷い込んだようなファンタジックな世界観が魅力の名作多き彼らですが、とりあえずはこいつを。
どこ見てる男。
こいつは73年発表の『ASHES ARE BURNING』(邦題『燃ゆる灰』)。
トータル的な面では78年の『四季』あたりの方が好きなんですが、これも素晴らしき名作。
しかし何といってもまず聴いてもらいたいのは1曲目『Can You Understand』。この曲のピアノのリフ。
リフといえばロックの世界ではギターによるものがフィーチャーされがちですが、このピアノリフがリフとして認識されさえすれば、ロック史に残る名リフとして語り継がれることは間違いないと思えるほどの感涙ものの絶品リフなのです。
それはさながら激しく降り注ぐ雨のようでもあり、心の奥に秘めた哀しみを叫び、吐露するようでもあります。
そしてラストに再び繰り返されるリフに絶えられる涙腺など存在しない。
このリフだけでも当然聴く価値ありのこの『燃ゆる灰』ですが、収録曲数が少ない分各曲がよく練られており、全体を通しても聴きごたえは充分。コンピューターサウンド全盛の現代ではなかなか味わえない優しく包み込むような温かさに満ちた名盤です。
そしてその温かみのある音に鮮やかな彩りを添えるアニー・ハズラムの魅惑的な歌声。彼女は間違いなく70年代最高の女性ヴォーカリストの一人でしょう。
というわけでみなさんどうぞルネッサンスのファンタジーワールドへ。