そんな東山からもう一つ大好きな絵を。
『花明り』(はなあかり)。
たかだか一本の枝垂桜のなんたる絢爛豪華さよ。
満月と桜というのは元来ぺこ&りゅうちぇる並みに相性の良いものとされていますが、その二大モチーフにさらに東山の腕を以ってすれば駄作になどなろうはずがないというもの。
しかしながらただでは終わらせず、この独特の構図。
東山はその構図の妙一つにも個性の出る画家ですが、これのように縦一直線上に主題となるモチーフを並べるのは絵画界にも珍しいもののように思います。
その構図も相まってか、桜がまるでスポットライトの下に堂々と佇むロックスターのよう。
絢爛豪華な立ち姿からこれはもはや和製スティーヴン・タイラーですね。
そして桜の幻想的な淡いピンクの美しさたるや。
日本画の桜によく見られる淡いピンクを見て初めてピンク色を好きになったものです。
この絵は京都市東山区の円山公園にある枝垂桜に取材しています。
東山はかの文豪・川端康成と交流があり、「京都がまだ美しいうちに描いておいてください」という川端の言葉から京都を取材し多くの絵を描いています。
ちなみに似た構図で『冬華』(とうか)という絵もあります。
こういう。
これまた美しきですが、こちらの取材地は京都でなく北欧旅行でのインスピレーションから。
どの絵も本当に素晴らしき東山魁夷。
これが東山魁夷。