90年代という時代は、日本の音楽史にとっていろんな意味ですごい時代だったと思うんです。
ミリオンヒットが連発し、さらにそのうち何曲かはダブルミリオンにすら達する爆発的なCDの売り上げに、ビーイング系、小室ファミリーやヴィジュアル系といった多くのブームを生み、ファンの熱狂度も半ば盲信的と言えるほどでもあり、良くも悪くも確実に今以上に熱い時代でした。
僕自信音楽に興味を持ち始めたのはまさに90年代で、このときヒットチャートを席巻していたようなアーティストはたいがい好きで、オリコンチャートなんかも毎週かかさずチェックしていたものです。
the brilliant green(ザ・ブリリアントグリーン)知ってる?
僕にとって日本のアーティストの中でもかなりフェイバリットに聴かせていただいているバンドなんですが、90年代のJ-POPを知っている人であれば多分ご存知かな。
男2人に女1人といういわゆるドリカムスタイルの編成で、その湿り気のあるサウンドとどこかネガティブな歌詞の世界観、またヴォーカル・川瀬智子氏の気だるくアンニュイな雰囲気などからかなり陰な空気を放つ存在でした。
そんな彼らは98年に『There will be love there -愛のある場所-』という曲でブレイクし、以降いい感じにヒット曲を飛ばしますが、2002年に活動を休止、川瀬氏のソロプロジェクトであるTommy february6、Tommy heavenly6がメインの活動となってゆきます。
そしてそれ以降のブリリアントグリーンの活動を知る人はファン以外ではあまりおらんでしょうな。
実は2007年に活動を再開し、以降彼ららしくマイペースにCDを発売しているのですが、以前のようにヒットチャート上位に顔を出すことは少なくなっちゃいました。
しかしそれは決してバンドとしての全盛期を過ぎたわけでもなければ、現在の彼らの音楽が売れていた頃に劣るということでもございません。
いや、むしろ純粋にそのクオリティを見れば活動再開以降こそが彼らの全盛期といってもいいくらいなのです。
久々のシングル『Stand by me』はじめ素晴らしいシングル曲を連投し、そして2010年、『THE WINTER ALBUM』以来実に8年振りとなるオリジナルアルバム『BLACKOUT』の登場。
黒すぎるとかは一旦置いといてその完成度たるや間違いなく最高傑作。
サウンドは相変わらずブリティッシュぽい空気感を感じさせますが、ソロプロジェクトであるトミーヘヴンリーでの経験を経たからこそのハード&ヘヴィな面も見られます。
しかし現在の彼らが昔と最も変わったのは音以上に川瀬氏の声であると思うんです。
初期の頃はそれこそ病的なほどに気だるく、全く腹に力の入っていない、まるで寝起きすぐに歌っているのかと思うほどドンヨリとした歌い方で、しかし不思議なことにその独特の歌い方がバンドの音と歌詞の世界に絶妙にマッチし、他の歌手とは一線を画す、なんだか知らないがこの上なく癖になる、結局のところ最高に魅惑的な声だったのです。
そんな初期の頃と比べて現在は毒気もかなり抜けて、わりと健康的にしっかりとメロディを歌うようになりました。
初期は初期で魅力的でしたが、今も今で素晴らしきです。結局元々の声質が良いので。
ただ間違いなく今の歌い方のほうが曲のメロディの良さは引き立っていると思うし、楽曲の幅も広がるってもんでしょう。
まあしかしどこを切り取っても非常に"らしい"作品で、久々のオリジナルアルバムに対する熱意というよりは気負いのないリラックスした雰囲気に満ちております。
ただ個々の曲はどれもシングルカットできそうなレベルで、まるでベストアルバムのようなクオリティのオリジナルアルバムです。
90年代に彼らのファンだった、とか最近はいい音楽ないね、とか日本の音楽はイマイチや、
とか何か俺の部屋臭くね?とか思ってる人はぜひ聴いてみて欲しい。
きっと気に入るはずだしきっとどこかにカメムシがいます。
マイペースな彼らがマイペースな活動の中でポンと生み出した最高傑作。
人生のお供としてちょうど良い。