さて、前回ではざっくりした話をしました。
しかし、心構えだけでは億り人になれません。
なので、具体的に金銭感覚についての目安になる金融資産の額についてあげたいと思います。
具体的には、月収25万、ボーナス年4か月程度の年収400万を考えます。
また、借金はなし、貯蓄・金融資産の口座と生活費の口座を分けていないことを前提とします。


■ 借金があると考える段階
 まずは、ここまでは貯金云々よりも、これしかないなら借金状態だと考える額をあげます。
 
・月収一か月分(25万)
 これで、貯金があると考えるなら、かなりまずいです。
 簡単に言えば、給料日にはこの額は口座に入るのですから、次の給料日に向けて絶対に減ってゆきます。この額を超えないなら、いつか破綻しますので、ひたすら貯蓄するしかありません。
 
・月収の二か月分(50万)
 まだ、借金の段階です。ここには、翌月までの生活費が入っていますので、実際には給料日前には25万しか残っていません。残ってるではないか、という反論には、月の生活費には年間単位で出てゆく金額は入っていないということです。アパートの更新費、車検費用など、年単位で払わないといけないものがあるので、その余裕は作っておかないといけません。このラインは、借金をしなくてもすむギリギリの線になります。
 
■ ここまでは、貯金ではない
・100万
 まず、早く100万を目指しましょう。
 100万は、短期リスク引当金としての相応額です。
 転職や引っ越し、病気になってもとりあえずしのげるのがこの額です。
 年収400万で100万なら、貯めるのはいうほど難しくありません。ボーナスに手をつけなければ、一年でも可能です。
 また、重要なのは、100万を貯められない人がかなり多いということです。これは、収入の多寡ではなく、貯蓄が習慣になっていないためです。
 100万貯められるということは、ある程度の貯蓄ルールを自分で決めて実行できているという、一つの目安です。
 例えば、上記の「ボーナスは全額貯金」も一つのルールです。こういう、マイルールを作って、貯める習慣を育てていき、それがある程度完成したのが100万です。
 100万を貯めるのは、金銭感覚を育てる段階です。
 重要な段階なので、20代前半くらいまでには、なんとか軌道に乗せるべきです。
 
■ 勘違いしやすい~まだ、引当金
・500万
 次のステップが500万です。
 この500万というのは、年収+αの金額になります。
 つまり、病気などで一年仕事ができない状況でも、なんとかなるという額です。長期引当金と言えるでしょう。
 実際、ここまで貯めるには、40代までかかる人が多いです。継続的かつ、効率的に貯蓄習慣があって貯められる金額となります。また、生涯ここまで貯められない人もかなりいます。
 ただ、上記のように、使い始めると一年くらいしか持ちません。大きな金額ではありますが、過信しやすい金額でもあります。
 100万を超えると、投資で増やそうという気持ちが強くなります。しかし、利回り4%としても、100万では4万、500万でも20万です。当然、投資にはリスクが伴いますし、低リスクではリターンも少ない。この段階までは、投資で資金が貯まるかというと、期待は薄いと言えます。さらに、一般に投資額は資金の半分というのが一つの目安のため、それを守ると、半分になります。
 つまり、ここまでは投資で増やすのはかなり厳しいということです。
 事実、現状の私の運用額は500万程度ですが、年で得られるのは20万程度です。
 気持ちが大きくなる額ではありますが、この金額で本格的に投資の世界に入っても一回間違ったら撤退という状況です。新NISAなどで投資信託しても、運用益も元本も保証されているわけではないので、当てにならない金額なので、この額があっても増やすのは、給与からの貯蓄が実際という額です。
 ここまではまだ、いざというときのお金であり、低リスクかつすぐに現金にできる形で運用すべきです。
 

■ ステージは変わらない~貯金と思うべき
・1000万円
 1000万を貯めると、大台に乗った気分になります。
 しかし、これは、気のせいだと思うことです。
 現実的にここまで貯めるには、50代になることが多いです。これに、退職金を含めて2000万超えるという額です。
 老後に必要な貯蓄が2000万と言われているので、50代でここに至れば、年金と合わせてとなんとかという額でしょうか。むろん、この額では65歳まで働く場合が多いと思います。
 一方、投資運用の面からみると、利回り4%で年40万です。40万では収入の柱にはなりません。しかも、全額運用に回した場合ですので、半分の500万なら20万です。
 貯め方がわからなくなります。実際は、ここから増やす段階でも、主たる収入源は給与収入です。
 つまり、100万から500万に増やすときと、やることは変わらないのです。給与からの貯蓄を主軸にして、それに少し足せればという金額になります。
 でも、100万を10年間で貯めて1000万です。
 50歳で1000万円、一番給与が高い50代で年100万を60歳まで淡々と貯蓄して、2000万円になります。退職金を合わせて、60歳でリタイヤで目途が立つ額でしょう。
 逆に言えば、50歳までに1000万くらいないと、60歳でリタイアするなら、60歳~65歳の無年金の期間に備えるには、きついということです。
 おそらく、一番、どうしていいか悩む貯蓄額でしょう。
 ただ、実際には1000万は超えたかどうかより、何歳で超えたかが重要です。
 
■ ライフプランから違ってくる~早期リタイアの第一歩
・2000万円
 500万円までは引当金、その後は貯金です。1000万が意外と勘違いというのは前述しましたが、次の2000万とではかなり変わります。
 金融資産2000万の層の多くは、退職金をもらって2000万になります。
 しかし、それ以前に2000万を超えるには、資産運用のやり方や貯蓄の計画性などでやり方を別にしないといけません。
 簡単に言いますと、2000万では、早期リタイアは厳しいです。ただ、ここまで貯まっていれば、60歳以前のリタイアに対して具体性が出てきます。
 
 早期リタイアの時期には、3つの期間があります。
 60歳以前
 65歳まで
 65歳以降
 です。
 60歳以前は、年金納入が必要で、厚生年金の会社補填がなくなるため、将来の年金額の低下や国民の年金の支払いなどで支出が多いです。
 60歳から65歳以前は年金の支払いがなくなります。
 65歳からは年金受給が開始されます。

 具体的な支出を年300万と考えてみましょう。
 月の生活費を25万として、年間単位の支出を50万とした計算です。
 実際、年収400万クラスなら、手取り年収の水準でしょう。
 60~65歳では、5年で1500万必要です。
 65歳からは、年150万の年金を受けるとして、85歳までと計算して20年間で、3000万必要です。
 これで、4500万になります。
 ここから、60歳引退して2000万を年利回り4%で運用し、65歳までは運用益と退職金で生活し、65歳からは年金と運用益を中心に生活するとします。
 2000万で4%なら、年80万です。年金150万であれば、230万で元本の減りは少なくなります。85歳までみても、500万程度の遺産や老人ホームに入る額があるレベルでしょう。
 ここから、貯金額を増やすと、60歳からの早期リタイアが可能になります。
 仮に、50歳までに2000万貯めたとします。
 年の運用益を80万、給与から100万貯めると、57歳で1260万となり、60歳までの生活費900万を超えます。また、40歳で2000万を貯め年4%で運用し、50歳までに年100万を貯めると、10年間で2800万。年300万で生活しても、退職金や年金が減ったとしても、もともとの運用益が大きいから、生涯なんとかなる数字です。
 このように、2000万に達すると、早期リタイヤまでの道を具体的に計算できるようになります。
 
■ 早期リタイアが具体的になる
・5000万
 ここまでくれば、早期リタイアは結構簡単な計算で出てきます。
 5000万を年間運用益4%で運用すれば、200万円になります。
 つまり、年300万なら、65歳まで年100万の収入があれば、年300万の生活ができます。
 50歳で達成し、55歳まで仕事して年100万を貯金していれば、5年で300万貯まります。
 55歳時点では6500万になり、年300万なら運用しなければ65歳時点で3500万残ってます。ここから、年金支給が年150万なら、85歳で300万残ってます。
 5000万をきちんと運用していれば、2000万くらいは残るでしょう。
 結構、楽にやっていけます。
 
■ 庶民なら生涯なんとかなるかも
・1億
 億り人です。
 計算は単純で、年の運用益が4%なら、年間300万使っても増えます。
 要するに、年4%の運用益の確保と年間300万の生活を維持していれば、資産は増えてゆくだけになります。
 ただ、手取り300万は、年収400万程度の生活であるということです。
 また、運用益の4%は必須になりますし、月25万の生活です。1億あっても、仕事している平均のサラリーマン以上の生活にはなりません。
 さらに、年4%の運用益を維持しないといけません。失敗して、元本を減らしたら先細りとなります。
 運用しないなら、30年で9000万必要なので、単純計算で完全リタイアできるのは、55歳あたりになります。



● 最後に
 言いたいのは、億り人でも庶民だということを理解すべきだってことです。
 実は、一番安全なのは、生涯働くことなのです。
 しかし、生涯働くのは嫌だというのが、多数派でしょう。
 1億はかなり大きな区切りですが、これで「お金持ち」になるには、節制と計算が必要です。
 
 なお、参考までに、私が1億を貯めるまでのタイムスパンは以下です。
 ・30歳 1000万
 ・35歳 2000万
 ・40歳 3000万
 ・45歳 4500万 投資開始
 ・50歳 6000万
 ・53歳 13000万
 
 正直、スタートダッシュは必要ですので、20代前半でマネーリテラシーについては学んでおくべきでしょう。