蒸し暑い夜、窓を開けて風鈴の音を聴きながら、ふと手に取りたくなる一冊があります。
ウィリアム・シェイクスピアの喜劇『夏の夜の夢』です。
青空文庫では坪内逍遥訳をはじめ、複数の翻訳で無料で読むことができ、
スマートフォン一つあれば誰でも400年以上前の幻想世界に飛び込めるのですから、現代は本当に贅沢な時代だと思います。
あらすじ ― 一夜限りの森の出来事
物語の舞台は、古代アテネ郊外の月明かりに照らされた森。
互いに想いがすれ違う四人の若い男女、ハーミアとライサンダー、ヘレナとディミートリアスが、それぞれの事情から森へと迷い込みます。
そこで待ち受けるのは、妖精王オーベロンと女王タイターニアの夫婦喧嘩、そしていたずら好きの妖精パックが振りまく「惚れ薬」の混乱です。
目覚めたとき最初に見た相手に恋してしまう花の汁。
これがあちこちの瞼に塗られることで、恋人たちの関係はめちゃくちゃに入れ替わり、
果ては職人のボトムがロバの頭に変えられ、妖精女王タイターニアに愛されてしまうという珍事まで起こります。
登場人物が放つ「夢」の質感
『夏の夜の夢』の魅力は、登場人物の輪郭が驚くほど繊細に描かれている点にあります。
- ハーミア:小柄で意志の強い少女。父親の決めた結婚に逆らい、愛する人と森へ駆け落ちする勇気を持つ
- ヘレナ:背が高く、片想いに身を焦がす女性。揺れる感情の描写が瑞々しい
- パック:人間をからかうのが大好きな悪戯妖精。物語の混乱の張本人にして、最後の語り手
- オーベロンとタイターニア:森を支配する妖精夫婦。彼らの諍いが季節すら狂わせる
なぜ夏に読みたいのか
『夏の夜の夢』は、現実と幻想の境界が曖昧になる季節の物語です。
蒸し暑い夜、目を閉じれば自分も森のどこかにいるような気がしてくる ― そんな読書体験ができます。
最後にパックがこう語ります。
「もしこの劇がお気に召さなかったなら、すべてはただの夢だったとお思いください」。
青空文庫を開けば、今夜あなたも妖精たちの森へ。きっと忘れられない夏の夜になりますよ。



