裏車掌です。

 

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はじめに――「自分を変えたい」と願うすべての人へ

「自分の性格が好きになれない」「もっと明るくなりたい」「人前で堂々と振る舞えるようになりたい」――そんな思いを抱いたことはありませんか。

 

近年、SNSや就職活動の場面で性格診断を受ける機会が増え、その結果に一喜一憂する人が後を絶ちません。

 

理想の自分と現実の自分とのギャップに悩み、「性格を変えたい」と願う方も多いのではないでしょうか。

 

 

本書『性格は変えられるのか』は、性格心理学の第一人者である小塩真司氏が、「性格は本当に変えられるのか?」という根源的な問いに最新の研究成果をもとに真正面から答える一冊です。

 

自己分析に疲れた方にも、他者を評価する立場の方にも、新たな視点を提供してくれる内容となっています。

 

 

 

第1章――流行する性格診断、その実態とは

第1章では、近年大流行している性格診断の実態が解き明かされます。

 

特に注目されているのが「MBTI」と呼ばれるタイプ診断ですが、著者はここで衝撃的な事実を指摘します。

 

インターネット上で気軽に受けられる無料の「MBTI」の多くは、実は本物のMBTIとは別物だというのです。

 

 

また、かつて日本で大流行した血液型性格診断にも触れながら、私たち人間が「タイプ分け」で物事を考えたがる傾向について解説されます。

 

しかし性格研究の世界では、人をきっぱりと「○○タイプ」と分類するのではなく、**グラデーション(連続的な濃淡)**として捉えるのが主流です。

 

 

そして登場するのが、現代の性格研究の中心的な枠組みである「ビッグ・ファイブ(五つの性格)」。

 

性格を5つの基本的な次元で捉えるこの考え方が、本書を読み進めるうえでの土台となります。

 

 

 

第2章――そもそも「性格が変わる」とはどういうことか

第2章では、「変わる」という言葉の意味そのものが問い直されます。

 

性格は遺伝と環境のどちらに強く影響されるのか。

 

ケガや病気で性格は変わるのか。

 

ロンドンのタクシー運転手の脳が職業によって変化するという有名な研究なども紹介され、性格と脳の関係について興味深い知見が示されます。

 

 

特に重要なのは、「どの種類の変化」を「どの時間間隔」で見るのかという視点です。

 

数日単位の気分の変動と、数十年かけて起こるゆるやかな性格変化とは、まったく別のものとして区別する必要があります。

 

この視点を持つだけでも、自分の性格について考える解像度が大きく上がるはずです。

 

 

 

第3章――ライフイベントは性格をどう変えるのか

第3章は本書の中でも特に読みごたえのある章です。

 

進学、就職、結婚、出産、失業、災害――こうした人生の大きな出来事が、私たちの性格にどのような影響を与えるのかが、豊富な研究データとともに語られます。

 

 

たとえば、結婚そのものよりも「結婚前後のある時期」のほうが性格は大きく変わる、親になることは出産後ではなく出産前から変化を起こしている、

 

といった一般的なイメージとは異なる興味深い研究結果が次々と紹介されます。

 

さらには「汚いアンダーパンツ効果」というユニークな名前の現象や、自然災害が人の性格に及ぼす影響まで、幅広く扱われています。

 

 

「人は経験によって変わる」とよく言われますが、その変化が具体的にどのような条件で起こるのかを、本章は科学的に明らかにしてくれます。

 

 

 

 

第4章――性格を変えるための具体的アプローチ

「では、自分から能動的に性格を変えることはできるのか?」――第4章はこの問いに応える実践的な章です。

 

 

著者は、まず一時的な「状態」を積み重ねることで、安定した「特性」へと変えていく道筋を示します。

 

目標を設定する実験、「もしも~なら、こう行動する」というif-then形式の計画法、スマートフォンなどのテクノロジーを活用した行動変容

 

そして「自分の物語を書き換える」というナラティブ・アプローチなど、現代的な方法が紹介されます。

 

 

特に興味深いのは、AIとの会話が精神的な問題の治療や性格変化にもたらす可能性についての考察です。

 

生成AIが日常に浸透した今だからこそ、新鮮に響く内容と言えるでしょう。

 

 

そして著者は強調します。

 

性格が変わることは、決して「別人になる」ことではない、と。

 

 

 

第5章――そもそも、あなたの性格は変えるべきものなのか

最終章では、本書全体を貫く問いがひっくり返されます。

 

「性格を変えたい」と悩むその前に、考えるべきことがあるのではないか――というのです。

 

 

医療の世界で使われる「主訴」と「原因」の区別を借りながら、著者は語ります。

 

あなたが抱えている問題は、本当に性格そのものが原因なのでしょうか。

 

性格だけが結果を生み出しているわけではありません。

 

植物の成長にたとえながら、環境を整えるだけで変化が起こることもあると示されます。

 

 

そして核心的なメッセージとして、「『性格を変える』という発想は、しばしば管理者の発想である」という鋭い指摘がなされます。

 

誰かに変えられるべき自分、ではなく、自分の心地よさを追求する自分。

 

本書はそんな視点の転換へと、読者をやさしく導いてくれます。

 

 

 

おわりに――自分との付き合い方を見直すために

本書は、「性格を変える方法」をハウツー的に教える本ではありません。

 

むしろ、性格について私たちが当たり前に抱いている思い込みを丁寧にほぐし、自分自身との付き合い方を見直すための一冊です。

 

 

自己分析に疲れている方、就職や進学で自分を見つめ直す必要に迫られている方、

 

そして部下や生徒など他者を評価する立場にある方にとっても、必ず新しい気づきが得られるはずです。

 

性格診断の結果に落ち込んでしまったときこそ、ぜひ手に取っていただきたい良書です。