裏車掌です。

 

昨年から本(ほぼ新書)を紹介する

ブログになっております。

 

今は、本の紹介記事は、

日曜日と木曜日の朝7時

更新となります。

 

他の曜日に

別の内容の記事も出す予定です。

よろしくお願いします。

 

 

はじめに:なぜ今「政府破綻」を考えるべきなのか

日本が直面している課題は、もはや先送りできない段階に来ています。

 

止まらない少子高齢化、膨張し続ける社会保障費、そして縮小していく政府の対応能力——。

 

こうした現実を直視し、抜本的な改革を提言する一冊が、一般財団法人ネクストジャパン・イニシアティブ著『政府破綻』です。

 

 

本書は、2024年に設立された独立系シンクタンクが、強い危機感を持って世に問う「日本再生の処方箋」となっています。

 

実業家の吉村英毅氏と山口功一郎氏が創設したこの団体は、次世代の日本を担う政治家を育成する「令和政経義塾」の運営を主たる使命としながら、各種政策提言も積極的に行っています。

 

 

 

 

本書の問題意識:迫りくる「政府破綻」の足音

本書は冒頭で、2050年の東京を舞台にした近未来シナリオを提示します。

 

これは単なる空想ではなく、現在の政策を続けた場合に到達しうる「警告としての未来像」です。

 

 

著者らが指摘する核心的な問題は、「膨張する行政ニーズ」と「縮小する政府キャパシティ」の致命的なミスマッチにあります。

 

人口動態の変化により労働力人口は減少し、経済成長は鈍化する一方で、社会保障費と防衛費という「双子の財政負担」は膨らみ続けています。

 

 

本書では、このままでは「政府破綻」が現実のものになりかねないと警鐘を鳴らしています。

 

そして、部分最適に陥った現状を脱し、長期的視点に立った全体最適へと是正していくための具体的な道筋を示しています。

 

 

 

過去の行政改革から学ぶべき教訓

本書の特徴の一つは、過去の行政改革を丁寧に振り返り、そこから得られる教訓を明確にしている点です。

 

第一次臨時行政調査会から、土光臨調、橋本行革、小泉政権、民主党政権に至るまでの改革史を検証し、なぜ抜本的な改革が実現できなかったのかを分析しています。

 

 

また、本書全体を通じて登場する「DOGE」(Department of Government Efficiency:政府効率化省)についてのコラムは、米国における政府効率化の取り組みを詳細に紹介しており、日本が参考にすべき点と注意すべき点の両面から考察がなされています。

 

 

 

 

具体的な改革提言:無駄の削減からデジタル化まで

本書が提示する改革提言は、非常に具体的かつ多岐にわたります。

 

 

まず、政府の無駄削減に関しては、肥大化した補正予算・特別会計・官民ファンドの効率化が提言されています。

 

さらに、徹底した規制改革の実施として、イノベーションの社会実装をデフォルトとするKPI設定や、規制改革プロセスの可視化が求められています。

 

行政事務の無駄削減では、省庁間・省庁内調整の効率化、法案作成過程の見直し、国会・政党対応の改善など、現場レベルでの具体的な施策が数多く挙げられています。

 

 

次に、デジタライゼーションによる未来政府の実現が提唱されています。

 

生成AIの徹底活用による行政の生産性向上は、文書作成、申請・問合せ処理、調査・分析業務など幅広い分野で適用可能です。

 

また、医療・介護・教育・インフラ維持といった公共サービス分野へのデジタル技術導入についても、具体的な方向性が示されています。

 

 

 

 

 

組織経営と防衛力:構造的な見直しの必要性

本書は、政府の組織経営そのものの抜本的見直しも求めています。

 

政策の意思決定プロセスについては、個別最適の規模追求から費用対効果への転換が必要であり、将来世代の利益を意思決定に組み込む「フューチャーデザイン」の概念が紹介されています。

 

 

また、明治以来続く行政組織運営の見直しとして、スキルベースの人事制度への移行、リボルビングドア(官民間の人材流動)の促進、マネジメント機能の強化などが提言されています。

 

民間セクターとの共創による社会課題解決という視点も、新しい官民連携のあり方として重要な指摘です。

 

 

さらに、本書は防衛力の有効性向上についても一章を割いています。

 

日本が「前線国家」としての地政学的位置にあることを踏まえ、防衛費の増額の必要性、兵力構成の見直し、研究開発・調達手法の改革、そして「有事の経済安全保障」への備えが論じられています。

 

 

 

 

本書の特色:現場知見とグローバル視点の融合

本書の大きな魅力は、理想論に終始せず、行政の現場を知る実務家や若手経営者の視点から、実現可能性を意識した提言がなされている点です。

 

各章末に設けられたコラムでは、米国DOGEの実像や、テック人材が政府を変える可能性など、グローバルな視点からの考察も加えられています。

 

 

「長期最適、全体最適、グローバル」——本書が掲げるこの三つのキーワードは、日本の政策決定に欠けていた視座を端的に表しています。

 

目先の利害調整や部分最適に終始するのではなく、2050年という長期的視野に立ち、日本全体として、そして国際社会の中で最適な選択をしていく必要性が訴えられています。

 

 

 

 

おわりに:「もう一つの未来」を選ぶために

本書の終章では、「2050年夏、東京都——もう一つの未来」が描かれます。

 

これは、本書の提言が実現した場合に到達しうる、より良い日本の姿です。

 

どちらの未来を選ぶかは、今を生きる私たち次第であるというメッセージが込められています。

 

 

『政府破綻』は、危機を煽るだけの書ではありません。

 

危機を直視した上で、具体的かつ実現可能な解決策を提示する、建設的な政策提言の書です。

 

日本の将来に関心を持つすべての方、特に政治・行政・経済に携わる方々にとって、必読の一冊といえるでしょう。