・雷恐怖症とは  

 ゴロゴロとなりだしピカッと光った後、ドカーンと大きな音を立てる「雷」。まったく平気な人もいればその音を聞いたら恐怖を感じる人もいると思います。それは犬も同様で、雷を怖がることを「雷恐怖症」といい、雷発生時や発生前から、怖がり、パニックを起こす恐怖症のことをいいます。

 

 

 私が飼っているボーダーコリーのライズも雷恐怖症です。雷がなると、家の中をウロウロし、周りの声が聞こえないほどパニックになり、息をハァハァと言わせながら、テーブルの下に隠れたままじっとして、雷が過ぎ去るのを待ちます。

 

↑↑ただ恐怖が過ぎ去るのを待っています。↑↑

 

 

・雷恐怖症になるとどうなるか

 雷恐怖症の主な反応としては、息使いが荒くなる、涎を大量にたらす、体の震えが止まらない、家の中をウロウロし落ち着かない、お漏らしをする、水や食べ物を受け付けない、逃走・破壊行動などの症状がみられます。

 症状を起こす原因として、大きな音や光に対して恐怖を感じてしまうことのほかに、気圧の変化や雷雲にたまる静電気や雷雨によるオゾンの匂いに反応している言われています。雷恐怖症の犬はお風呂場に逃げ込むことが多いといわれていますが、それは体内にたまった静電気を放電しようとする行為と考えられています。通常、体内にたまった静電気は汗や空気中の水分を通じて体外に少しずつ放出されますが、足裏にしか汗をかかない犬の場合は、少しでも空気中の水分が多い場所を選んでいるのではないかと言われています。

 

・雷恐怖症になるきっかけ

 ライズは3歳を過ぎるまでは、雷を怖がることは一切ありませんでしたが、ある日の出来事がきっかけとなり、雷恐怖症になりました。ライズは昔からベランダに出て外を眺めるのが好きで、いつものようにベランダから外を眺めていました。その日は雷が少しゴロゴロとなってはいましたが、ライズも特に気にしていなかったので、そのまま外を眺めさせていました。

 

 そんな時です。かなり近くの場所に雷が落ちました。その瞬間ライズはパニックになり、一目散に家の中に戻ってきました。それまで、どれだけ雷が鳴ろうと、一切気にしていなかったのですが、かなり近くに落ちた雷の音に対して、相当の恐怖を感じたのか、それ以降、雷が落ちる前のゴロゴロという音を聞いただけで、雷恐怖症の症状が出るようになりました。

 雷恐怖症は2歳前後から起こりやすい症状と言われており、年を重ねていくほど、悪化していくともいわれています。これは学習された反応といい、雷が発生した時に犬が恐怖を感じた映像や音、体に感じる不快感や痛み、匂いを記憶し、その後、似たような刺激や環境にさらされたときに、恐怖体験がが蘇ります。それを何度も繰り返すことで雷は怖いものと確信していくので、何回も体験するほど雷に対して恐怖心が生まれます。繰り返しその刺激や環境にさらされることで、雷だけではなく、雷発生時に一緒に降っている豪雨や、気圧の変化等にも恐怖を感じるようになり、雷がなってもいないのに、豪雨や気圧の変化で雷恐怖症と同じ症状がでてしまうのです。

 

 

・雷恐怖症になったら

 愛犬が雷恐怖症になった時に気を付けなければいけないことが、パニックの犬は何をするかわからいということです。ライズも以前、人気のない公園でリードを外し大好きなボールで遊んでいたときに、雷がなりました。それまでボールに夢中だったライズですが、その瞬間パニックになり、公園から飛び出していきました。パニックになっているときは、ほとんどの場合、人の声が聞こえない状態になっている事が多く、逃げ出したまま迷子になってしまったり、事故に遭い、最悪の場合死に至ってしまいます。ライズは呼び戻しができる子でしたが、その時はパニックから私の声は一切聞こえておらず、何度呼んでも一切見向きすることはありませんでした。幸いなことに、人や車などがほとんど通らない場所にある公園だったので、事故に遭うことも無く、公園の入り口付近をウロウロしていたためすぐに発見することもできましたが、かなり肝を冷やしました。

 パニックになると周りが一切見えなくなる犬は多く、私の知り合いにも、雷に驚きすぎて、家の2階から飛び降りた事があるゴールデンレトリーバーがいました。飛び降りはしましたが、特に怪我などはかったそうです。普段なら絶対にしないことでも、パニック時にはしてしまうことがあるので、飼い主は十分に気を付ける必要があります。

   それ以外にも、雷がなった時の飼い主の接し方にも気をつけなければなりません。飼い主が過剰に同情したり怒ってしまうと、かえって症状を悪化させることがあるので、犬が助けを求めてきたら、静かに声をかけ、優しく撫でてあげる必要があります。かわいそうだからといって過度に甘やかしたり、逆に一切構わず無視することは今後の信頼関係に悪影響を及ぼすことがあります。犬が飼い主に求める条件の1つに安全と安心の確保というのがありますが、飼い主に守ってもらえないと判断した犬は、自己防衛本能が強くなり、別の問題行動に発展する恐れがあるのです。私もライズが雷で怯えているときは、過度に構うことはせず、大丈夫、大丈夫っと優しくいいかけながら軽くさわってあげるようにしています。

 

・雷恐怖症を克服するには

 そんな雷恐怖症にも克服する為のトレーニングがあります。脱感作療法と逆条件づけという方法を組み合わせるやり方です。

 脱感作療法とは音響テープやあらかじめ録音した音を使い、小さな刺激から徐々に恐怖の対象に慣らしていく方法です。それと同時に逆条件づけという、恐怖反応を引き起こす悪い刺激に対して、それに拮抗する良い刺激を与えることで、恐怖反応を減少させていく方法です。

 ただ、このトレーニングをするときには気をつけなくてはいけない注意点があり、それは雷がよくなる時期は避ける必要があると言うことです。雷に対して慣らしているときに、本物の雷を体験させると、それまでしてきたことが台無しになってしまいます。日本では一般的に6~8月が雷が多く発生するといわれています。もちろん、それ以外の時期にも雷はおきますが、11月から1月にかけてはかなり発生数が少ないため、そういった時期を見計らってトレーニングを行うといいとされています。

 しかし、このトレーニングもこれだけで完全に克服できるわけではありません。雷発生時の音に対しては克服できますが、気圧の変化や静電気を感じとっているこの場合は、音だけなら平気なのに、実際に雷がなると怖がってしまいます。

 また、多くの犬は偽物の音と本物の音を聞き分けてしまいます。ライズも録音した雷の音を聞かせたことはありますが、録音した音に対しては雷恐怖症の反応は見られませんでした。実際に雷が鳴ると変わらず雷恐怖症の症状が出ていました。

 

    犬は人間より様々な感覚に優れている分、人間よりも過度のストレスにさらされています。飼い主としては、少しでもそのストレスを軽減させてあげたいと思います。ライズの雷恐怖症はいまだ、克服はできていませんが、雷でストレスを感じてしまっても、別の時に思いっきり遊んであげることでストレスを発散させています。愛犬が少しでも幸せになれるのであれば、飼い主としてはいろいろな事をしてあげたいし、それが飼い主の義務ではないでしょうか。