夢のようなお話ですね。

昨日放映された TBS系テレビ番組 夢の扉 『痛くない歯科治療を全国に広げていきたい』

http://www.tbs.co.jp/yumetobi/backnumber/20080511.html



3mix-MP法です。

私も以前のブログに書いた記憶がありますがhttp://ameblo.jp/ph-d/entry-10017231839.html

3MIXについては以前の職場 昭和大学で患者様に十分な説明の上

同意をしてもらい数症例やった経験もあります。

否定も肯定もしません,あくまでも私自身の考えを以下に書かせていただきます。

ということで私見を


EBM:Evidence Based Medicine

これは近年の医療 歯科医療 現場で最重要視されます。

根拠に基ずく治療です。


1.臨床上の情報を必要とする問題を回答可能な質問に変える。(患者の問題の定式化)
2.その質問に答えるために最とも効率的な方法で、理学所見や臨床検査、文献、その他の情報源のいずれかより最良の根拠(evidence)を追求する。(能率的で質の高い情報収集)
3.妥当性(真実への近似)や有用性(臨床的応用性)という点でその根拠を批判的に検証評価する。(情報の批判的検証評価)
4.この評価の結果をわれわれの臨床的専門技量と統合し、実地臨床にその結果を応用する。(情報の患者への適用)
5.自分たちの実行したことを事後評価する。(研究課題の抽出)


簡単に書けばまず根拠のある治療が必要であるということです。

根拠があれば誰がやってもいいというわけではなく

それに見合ったトレーニングが必要であることも必須条件ですが。



3mix-MP法が根拠として挙げている論文は(リンクフリーのページではないのでリンクさせませんが)

英文の論文が並んでいますが、タイトルをよく読むとすべてin vitroの実験です。

in vitroとは「ガラス(試験管)の中で」という意味で、動物実験(in vivo)ではありません。

また「臨床論文」で掲載雑誌として挙げられているのは、「歯界展望」「The Quintessence」「日本歯科評論雑誌」などです。これはいわゆる「商業誌」と言われるもので「学会誌」ではありません。

歯科保存学会誌が1編ありますが。

これを3Mix-MPの「臨床論文」「科学的根拠」と言うには少し根拠が弱いように思います。


厚生労働省は薬の認可を行う場合 様々なステップがあり

私自身も新薬の基礎研究 臨床研究をしていたので

そのステップに様々な形で関わってきました。


(一つだけ実験試薬で私の研究グループで開発し商品化された実験試薬があります。

MMP in situZymo-Film
MMP-PT in situZymo-Film

実用化済、和光純薬工業にて販売.
http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/info/sonota/pdf/p12.pdf


開発でも色々な薬剤の開発に携わりましたが非常に大変な膨大なデータと

徹底的な統計処理 そして 病理・形態・薬物動態・安全性 基礎研究だけでも

数年単位もしくは十年単位の時間とマンパワーが必要です。

確かにこの方法に使用される一つ一つの薬は ごくごく一般的な薬剤であり

それぞれの薬については薬事審議会からの承認も下りてる薬です。

しかしながらその承認の適応には虫歯の分野の適応はありません。


その上問題は一つ一つの薬が承認が下りていても

それを混合した場合に安全だと言い切れないのです。


また番組中でも紹介されていたもともとの3MIXの開発者である

前r新潟大学教授岩久正明先生は番組中では共同開発みたいに紹介されていましたが

現在の開業先のホームページではhttp://www11.ocn.ne.jp/~hakuai-d/ このような

見解を出されています。


なんだか批判的内容ばかりになってしまいましたが

以上が当院でこの方法を現在のところ採用していない理由です。

3mix MP法のコンセプトと同様なコンセプト(齲窩や根管内の殺菌)を

目的としてオゾンを利用した方法もあります。

ただドイツの有名機械メーカーが製造してかなりの論文数のデータが出ていますが

厚生労働省は医療機器としての認可をまだ現在出していません。


日本の虫歯治療の専門学術会議である

日本歯科保存学会は理事長見解として、

「保存領域の治療に常用する薬剤としては、現状では容認しがたい」としており、

「その使用に際しては、慎重な対応が必要である」と結語している。

としていることも付記しておきます。


この治療コンセプトは私自身も非常に共感を得る方法であると思います。

そして同じコンセプトを持つオゾンを使用した治療法も現在出てきています。

残念ながらオゾンを使用した方法のほうが信用できる学術誌に発表されていたり、

製造メーカーも歯科領域では全世界的シェアを持つ会社なのです。

この治療法も早く科学的根拠をはっきりしなければ なかなか難しい問題を秘めるのでは

ないでしょうか。


当然ではありますが、痛み 通院回数等々も含め患者様の負担をできるだけ軽くしたい

という思いは非常に共感できるのです。



最先端医療の提供はなんでも全て取り入れるのが最先端医療ではありません。

自分自身のスキル(技術、知識)に見合わないものを取り入れても

結果が伴いません。

少なくとも自分自身が日々研鑽して 学術会議や学術講演会に参加するのは

意味のあることなのです。

私自身 日々勉強 精進して参ります。