4:50のアラーム。
目が覚め、左目の視界を確認する。
やっぱり下方1/4ほど見えていない。
夢ではない。
もちろん不安は残るがショックな気持ちは無くなっている。
気持ちをリセットするためにも睡眠って大切だな、としみじみ。
出張はそれなりに慣れている。
2、3日分滞在できる入院準備を手早く終え、自宅を出発。
6:45発の新幹線。
ホームで目にしたのは50人は超えるであろう中高生の姿。
いや、出水から市外にこんなに通っている学生さん達いるんだ!
とビックリ。
7:10頃には鹿児島中央駅へ。
路面電車でも安く行けるのは知っていましたが、一回しか乗った経験がなく、片目で色々な看板を探すのが意外と辛いためタクシーへ。
タクシー内での会話
「〇〇病院だったらタクシーより路面電車がいいよ」
「え!〇〇病院新しくなったことも知らないの!」
なるほどこういう言葉をお客さんにかけたら不快にさせる事が出来るんだなと勉強。
運転手さん、ありがとうございます。
こういう経験は身をもって体験する事でお客様の立場になる事が出来るなと実感。
今回は勉強の旅です。
そして病院へ、でっかい。きれい。
500万くらい持ってこないと診察してくれないのではないか、と、わけわからない妄想。
病院に着いた頃には見えない部分は1/4から1/3ほどに。
もう生活に支障が出始める感じです。
早速受付へ。
そして眼科へ。
しばらくして診察室へ。
先生は紹介状を眺め、私とやりとり。
「では目を見させてください。」
「なるほど。レーザー治療部分はしっかりとくっついていますが、打撲の影響でレーザーで作ったバリケードを突破してしまって網膜剥離になってますね。」
「この治療は手術しかありません。手術可能かどうか今から全身を検査します。
とりあえず今から入院してもらって手術室の空き具合で手術は午後から、空いてなかったら明日の夕方です。」
そしてレントゲン→心電図→採血。
さらに眼科で色々な機械で検査と撮影。
再度診察室へ。
「手術可能でした。本日19時より始めます。」
そんな遅くからでも手術していただけるとは、感謝しかありません。
実際はこの時に医師から色々な説明を受けています。
手術の方法、危険性、再発率、手術後の注意点等々。
私が理解できるよう丁寧に詳しく説明をしていただけました。
「質問はありますか」
「痛いですよね?」
「もちろん麻酔を打ちます、その麻酔は眼球の裏側に届くように、目とその下の骨の間から奥の方まで注射で打ちます。7割の方は痛みを感じるようで、痛みでくじける方も。」
想像するだけでくじけそう、
「出来るだけ痛くなくなるように努力しますから。」
「ありがとうございます。」
痛くない手術ってないんだろうな・・・
お昼ごはん食べたら入院手続きです。
看護師さん「入院受付センターで緊急入院って伝えてくださいね。」
「自分は緊急入院なんですね。」
「はい、緊急です。」
否が応でも緊張感が高まります。
そして初の入院へ。
部屋は最上階、窓際、眺めは良い。
手術まで6時間。
考えるのは痛みへの不安ばかり。
看護師さんにも弱音をはき、受け答えは小声になる。
麻酔の注射を打たれるであろう部分を何回も爪でつまみ、痛みのシミュレーション。
ものすごく時間が長い。
こんなになにもすることのない、なにもする事が出来ない時間をもったことは数年覚えがない。
最近読んだ本の事などを思い返す。
だってする事ないんですから。
本の内容を思い返しているとここらで心境に変化が。
前向き、後ろ向き、どちらの気持ちで挑んでも19時から手術は始まる。
なら大切なのは自分の気持ち。
前向きに挑んだ方が精神的に得。
よし、受けて立ちましょう。
ブログネタにしてやる!と思ったのもこの時。
悲鳴あげるくらいの痛みの方がブログネタにみんなが食いついてくれるんじゃないかってね。
そこから看護師さん達との受け答えも変わります。
色々な声かけにも「大丈夫ですよ、ありがとうございます。」と笑顔で返せるように。
そして18時頃には点滴も開始され、手術気分も高まります。
前向き気分MAXなこの頃には、「どんな痛みなんだろう、ちょっと楽しみっふふふ」というマゾっ気たっぷりの感情が出始めます。
踏み入れてはならない領域へきたようです。
ちなみにこのあたりでは視界の半分見えなくなっていました。
時間とともに剥離が広がっていくのが自分でもわかる。
予定より少し遅れた19:30頃に看護師さんに呼ばれます。
「お待たせしました。手術室より呼ばれたのでいきましょう。」
「はい!お願いします!」
一階に降り、手術室に近づくと扉一つ一つが大きい。
手術室もたくさん。
手術室エリアの一つ前のエリアでよく見るキャップをかぶります。
看護師さんが手術担当の方へと変わり手術部を確認して手術室へ。
広い。
5、6人の看護師さんがすでに動き回り色々準備に忙しそう。
中央には手術台となる椅子がありその後ろには午前中診察を担当してくださった医師が昼間の白衣ではなく手術着で待っていました。
「お待たせ、どうぞ座ってください」
先生、かっこいいっす。
座ると椅子がベッドのように角度を変え、そこから数人がかりで私に医療機器達を取り付けていきます。
医師「では今から網膜剥離による硝子体手術(正確には覚えていませんが)を行います。
よろしくお願いします。」
看護師さん達「よろしくお願いします。」
私「よろしくお願いしまーす!」
私のいう部分ではなかったような気もしますが・・
まずは目薬での麻酔。
これだけでも5回。
そのあと塗る麻酔を眼球に直接塗り込みます。
このおかげか左目の周りがほおの辺りまで感覚がなくなっていくのを感じます。
「では注射の麻酔行きますね」
きたー
ブス、ブス、ぶちち、ぐにに
いで、いだ、だだ・だ?
痛いけど、思ったよりは痛くない。
先生ナイス麻酔。
「痛みはどうでしたか?」
「中くらいです」
「中くらい、いい表現です。」
お褒めの言葉ありがとうございます。
私の左隣の看護師さんは「中くらい??」って呟いてましたが。
あとは痛みもほとんどなく進んでいきます。
硝子体手術とは
当然どんな手術が行われているのか見えません。
でも不思議、目の中でどんな手術が行われているかは見えるんです。
細い管が眼球内を動いて、透明な硝子体を吸い込んだり、ガスが入っていくのが見えたりとっても不思議な光景でした。
このちっちゃな眼球内で色々な手術を行う。
素晴らしい高度な技術の集まりだな、と感動。
ところでドラマなどで手術のシーンを一度くらいは見たことあるんじゃないかなと思います。
「メス」
「はい」
「汗」
「はい」
みたいな。
実は私、手術中何よりも印象深かったのは素晴らしい技術面ではなく
「シャンデリアを9時のところまで落として」
「はい」
「ありがとう」
ってこの指示した事に対して
「ありがとう」
ってお礼を言うんです。
いや、なんて素晴らしいやりとりなんだと。
自分は医師、周りは看護師。お礼に立場は関係ありません。
そういうところにしびれちゃいました。
麻酔より痺れちゃいましたね。
ってしてたら突如ガツンと痛んで、
「いでっ」って動いたら、「絶対動いたらダメ」って怒られまして、
「ごめんなさい、ごめんなさい、すいませーん」
って平謝り。
やっぱりもう少し麻酔で痺れが欲しいっす。
でもシミュレーションの1/20くらいの痛みで済みました。
どれくらいたったでしょう。
「はい、終わりましたよ。おつかれでした。今からうつ伏せ姿勢を開始です。車椅子に乗る時からうつ伏せ姿勢です。」
お、うつ伏せ姿勢!?
ってこんな感じかなと、軽く下を見ると、
「いや、思い切って床を見てください。」
あ、床を見る、なるほど。
網膜を壁に貼り付けるためにガスを利用しています。
眼球内にガスを入れたんです。
うつ伏せになると軽い気体は網膜側にとどまりしっかり押さえ続けることができます。
とりあえず手術台から車椅子に移ったら床を見るためにひどく落ち込んだような姿勢を取ります。
ピンと来ない方は椅子に座ったまま足元の床を見てみてください。その姿勢です。
体は元気なので自分の点滴は自分で押していきます。
車椅子は看護師さんが押してくれますが。
車椅子でひどく落ち込んだ姿勢をとりながら右手でゴロゴロ点滴を押していく姿、写真撮って欲しかった。
きっと暗闇で出会ったらオカルトでしょう。
「遅くまでありがとうございました!」
「今夜は力まないでねー」
「わかりました、本当にありがとうございまーす!」
へんな姿勢でも礼は忘れませんよ。
そして病室へ。
手術が終わって看護師さんに聞いたら20:40という事。
手術は1時間くらいだったのでしょうか。
とりあえず山は乗り越えることができ、人生でベスト3に入る心からの安心を感じることができました。