これは僕が妄想した架空のお話──

 

 

日本のどこかに

「SHOW楽観レコード」と言うレコード会社があった。

その会社に

「足原雛子」と言うアーチストが所属していた。

 

彼女は「田中さんSEXY」と言うタイトルの楽曲を連作し、

数百万枚を売り上げるヒットメーカーだった。

 

一連の楽曲を発表順に聴くと連載小説のようであり

独特の世界観と奥深いメッセージが読み取れ、

聴いた人に感動と勇気を与える、

そんな素晴らしい構成になっていた。

 

現在はシングルが7曲目まで発表され

今後発表されるであろう3曲を加えた10曲を以って

アルバム「田中さんSEXY」として完結する予定だった。

 

 

一方、天下の「日照交響楽団」では

最近、観客が入らず困っていた。

 

理由は、過去にやった

音符交響楽は世界を救う地球と言うチャリティコンサートで

集めた募金を使い込んでいたことが発覚したことだ。

 

打開策を探していた「水上えりか」チーフマネージャー

いま大人気の「足原雛子」「田中さんSEXY」を使って

バンド編成の楽曲をフルオーケストラに編曲しなおし

オペラ歌手の「木並春香」に歌わせようと考えた。

 

 

「水上えりか」は早速「SHOW楽観レコード」を訪れ

「田中さんSEXY」のフルオーケストラ化の許諾を取り付けようとした。

 

しかし「足原雛子」「田中さんSEXY」シリーズが未完なので

乗り気でなかった。

ところが何故か「SHOW楽観レコード」の担当に説得され続け、

仕方なく「原曲に忠実に」と言う条件で渋々OKすることにした。

 

何故「SHOW楽観レコード」はフルオーケストラ化の許諾に拘ったのか。

それはズバリ金である。

「日照交響楽団」から版権使用料をガッポリ儲けようとしたのだ。

 

 

 

編曲を担当したのが「藍沢朋子」だった。

彼女は、原曲のファンから「原曲クラッシャー」と揶揄される

自分勝手な編曲することで有名な編曲家だった。

 

そんな「藍沢朋子」「水上えりか」チーフマネージャー

 

「好きなようにやっちゃってくださいw。

原作者がなんか言ってきても私がガツンと言ってやりますからww」

 

「足原雛子」の条件をガン無視する形で

編曲を依頼したのだ。

 

もちろんそんなことを「足原雛子」は知る由もない。

相手が天下の「日照交響楽団」なら

約束は必ず守ってくれると信じきっていた。

 

 

当然、問題が発生する。

毎回、原曲を大きく改編したスコアが「足原雛子」に提出されたのだ。

大きな問題点は、

 

・旋律が変わっている。
・長調の部分が短調に変えられている。

・歌詞を勝手に変えられている。

・曲のサビを大幅に削除されている。

 

といったもの。

もはや「足原雛子」「田中さんSEXY」ではなくなっていた。


「足原雛子」「水上えりか」チーフマネージャー

「なんでこんなバカなことが起こるんですか」

と理由を聞いても、

「さあ、私はちゃんと伝えたんですけどねぇ…」

と、はぐらかされるばかりで、

納得のいく返事は一切返ってこなかった。

 

 

それも当然である。

「水上えりか」チーフマネージャーにとって「田中さんSEXY」

ただの金儲けのネタでしかなかったからだ。

 

その原曲に対して思い入れなど全くなかったし、

曲がどうなろうと知ったこっちゃなかったのである。

ただただ自分の実績として

「日照交響楽団」のコンサートを開ければ良かっただけなのだ。

 

 

自分の楽曲を愛し大切にしてきた「足原雛子」

窓口である「水上えりか」に対し、粘りに粘って修正を頼み込み、

やっとの思いでほぼ原曲通りの1~7楽章のスコアの完成にこぎつけた。

 

だがその陰で「藍沢朋子」はブチ切れていた。

「あんなつまらない曲を、私が素晴らしい交響曲にしてやってるのに!

なんで素人の原作者ごときが私の“作品”にケチ付けんのよ!」

 

それに対し「水上えりか」

「8~10楽章は原作がないオリジナルだから

藍沢先生の才能をガンガンぶち込んじゃってくださいよ。

原作者がなんと言っても今度こそ私が黙らせますから」

となだめるしかなかった。

 

 

一方「足原雛子」はこの状況を疑問に思っていた。

 

『編曲家さん、指揮者の方といった交響楽団スタッフの皆様と私達を繋ぐ窓口は
マネージャーの方々だけ。

だとしたら、マネージャーの方々が当初「フルオーケストラ化の条件」として
「SHOW楽レコード」から「日照交響楽団」さんに伝えていただいた内容を、
どのように編曲家さんや指揮者の方、楽団スタッフの皆様に伝えているんだろう。
当初伝えた「フルオーケストラ化の条件」はどうなってしまったのだろう?』

 

 

実は、8~10楽章は、まだ楽曲未発表だったため

「足原雛子」の今後の楽曲製作に影響が出ないよう

今回の交響楽コンサートのためだけに

「足原雛子」がオリジナルの楽曲を準備することが条件になっていた。

 

ところがここでも当初の条件は守られず、

「足原雛子」が準備したものを大幅に改変したスコアが

8~10楽章まとめて提出されたのだ。


特に9、10楽章の改変された楽曲はメチャクチャで、

「足原雛子」


「当初の約束通り、とにかく一度私が用意した詞と曲で
そのまま編曲してください!
足りない箇所、変更箇所、意見はもちろん伺うので、

スコアとして改変された形ではなく、別途相談してください!」


「SHOW楽観レコード」を通じ「日照交響楽団」へ申し入れをしたが、
その後も、大幅な改編がされたスコアが提出され続けた。

 

 

その理由は「藍沢朋子」のプライドだった。

 

「私が書いた曲の方が元の曲より絶対盛り上がるのに!
交響楽のことも何も知らないド素人のくせに、

原作者ごときが私の“作品”にケチをつけるなんて何様のつもりよ!」

 

そう喚き散らす「藍沢朋子」「水上えりか」は、

 

「私もあの原作者にはうんざりしてるんですよ。

ジャンルが違うんだし原曲通りになんか編曲できるわけないのに。

たかが原作者のくせに意固地になっちゃってるんですよね。

でも、このままじゃ埒があかないので、

ここはひとつ先生が大人になって、一度そのまま編曲して貰えませんか?」

 

と、なだめるも、「藍沢朋子」こそ、もはや意固地になっていて、

「私の好きに書けないなら絶対編曲なんかしない!

と編曲作業を止めてしまったのだ。

 

 

 

状況は変わらないまま約4週間が過ぎていった。

 

コンサート開演のスケジュールのリミットが迫っていた。

 

当初「足原雛子」
交響楽オリジナルとなる8~10楽章全てのスコアを見て

オリジナル部分全体で加筆修正する予定だった。

 

しかしそれはもはや不可能な状況だったので

8楽章だけは何とか改変前の楽曲に近い修正を行って

「日照交響楽団」に渡さざるを得なかった。

 

時間的な限界を感じた「足原雛子」「SHOW楽観レコード」を通じて

「9~10楽章については、当初の条件としてお伝えしていた通り、
こちらが用意したものをそのまま編曲していただける方に交代してほしい」

と、「日照交響楽団」にお願いした。

 

このままではコンサートの開催が危ぶまれるので

「日照交響楽団」は渋々この要求を飲むことにした。


結果として、「藍沢朋子」は降ろされることとなった。


「藍沢朋子」は9~10楽章の編曲には関わらないとしたうえで、
9~10楽章の編曲は、マネージャーの方々の要望を取り入れつつ、

「足原雛子」が編曲し、フルオーケストラのスコアとして成立するよう

「日照交響楽団」と専門家の方とで内容を整える、
という解決策になったのだ。

 

これは、

「受けた以上最善を尽くしたい」

「演奏する方々に迷惑を掛けたくない」

と言う「足原雛子」の誠実で真面目な性格からだった。

 

 

そうして、どうにかコンサートは無事に開催された。

 

 

 

「足原雛子」は心身ともにボロボロに疲れ果てていた。

地獄のような日々から解放され

7ヵ月ぶりに心穏やかな時が戻ってきた。

 

自分の愛しい楽曲を守り抜いただけでも良しとしよう、と

「足原雛子」は自分を慰めた。

 

 

本来なら、これで終わるはずだった…。

 

 

 

 

ところが、

降ろされたことを根に持っていた「藍沢朋子」

実に大人げない行動に出た。

 

なんとInstagramに「足原雛子」を非難するコメントを投稿したのだ。

 

「最後は編曲もしたいという原作者たっての要望があり、

過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、

残念ながら急きょ協力と言う形で携わることになりました。

私が編曲したのは1~8楽章で、

最終的に9・10楽章を編曲したのは原作者です。

シンフォニーの最後がショボイのは素人が編曲したからです。

私のせいではないので、

誤解なきようお願いします。

プロの編曲に素人が口を出すという

今回の出来事は、編曲制作の在り方、

編曲家の存在意義について深く考えさせられるものでした。

この苦い経験を次へ生かし、

これからもがんばって

原曲を跡形もなく超える編曲をして

いかねばと自分に言い聞かせています。

どうか、今後

プロの編曲を素人の原作者が邪魔するなどと言う

ことが二度と繰り返されませんように。」

 

これに賛同した「藍沢朋子」の取り巻きが

「藍沢朋子先生の作家としての尊厳を傷つけた」などと

「足原雛子」に対し誹謗中傷し始めたのだ。

 

 

さすがにこれには「足原雛子」も我慢できなかった。

 

自分の子供のように大切にしてきた

「田中さんSEXY」をさんざん蹂躙され続けてきた上に、

今度は「足原雛子」自身を貶めようとしているのだから。

 

「足原雛子」は最後の気力を振り絞り、自身のSNSに

今まで自分に起こった理不尽な出来事を投稿した。

 

みんなに知って欲しかった。

ただそれだけだった。

 

 

 

するとすぐに「SHOW楽観レコード」から「足原雛子」連絡がきた。

担当の上司である事業部長からだった。

 

「足原さん、何てことしてくれたんですか。

藍沢先生を個人攻撃するようなことをネットに書いて。

日照交響楽団さんが大激怒ですよ。

 

ウチは日照交響楽団さんに

『名探偵は湖南にいる』とか『早漏のフリーター』とか

ウチのドル箱コンテンツを演奏してもらってるんですよ。

日照交響楽団さんとの関係が悪化したらどうしてくれるんですか。

億単位の損害ですよ?

 

藍沢先生も名誉棄損で訴えると息巻いてますし。

足原さんに数千万円の賠償額、払えるんですか?

 

あの個人攻撃した文章、今すぐ削除して下さい。

でないと、ウチとしても足原さんのこと、庇いきれませんからね。

なんならウチが足原さんを業務妨害で訴えてもいいくらいです」

 

 

「足原雛子」の心は砕け散った。

味方だと思っていた「SHOW楽観レコード」

守ってくれないどころか、自分を非難してきたのだ。

 

 

 

そして最悪な事態が訪れる。

 

「足原雛子」はSNSに書いた、これまでの経緯を全て消し、

それに代えて

 

「攻撃したかったわけじゃなくて。

ごめんなさい。」

 

とだけ書き残し、

自ら命を絶ってしまったのだ。

 

 

 

 

その訃報を聞いた「藍沢朋子」は「チッ」と舌打ちをした。

「めんどくせえなぁ。これじゃ私のせいみたいじゃん」

とぼやきながらInstagramに鍵をかけ、

 

「しゃーねー、騒ぎが収まるまでのんびりしてるかw」

と、「田中さんSEXY」の編曲で儲けたギャラで

さっさと海外へ逃げてしまったのだ。

 

 

 

「SHOW楽観レコード」の事業部長はため息をついた。

「あーあ。足原のバカ、何してくれたんだよ。

またイチから金蔓を探さなきゃなんねぇじゃねーか…」

 

とは言え、所属アーチストが亡くなったのだから、

世間体を考えて追悼文を出すことにした。

 

「足原さんの生前の多大なご功績に敬意と感謝を表し、

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
足原さんが遺された素晴らしい作品の数々が、

これからも多くの皆様に聴き続けられることを心から願っております。」

 

 

 

「水上えりか」は焦った。

「せっかく日本交響楽団マネージャー協会理事まで上り詰めたのに

こんなつまらないことで私の大切な肩書を奪われてたまるか!」

 

「水上えりか」「日照交響楽団」上層部に

「足原雛子」のせいでいかに公演まで大変だったか力説した。

 

しかし上層部もバカではない。

「水上えりか」「足原雛子」との約束を

いっさい守らなかったことが原因だと見抜いていた。

だが、そのうえで「不問」とした。

 

何故なら、もしそんなことが世間にバレたら

ただでさえ募金を着服していたことで批判されているのに

それこそ「日照交響楽団」の信頼は地に落ちてしまうからだ。

 

 

そこで「水上えりか」の失態を隠蔽すべく次のようなコメント発表した。

 

「日照交響楽団は『田中さんSEXY』のフルオーケストラ化の提案に際し、

原作代理人である「SHOW楽レコード」を通じて

原作者である足原さんのご意見をいただきながら編曲作業の話し合いを重ね、

最終的に許諾をいただけたスコアで演奏しております。

交響楽『田中さんSEXY』は、

日照交響楽団の責任において演奏したもので、

関係者個人へのSNS等での誹謗中傷などはやめていただくよう、

切にお願い申し上げます。」

 

こんなふざけたコメントで、この騒動が収まるはずもないのに…。

 

 

 

 

この件に関して、ネットは今日も大荒れである。

 

信じられないことに、

未だにいっさい

「藍沢朋子」及び「水上えりか」から

「足原雛子」および彼女の遺族に対し、

真相の説明はおろか

謝罪もお悔やみの言葉すらない状態だ。


当然である。

「藍沢朋子」「水上えりか」にとって大切なのは、

金儲けに使える「足原雛子」の楽曲だけで、

「足原雛子」の命など、どうでもよかったのだ。

 

彼女たちは今日も、

何事もなかったようにヘラヘラ笑いながら、

次の「金になるカモ」を探しているのだった──。

 

 

 

 

この物語はフィクションであり、

登場する人物、団体等は実在のものとは

いっさい関係ありません。

 

 

 

 

 

さて。

これは僕がゼロから考えた全くの架空のお話です。

 

最近ではすっかりマスコミが取り上げないので

いつ小耳に挟んだのかも忘れた出来事にインスパイアされて

全くのオリジナルで創作したフィクションです。


だから、この話を読んで

誹謗中傷されたなどと言い出す人は絶対にいるはずがない、

いや、いてもらっては困るのです。

 

だって、もしもそんなことを言い出す人がいたなら、

その人、身に覚えがあるってことになっちゃうから。

 

だいたい、こんな胸糞悪いことをする鬼畜のような人間が

この世の中に存在するはずないじゃないですか。

 

僕はそう信じて書きました! プンプン

 

 

 

 

ところで、

日本テレビ「三上絵里子」チーフプロデューサー

にご相談があるのですが。

 

僕はこの話を「漫画」か「小説」にして

小学館から出版しようと思っているので、

その折には、それを原作に

日本テレビでテレビドラマ化する

というのはいかがでしょうか。

 

常識では考えられない吐き気がするほど酷い内容の話だけれど

だからこそ新しいものを求める視聴者に刺さるんじゃないかと思うんですが。

 

脚本は、原作の脚本化に圧倒的な実績がある

「相沢友子」大先生

以外に考えられません。

 

どうですか?

日本テレビ「三上絵里子」チーフプロデューサー

前向きに検討しては頂けないでしょうか。

 

 

あ。ただし、僭越ながらひとつだけ条件があるのですけれど…。

 

いつもちゃんと原作と原作者をリスペクトしていらっしゃる

「相沢友子」大先生「三上絵里子」チーフプロデューサーに対して

今更過ぎて大変失礼なことと重々承知していますが、

 

ドラマ化の際には

「必ず原作に忠実に」

お願いしますね。