いつからでしょうね。

日本映画のエンドロールのキャストで

役名と役者を並べて表記しなくなったのは。

 

 

ちなみに

やしの木 Peppermint Film Workers since 1984 やしの木

の映画では、役名と役者を併記しています。

8mm自主映画「みちのり」で見てみましょう。

 

 

 

     笠井宏明  渡辺浩次    

     松下信夫  松鹿範生    

     染田千春  佐野清美    

     林 直美  佐久一美    

  織部深雪 (声)  野中登代美  

 工場長の奥さん  種綿生子   

        吉沢  山岡信樹     

      ライダー  山本英樹     

    酒屋の店員  樋口博之    

        同僚  桑田健司     

     チンピラ1  網倉 覚     

     チンピラ2  半沢伸一     

バイクの笠井宏明  二宮 敬   

     会社の人  藤田康朗    

             石黒賢一      

             村上道彦      

       通行人  津留哲久     

             小塩千春      

             林  毅      

             板垣宙樹      

             土方 誠      

             伊東 毅      

 

 

 

こんな感じです。

これを今の日本映画のエンドロール的にすると

 

 

 

渡辺浩次

 

松鹿範生

 

佐野清美

 

佐久一美

 

山本英樹

樋口博之

桑田健司

網倉 覚

半沢伸一

二宮 敬

 

山岡信樹

 

藤田康朗/石黒賢一/村上道彦

津留哲久/小塩千春/林 毅/板垣宙樹/土方 誠/伊東 毅

 

野中登代美

 

種綿生子

 

 

 

こんな感じになると思います。

これじゃ誰がどの役をやったのかわかりません。

しかも、何でこんな順番で並んでるのか

一般人には理由が分かりません。

 

 

      *      *      *

 

 

実は日本映画のエンドロールには

大御所のメンツとか、芸歴とか、役者の格とか、

さらには事務所への配慮がふんだんに盛り込まれています。

 

つまり、プロデューサーの忖度が

キャストの順番なのです。

 

 

ちなみに

今の日本映画のキャストの構成はこんな感じです。

 

 

【トップグループ】主要キャスト。単独表記で各々の名前の間を広げて目立たせます。

 ・トップ … 主役

 ・トップ2番手 … 準主役

   :

   :

 ・トップグループトメ … 主要キャストのうち格が高い役者

 

【脇役連名】行間なく名前が並ぶ人。脇役が並びます。

        ちゃんとセリフがあってちゃんとした芝居が要求される人たちです。

 

【中グループ】連ドラとかではその回のゲスト俳優がこの辺です。目立たせます。

 ・中グループトップ … 重要人物役

 ・中グループトップ2番手 … 準重要人物役

   :

   :

 ・中グループトメ … 重要人物役のうち格が高い役者

 

【端役連名】行間なく名前が並ぶ人。端役が並びます。

        エキストラよりは芝居が要求されるけど、セリフが一言とか無かったりとか。

 

【エキストラ】エキストラ事務所の名前や、劇団、プロダクション名、

        ボランティアエキストラとかで一括りされちゃう人たち。

 

【トメグループ】ベテラン、大御所など。とにかく目立たせます。

 ・トメグループトップ … ベテラン俳優さんとか

   :

   :

 ・トメ前 … 最後から2番目に名前が出る人。

         作品の中で、主要キャストになる人はこの位置も使われます。

 ・トメ … キャストの中で最後に名前が出る人。

         作品によってはW主演の片方が表示されたりしますが、

         多くはこの作品の中で一番格が上の役者がここに鎮座します。

 

 

つまり、

主演やベテラン、大御所を目立たせるための配慮なのです。

「なんであいつより俺が下なんだ!」とか

「ウチの役者、もっと目立たせてよ」とか、

そんな我儘を上手に潜り抜けて

いかに全員を納得させて並べられるか

プロデューサーの手腕が試されるのです。

 

 

      *      *      *

 

 

ところが、

三谷幸喜さんが監督された映画のクレジットは

この日本的忖度を見事に解決してしまいました。

 

なんと五十音順に並べてしまったのですw

 

これなら

「なんであいつより俺が下なんだ!」

と言われても

「五十音順だから」

で黙らせられます。

 

「ウチの役者、もっと目立たせてよ」

には

「みなさん五十音順で納得されてますので」

で黙らせられます。

 

 

      *      *      *

 

 

だけど、僕はハリウッド映画のように

役名と役者を並べて表記して

作品の中の役の重要度で並べるのが好きなのです。


そう。

ハリウッド映画では

表記される順番こそが大事なのです。

 

グループとか行間を開けて目立たせるなんてこともせず

 

 

主役
準主役
重要な脇役

脇役
端役

エキストラ

スタント

 

 

の順番で容赦なく並びます。

とっても理にかなっています。

 

そしてこの表記方法は

“役”“役者”に対する敬意だと、僕は思います。

 

 

ハリウッドのプロデューサーは

映画では「登場人物こそが大事」だと考えているのでしょう。

 

そして、映画の登場人物が魅力的なのは

それを見事に演じた「役者のお陰」だと知っているのです。

 

だからこそ

あの“役”を演じたのは、あの“役者”である

と、明確に宣言するわけです。

 

そして、「重要な役の順番」で並べるのです。

 

 

 

ところが日本では、

人気俳優をキャスティングすれば客が来る

と考えているのか、役者の名前しか並べないんです。

そして客を呼べる役者を目立たせることに腐心するのです。

 

でもそこには

映画への思い入れやリスペクト、

作った監督や脚本家、演じてくれた役者への感謝などが

込められているか疑わしいと感じてしまいます。

 

 

だから僕は

日本映画のエンドロールが好きじゃないのかもしれません。

 

 

 

 

 

暑いので涼しげな写真を載せてみました。

蓬莱舞(C)Takeo Dec./集英社

 

 

 

 

 

もし、万が一、

やしの木 Peppermint Film Workers since 1984 やしの木

で映画を撮ることになったら、

僕は絶対ハリウッド式エンドロールにします!