2022年03月28日のブログ

 

 

では、主に撮影することに関して書きました。

なぜなら今は、8mmフィルムを素材として扱う以外

映画として完成させる手段がないからです。

つまりフィルムでの編集は想定できないという事です。

 

でも、この先8mmフィルムで編集しようとする

ツワモノが現れないとも限りません。

 

そこで、備忘録的意味も含めて

僕が8mmフィルムを編集した作業手順を記しておくことにします。

 

ただし、フィルムを取り扱うにあたって

これだけは肝に銘じておいて欲しいのですが、

8mmフィルムは唯一無二のポジフィルムです。

この世にそのフィルムしか存在しません。

切る所を間違えたら絶対に元に戻りません。

傷つけたり折り曲げたりしたら絶対に修復できません。

取り扱いは慎重の上にも慎重に。

 

だから絶対に、あなたの大切なフィルムを

DジタルWイトなんかに触らせちゃダメですよ!

絶対にですよ!

 

 

 

さて、撮影したフィルムが現像から戻ってきところから

 

1)現像上がりのフィルムを確認する。

現像上がりのフィルム映写機で映します。

その際、映ってる内容と記録とを突き合わせて

シーンとカットを確認します。

 

なぜわざわざ映写機で映して見るのか。

別に“ラッシュ”を気取ってるわけではありません。

 

僕のエディターの画面は140mm×102mmの大きさで

10wの暗い電球で摺りガラスに映すので

細部がよく分からないのです。

だから細部まで見るにはどうしても映写機で映すしかないのです。

[使用機材:映写機]

 

 

2)シーンごとに切断する

確認したらシーンごとに切断し、

番号の若い順に繋いでいきます。

撮影は順撮りしているはずはないので初めは

S#5、S#13、S#66

とか、飛び飛びになっています。

全てのシーンがきちんと並ぶまで

撮影しては確認して切って繋げてをひたすら続けます。

[使用機材:エディター、スプライサー]

 

 

3)カットごとに切断する

ひとつのシーンもいくつかのカットでできています。

そのカットも順撮りしていない場合が多いので

カットごとに切断し、カット番号の若い順に繋いでいきます。

その際、明らかなNGカットは除外します。

使えるかも、と疑わしいカットは残します。

[使用機材:エディター、スプライサー]

 


4)OKテイクを選び出す

2)と3)を繰り返し、シーン1から最後のシーンまで繋げ、

カットもカット1から最後のカットまで順番に繋げたら、

もう一度映写機で大きくスクリーンに映して

一連の流れから確認しOKテイクを決めます。

なぜなら現場でOKにしたテイクでも、

現像してみるとそのひとつ前のテイクの方が良かった

なんてことがあるからです。

大画面で細部まで確認して慎重にOKテイクを選びます。

[使用機材:映写機、エディター、スプライサー]

 

ちなみに

フィルムを1本のリールに巻く必要はありません。

編集効率を考えて

小さめのリール3~4本くらいに分けた方がいいです。

リール1はS#1~S#29

リール2はS#30~S#44

リール3はS#45~S#69

てな具合です。

僕は8mm映画『Too far away』では400ftのリール4本に分けて

8mm映画『みちのり』では400ftのリール6本に分けて巻きました。

 

 

5)編集点を見つける

OKテイクだけを繋いだら編集点を探します。

アクション繋ぎでなければタイミングだけなので

エディターでの確認で済みますが、

引きの画で口の動きが分かりにくいとか

アクション繋ぎのタイミングをコマ単位で確認したいときなどは

映写機を使って細部を確認します。

[使用機材:映写機、エディター、スプライサー]

 

また、初めから一気に編集点を決めて切断せずに

前後1秒とか10コマとか余裕をもって繋ぎます。

そして何度も何度も確認して編集点を探し、

徐々に詰めていきます。

 

なぜなら、何度も言っていますが8mmフィルム

間違えて切断するともう二度と元に戻らないからです。

特に、1~2コマ間違えて切ってしまった場合、

そのたった1~2コマを繋げ直したいと思っても

絶対に不可能なのです。

大袈裟でも何でもなくて

スプライサーの構造上、本当に物理的に繋げません。

 

僕の場合、アクション繋ぎの時などは

1コマ切るのに1週間悩み続けるなんてざらでした。

毎日、何度も映写しては頭の中で繋いでみて

手の角度や顔の向きなど

どのタイミングでどう繋ぐかを何通りも脳内シミュレーションして

意を決して切って繋いでみる

と言う、なんとも神経をすり減らす作業を続けていました。

 

今のデジタルみたいに

取り敢えずやってみて失敗したらやり直し

なんて絶対に出来なかったのです。

 

また、この段階までくると

OKテイクが確定して、ある程度編集が進んでいるので

どの音が必要かが見えてきます。

そこでこの辺りから効果音集めが始まります。

[使用機材:カセットデンスケ、マイク]

 

 

6)粗編集

ギリギリまで攻める編集の一歩手前、

まだカット繋ぎに数コマの余裕がある段階を

僕は勝手に「粗編集」と呼んでいました。

[使用機材:映写機、エディター、スプライサー]

 

この段階で音楽をどうするかを決めました。

松鹿ちかてつくんに曲を発注する場合は

このバージョンを見てもらってイメージしてもらいました。

先に曲がある場合は、

曲に合わせて編集する作業もここです。

 

 

7)本編集

そしてカット繋ぎをギリギリまで攻めて仕上げます。

その仕上がった物を「本編集」

とは特に呼んでいませんでしたw

[使用機材:映写機、エディター、スプライサー]

 

また、撮影の時に、アドリブなど台本と違うセリフを言ったり

記録漏れのセリフなどをここまでの編集の段階で拾い上げ

アフレコ用の台本を作ります。

[使用機材:レポートパッド、シャーペン]

 

こうして編集作業は完了します。

 

※僕のエディター GOKO MM-5 (のネットからの拾い物写真)

 

 

 

 

ここからはフィルム編集後の話なので“おまけ”です。

 

8)アフレコ

アフレコ用の台本をもとにアフレコをします。

編集した映像の完パケを映写機でスクリーンに映し

それを見ながら口に合わせてセリフをしゃべります。

今みたいに編集ソフトで微調整などできないので

映像の口に合うまで何テイクも行います。

20テイクとか行くこともざらにあります。

[使用機材:映写機、カセットデンスケ、マイク]

 

 

9)フィルムに音声を録音する

アフレコと効果音、音楽をMAします。

と言っても、今みたいにパソコンで

マルチトラックで作り上げる事などできません。

8mmフィルムの両端に塗布された磁性体に

映写機の録音機能を使って直接録音するしかないのです。

 

その準備として、

シーンごとにセリフに効果音を加えた音声テープを作っておきます。

 

作り方は、映像を映写機で映しながら映像に合わせて

アフレコのテープと効果音をミキサーで混ぜて別のテープに録音して

シーンごとに「音声」の完パケを作ります。

タイミング合わせは手作業です。

画の動きをきっかけに「ここだぁ!」とカセットをスタートさせます。

ちょっとでもズレたらぴったり合うまで何度でもやり直しです。

もう、“勘”と“運”の世界ですw

[使用機材:映写機、カセットデンスケ、カセットデッキ×2、ミキサー]

 

そうして作った音声テープを

映写しながら映写機の録音機能を使って

8mmフィルムの両端に塗布された磁性体に録音します。

タイミング合わせは手作業です。

画の動きをきっかけに「ここだぁ!」とカセットをスタートさせます。

ちょっとでもズレたらぴったり合うまで何度でもやり直しです。

ただただ、“勘”と“運”の世界ですw

 

この地味な作業を地道に全てのシーンで行います。

[使用機材:映写機、カセットデッキ]

 

 

10)フィルムに音楽を録音する

僕は、太いメイントラックにセリフと効果音の「音声」を、

細いガイドトラックに「音楽」を録音しました。

 

決まりはありません。

人によっては、セリフと効果音に音楽まで

同じトラックに混ぜて録音する人もいますし、

太いメイントラックと細いガイドトラックの2つを

右の音、左の音としてステレオで録音する人もいました。

[使用機材:映写機、カセットデッキ]


僕の場合「音楽」だけ別トラックに録音していたので

8mm映画『Too far away』では

一部「音楽」をフリー楽曲に差し替えることができたのです。

 

ちなみに映写の時には左右の音をセンターに置いて

モノラルとして出力しました。

 

※僕の映写機 ELMO GS-1200 STEREO (のネットからの拾い物写真)

 

 

このバカみたいにデリケートで根気のいる録音作業は

8mm映画『Too far away』はもちろん

8mm映画『みちのり』でも行われています。

 

だから8mm映画『みちのり』

あれだけ正確に入っている効果音がどれほど凄いことなのか、

録音・効果の「松鹿ちかてつ」くんと「山岡信樹」くんの技術が

どんだけ超ヤベーことなんだって話です。

8mm映画であんなにピッタリ効果音を合わせられるなんて

もはや職人レベルです。

 

 

 

 

閑話休題。

テーマは『8mmフィルムを編集するとは』でしたね。

 

ここに記した編集方法

恐らく誰が作っても、どの8mm映画でも

同じようにして作っていたはずです。

 

ね。8mm映画ってもンのスゴイ手間でしょ?w

8mm映画『Too far away』で制作に10ヶ月、

8mm映画『みちのり』で制作に1年7ヶ月、

8mm映画『詩集 新しい人』で頓挫したのも

納得してもらえたと思います。

 

 

え? まだ、大変さがイメージできない人がいる?

そんな人は、今日のブログの

「文字の量」で推し量ってくださいw

 

 

 

まあ、とにかく8mmフィルム

間違えたら取り返しがつかないと言う宿命を背負っていたので

その緊張感がたまらなく、

今思い返せば、

その真剣勝負が実はとても楽しかったんだなって思います。

 

 

また、作業手順に正解などないので、

これから8mmフィルムを編集しようとするツワモノさんは

自分の思うがままに繋げばいいと思います。

 

ガンバレ!チュー

 

 

 

 

フィルムは本当に大変だけど楽しかったなぁ。

やしの木 Peppermint Film Workers since 1984 やしの木

で経験した映画作りは僕の心の財産です。