KISS+03 Reply | 全てデフォルトで~pfrs~ピエフアレスのブログ
「元気?
 しか書いてないハガキを寄越されても
 返事の書きようがないよ。
 なんてね。
 京都の夏は暑いって噂には聞いていたけれど
 本当サウナのような暑さです。
 学校に到着するまでに汗だく、バイクでも買おうかなんて思ってます。

 本当は電話でもと思っていたけれど
 たまにはメールや電話ではなく手紙でも、なんて考えてみました。
 いざ便箋を目の前にすると何を書いていいのかわからないですね。
 
 元気?
 暑さには閉口しますが至って楽しい学生生活を送っています。
 当然のように周囲は関西弁の渦。
 『俺は感化されないぞ』とは思いつつ『そうやな・・』と
 口走るようになってきました。
 夏休みはバイトでもしようかと知り合いにも声を掛けてます。
 8月は中学の時のバスケ部のOB会があるようなので帰省します。

 また暇ならハガキでもください。
 一言だけ、は止めてください。リアクションしにくいので。
 それではまた。」

便箋を三つ折りにし封筒に入れる。
『こんなもんでいいよな・・』と不安になりながらもう一度開く。
改まって手紙を書くという行為を意識したことはなかった。
送られてきたハガキの意図を深読みすることも止めた。
ただ「リアクションしにくいので」のあとに辛うじて(笑)とだけ付け足した。

住所を確認して切手の持ち合わせが無く近くのコンビニまで。
玄関を開けると湿った温い空気が体中を包んだ。

僕が住むマンションから3分くらいの所に目的のコンビニエンスストアがある。
引っ越ししてきた時から何かと店長夫婦が声を掛けてきてくれた。
何でも僕が住んでいるマンションの家主さんの親戚であれやこれやと
晩ご飯のおかずの心配までしてくれる。今日は奥さんがレジに入っていた。
「あら、いらっしゃい。久し振りやないの」
「って昨日の朝、来たじゃないですか」
「ああ、そうやったかしらねえ。今日は何の用事なん?」
「切手、売ってましたよね。80円切手1枚もらえますか?」
「珍しいなあ、最近切手買うてく若い子おへんで。1枚でええのんか?」
僕はポケットから100円玉を出した。
「切手は相手との関係を切ってしまうこともあるんよ。
こういう時は2枚買うとくのが縁ていうものやねんで。悪いことは言わんさかい2枚にしときよし」
その話の信憑性はともかくこの奥さんに係っては自分の心の中まで見透かされているようで素直に信じることにした。
「そうそう、煮しめ炊いたし持って帰るか?」
あっという間に奥の方に消えていった。
「有難う」
僕は40円のおつりとタッパーにギュウギュウ詰めになった煮しめを受け取った。
「彼女さんへかい?」
この奥さんは恐ろしいほど勘がいい。
「ち、違いますよ。久し振りにハガキをもらった友人です」
「自分の字でしっかり書くんやで。メールは安易すぎて有難みがあらへん」
もう一度「有難う」と言って店を出た。

コンビニとマンションの途中にあるポストには封筒を入れずに部屋に戻った。

「追伸
 いま切手を買いにコンビニに行きました。
 店長の奥さんに言われて切手を2枚買いました。」

これだけ追加した。新しい封筒に入れ直した。