KISS+01 一枚のハガキ | 全てデフォルトで~pfrs~ピエフアレスのブログ
「元気?」
丁寧な3文字。
集合ポストに入っているダイレクトメールやチラシに紛れて
四隅が草臥れていないハガキが手の中にあった。
僕は顎から滴り落ちそうな汗を拭い宛名を見返した。

「エリコからだ・・」
エリコは中学、高校と同級生だった。
同じクラスになったのは中学1年のことで特別親しくしていた印象はない。
思い出すと言えば僕が部活でひたすらフットワークを繰り返す横のコートで
シャトルコックを機敏に打ち返す彼女の姿だった。

僕はマンションのドアの鍵を開け肩に食い込むカバンを放り出し
バルコニーの窓を開け放った。
隣の部屋のエアコンの室外機の音が俄に響くと
蒸し暑さが増す気がして慌てて閉めると
エアコンのスイッチを躊躇うことなく押した。
手にしたハガキの行き場を探していると机に平積みになっている
高校の卒業生名簿が目に止まった。
ハガキを名簿に無造作に挟みエアコンの冷風を浴びながら
携帯のメールを確認すると心許ないバッテリー残量を見てクレードルに置く。

まとわりついた汗がなかなか引かずに少しイライラしている。
仕方なくポロシャツを着替え冷蔵庫の牛乳を飲み干し
引かない汗と何か急かされているような焦燥感が気怠い。

高校の進学相談会で僕の隣のクラスの廊下で自分の番を待っていた
エリコの姿を思い出していた。
大概の生徒は大学への進学を希望していて模試の結果などを踏まえて
希望順位を明らかにし始めていた時期だった。
僕は京都の大学を本命に関西の大学数校を滑り止めとして受験する意思を担任に伝え
教室を出ると隣のクラスのドアの前で椅子に座って順番を待つエリコがいた。
目を向けたのは数秒もなかっただろうが体育館で見せていた溌剌とした様子はなく
不安そうに肩をすくめていた。
東京の大学に進学したと言う話は何となく耳に入ってきた。
ただそれだけだった。

「元気?」と書かれたハガキが突然舞い込む非日常が僕を混乱させた。
そして静かに携帯電話が震え出すと着信音が鳴り出す。
一気に心拍数が上がる・・