この前、たくさんのピアニストが出演したチャリティーコンサートにPiotrも出た。

そのコンサートはラジオ放送とネット中継もされる大規模なもの。

ショパンの全てのピアノ作品をピアニストたちが手分けしてノンストップで弾き続けるマラソンコンサートで、PiotrはもともとエチュードOp.25だけを担当する予定だった。


Piotrは他のコンサートやレッスンをこなしながら、時間をうまくやりくりして練習していた。


そんな中、直前でエチュードop.10を弾く予定だったピアニストが降板した。

もう本番数日前、焦った主催者は、過去にエチュードop.10全曲をコンサートで弾いたことがあるPiotrに真っ先に電話してきた。

私は「もう時間もないし、エチュードop.25と他のコンサートの練習と、レッスンで手いっぱいなんだから、引き受けるべきではない」とPiotrに伝えたけれど、他の出演者で本番5日前にエチュードop.10全曲を頼んでできそうな人がいないということで、結局Piotrが引き受けざるを得なくなった。


さすがにPiotrも「間に合うかわからない」とこぼすくらいの難題。

さらに、本番の時間も問題だった。

Op.10は夜8時前頃、Op.25は深夜2時過ぎから演奏開始だった。

そもそもそんな真夜中にタフなプログラムを演奏するというのが既に私は不安だったのに、直前にop.10も弾くことが決まって、もう体力的にも準備的にも、物理的にも脳疲労的にもこなせる気がしなかった。

そしてその状態のPiotrにさらに追い討ちで、本番4日前にまた降板者が出て、ノクターンop.72も弾かなくてはいけなくなった。

エチュードop.10、op.25、ノクターンop.72。

もう時間がなさすぎて、ノクターンはステージに出る直前に練習して、本番は譜面を見ながら弾いたぐらい。


で本番がどうだったかと言うと、op.10もop.25もミス連発。

ノクターンもミスタッチ。


そりゃそう。そりゃそうだよ。


直前のピアニストたちの降板劇、それをPiotrが自分の演目や他のコンサートの演目を抱えながら一人で尻拭いするなんて、無茶苦茶すぎた。

もともとエチュードop.25全曲を深夜2時過ぎに生放送で弾くのですら不安が無いわけではなかったのに、それに加えていきなりエチュードop.10全曲とノクターンを引き受けるなんて。
しかも決まったの本番4〜5日前だよ。
普通にレッスンとか他のコンサートもある中でだよ。



かなり前に、アイスランドの映画でカンパネラを弾いてるシーン?か何かの撮影をするために、その依頼が来て3日間くらいで、それまできちんと弾いたことがなかったカンパネラを仕上げて撮影してきたことがあったし、展覧会の絵も依頼がきて譜読みから仕上げまでを一週間で間に合わせて演奏会をこなしたこともあったし、Piotrは本当に直前の依頼でも割と無難且つハイクオリティにこなせるピアニストではあるのだけど、さすがに無理過ぎた。


挙げ句、降板したピアニスト、一人はPiotrに謝罪も感謝も何もないし、一人は「練習が足りてない」とかわざわざメールで言ってきたみたいで、そんなんあなたたちが直前に降板しなけりゃ良かった話で、降板するならするでさっさと覚悟決めて主催者に伝えとけば主催者は後任探しにももっと時間かけられたし、仮にPiotrが引き受けることになっても、もっと準備時間は取れたはずだったわけで、でもPiotrは心が広〜い人だから気にしてないし笑って受け流してるけど、直前の彼の大変さをそばで見て、負け戦に挑む夫のできるだけのサポートをした私は、本当に彼らに腹が立って腹が立って、理不尽な状況でやるしかなかったPiotrに、それでも笑顔でやりきったPiotrに、とる態度・かける言葉がそれなの⁉︎と怒鳴り込みにいきたいのを抑えている。

あなたたちの尻拭いをしたPiotrに、何か言うべきこと、とるべき態度があるんじゃないの⁉︎とイライラが止まらない。



ただ、お陰様で主催者側の方々はPiotrの事情をよく理解してくださり、とても労って、温かい言葉をかけてくださったりしている。
それはこちらも本当に嬉しいし、ありがたい。

その主催者側の方々の心遣いを救いに、私も怒りややり場のないモヤモヤをやり過ごすしかないのだけど、でも腹立ちすぎて思わずここに思いの丈を書き殴った次第。


煌びやかなピアニストという職業の裏側を、ほんの少〜しだけお伝えしました。

(本当はもっともっと、書けるものから書けないものまで、色んなことがあるけれど…)


では!