若手芸人にお笑い界の大御所がドッキリをしかける! そんな地球平和や二酸化炭素の削減に何の貢献
も果たさないテレビ番組を観ながら、今日の映像を思い出してしまった私。生まれてすいません。

往年のドリフ・ネタの中でも鉄板芸とされる「ヒゲダンス」を踊るオードリー・春日と加藤茶・師匠。
グレープ・フルーツを投げる春日、フェンシングの剣でそれを受け止める加藤。お互いのタイミング
が上手くあわず剣にグレープ・フルーツが刺さらない。しかも生放送中という設定。

しまいに、キレた加藤茶師匠が春日に向かって「お前はそのいい加減なグレープ・フルーツの投げ方で
俺たちが長年大切にしてきた芸を台無しにしてくれたんだ!」と大勢のお客さんの目の前で説教をはじめる。

どうする春日?いつもの上から目線の芸風を貫くのか?それともキャラを捨てて謝るのか?...


長々と説明している自分が嫌になってしまうほど、どうでもいいドッキリ・ネタですが、
今日の映像の主役はロックンロール界の超大御所チャック・ベリーとあのキース・リチャーズです。
ちなみにこの映像、ドッキリなんかじゃありません。

チャック・ベリー師匠の生誕60年を祝って、英米のロック界の大物(キースにロン・ウッド、
エリック・クラプトンなど)がトリビュート・コンサートを開催することに。

コンサートの目玉はチャック師匠を交えての黄金のチャック・ベリー・メドレー(ちなみにすべて3コード
なので曲ごとの判別がつかない
のは言うまでもありません)をみんなで演奏!

で、そのリハーサルから当日の模様をカメラが追い、さらにチャック・ベリー師匠の人柄にも迫る
というドキュメンタリー映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」が今日のネタもとです。

もう20数年前になりますかね、吉祥寺の映画館で観た時、最も印象的だったのがこの場面。
ストーンズもカヴァーした「キャロル」のイントロのギター・ソロのチョーキングの音程の上げ下げ
についてチャック師匠がねっちこくキースに指導。はたから見るとどう弾いたっていいように聞こえる
んですけどね。しかし、そこは元祖であるチャック師匠、実に細かい。キースをいたぶります。

何度かトライしたのち、イントロは上手く切り抜けることはできた、ところが今度は曲の構成が...
中断する演奏、ドラムのスティーブ・ジョーダンをはじめ、ただならぬスタジオの空気に凍りつく
面々。しまいにはギターソロが上手く弾けず自分にキレるキース...

もう一回言いますが、これドッキリ映像じゃないんですよ。




ちなみにチャック師匠、まあなんて言うんでしょうか、メンタル的にいわゆるモノホンの方なので、
他人とコミュニケートするのがアレなわけです。映画の中でも数々の人間不信のエピソードが語られて
います。

しかも自分らが作り上げたロックン・ロールをカヴァーしたイギリスの白人の若造たちのほうが、
自分よりもはるかに富も名声を得ていることに長年苦々しく思ってきたのだけれど、いまや彼ら
のリスペクトがなければミュージック・シーンに残れないことも重々承知している...
そんな屈折した感情も重なり、なんとも観ていてつらくなる映画でした。

やっぱブルーズなんだよなあ、ブラック・ミュージックの根底にあるものって。うーむ。