今日は長いよ~。 


 Neil Young については幾らだって語れる。18歳から26歳までの僕の

音楽生活はこのおっさんを中心に回っていたくらいだから。ブートレッグの
CDや映像を買いあさり、Rolling Stone や Musician といった向こうの

雑誌など、彼の記事・インタビューが掲載されていているものはなんでも、

時には洋書店経由で海外から取り寄せ、読み漁っていたものです。はあ~

なんとも暗い青春です...


 実は僕が彼が夢中になっていた大部分の時期、すなわち80年代前半から

アルバムFreedom が発表される89年までというのは、彼のキャリアの中で

もどん底の頃でして、音楽的に、そして売り上げ的にも迷走していた時期

だったのです。なにしろ当時契約していたゲフィン・レーベルから「意図的に

商業的に成功の見込みがたたない作品を制作している」と裁判で訴えられ

たぐらいですからね。


 で、今日のこの曲。たしか87、8年だったかなあ。突如、ホーンセクションを

従え、R&B風というか3コードばっかのブルーズ・ロックをはじめちゃったの

ですね。Neil Young & The Blue Notes というアルバム自体はまあ、そんな

にひどいアルバムじゃないですが、こう来るかあ~というのが正直な感想。


 僕の中で二ール・ヤング像というのがありまして、この人、いろんな

ジャンルの音楽やるんですが、どれ一つとってもなんかそのジャンルの定型

を身につけられていない、というか何か欠けている、何か足りない、でも

エモーションだけは過剰なまでにこちらに伝わってくる。まあ、簡単に言うと

下手ウマ王なんですかね。3コードのブルーズを唄っても、ペンタトニックで

ギターソロ弾きまくっても、何かそうじゃねえだろう、っとツッコミを入れたく

なるんだけど、彼からたちのぼる過剰なまでのオーラというか、情念には

ひれ伏すしかないんですよ。どんなジャンルをやってもその定型の枠から

はみ出してしまうジミヘンと逆の意味で近い存在かなあ...誰にも共有され

ないネタになってきた。



 この曲のメッセージはビデオを見るとなんとく分かるんですが、80年代

後半、MTVなどあまりにも商業的になってしまった音楽業界に喝!という

ものなのです。特にCMに色んな大物ミュージシャン(たとえばビールの

宣伝に出演していたクラプトン。このビデオにも出てくるマイケル・ジャク

ソンやホイットニー・ヒューストンなどなど)が起用されていることを徹底的

にこきおろした歌詞になっています。


「ペプシのためにも、コカコーラのためにも唄わないぜ」

「俺は誰かさんのためになんか唄わないぜ。そんなのバカみたいだろ?」


「ミラービールのためにも、バドワイザーのためにも唄わないぜ」

「政治家のためになんか唄ってやるもんか!」


「この曲をおまえに捧げるぜ!(This notes for you!)


 偽マイケルが炎上しています。

http://jp.youtube.com/watch?v=pr2zyHNLb8M



 当時、このビデオ・クリップ、内容が過激すぎる(名誉毀損すれすれ)という

ことでMTVでは放送禁止にされていたのですね。ところがそれが逆にこの
曲の人気を高めることになり、なんとその年のMTVビデオ大賞にノミネート
され、結局大賞を獲得したのです!


 で、その授賞式、二ールは会場には現れず、どっかの田舎から中継で
受賞コメントを述べるシーンが会場に映し出されたのですが...


 機材トラブルで音声が途絶えてしまっている...ロスの会場の巨大

スクリーンには不適な笑みを浮かべながらなんかパクパクしている二ール

大先生の人相悪そうなお顔だけが映し出され、リアクションに困ったMC
、会場に居合わせた人々がざわついている...
なんともシュールな場面

でしたよ。


"I've got a real thing.  I've got a real thing, baby."


「俺は本物を持っているんだぜ。俺はホンモノだ。」


 二ールの歌詞にはよくこの real とか real thing という言葉が出てきます。

本音と建前というか、音楽業界だって所詮売れてなんぼなんだから、ここは

まあひとつ大人になって...とかそういうことを良しとしない、いい意味での

反逆児、というかいつまでもケツが青い、というかおこちゃまなアティトュード

90年代に入って Godfather of Grunge  と若者たちにリスペクトされまくっ

ゆえんなんでしょうね。


 ちなみにこの曲、二ール・ヤングの中でもかなりキワモノなので注意。
もっと美メロな泣ける曲を先に紹介すべきだったですね。

 今日んとこは、このぐらいにしといたるわ!