冷たいものが歯にしみる「知覚過敏」。歯の象牙質が露出し刺激が伝わり、不快な症状が起こる。原因の一つに、食品や飲料の酸により歯のエナメル質が溶ける「酸蝕歯(さんしょくし)」がある。酸蝕歯は食生活を工夫することで予防できる。明日6月4日から歯の衛生週間。できることから、始めてみませんか?(津川綾子)
「ビリッと歯がしみると、背筋までヒヤッとする」。東京都練馬区の女性会社員(29)は数年前から、好物のアイスや冷えたフルーツを慎重にほお張るようになった。常に痛いわけではなく治療はしていないが、「思い切り食べられないのがつらい」と話す。
◆健康飲料のはずが…
「実は誰でも知覚過敏になる可能性がある」と、塚原デンタルクリニック(千代田区)の塚原宏泰院長は明かす。知覚過敏は歯の象牙質の露出によって起こるが、その原因はさまざまだ。まずは虫歯や歯周病などの病気がある。このほか、加齢で歯茎が下がったり、ストレスから歯をくいしばり、その力で歯の覆いとなっていたエナメル質が欠けたりして象牙質が露出し、そこから刺激が伝わってしみてしまう。
中でも知覚過敏の原因として盲点なのが「酸蝕歯」だ。口の中は通常、中性(pH7)。だが、「清涼飲料水や健康ドリンクはpH3前後で酸性が強い。歯のエナメル質が溶けるのはpH5・4以下とされ、口の中が酸性のままだとエナメル質が溶け、象牙質の露出を招く」と塚原院長。特に最近は健康ブームで酢を常飲する人が増え、エナメル質を溶かし知覚過敏を訴える人もいるという。
冒頭の女性のように酸っぱい柑橘(かんきつ)系の果物を好む場合も「知覚過敏に注意が必要。飲食の後は、水で口をすすぐようにしてほしい」という。
◆具材多め、大切りに
知覚過敏の原因ともなる「酸蝕歯」の予防は、食事の工夫でも取り組むことができる。鍵となるのが、唾液(だえき)の分泌だ。唾液は安静時はほぼ中性(pH7前後)で、食事により酸性に傾いた口の中を中性に戻す働きがある。
料理研究家で「高浜デンタルクリニック」(千葉市美浜区)の田沼敦子院長は「噛(か)むほど唾液の分泌が促される」として、噛む回数をおのずと増やすメニューを提案している。
料理のポイントは、(1)具材を大ぶりに切る(2)食材を多めに組み合わせる(3)薄味にする(4)水分を減らす-など。「レトルトカレーでも、そのまま食べずにキノコや根菜、シーフード…と具を増やすほど、噛む回数が増える」。水分の多いものは噛まずに飲み込めるが、大きな具や水分が少なく繊維が多い乾物などは、自然とよく噛まなければならなくなる。
これらを踏まえ、田沼院長から初夏に合うメニューを提案してもらった。
乾物の車麩(くるまぶ)やゴーヤなど多様な食材を一度に口に含めば、噛むほどに味わいが変化し、噛む回数も増える。このほか、水菜やキュウリの細切りなどと、青ジソ、カニかまぼこを生湯葉(なまゆば)で巻く一品もおすすめだ。生野菜は噛む回数を増やすが、生湯葉巻きにすれば、よりおいしく食べることができるという。
■象牙質が露出し神経を刺激 虫歯や歯周病になりやすく
歯がしみるような不快感は、なぜ起こるのか。
歯は層をなし、外側のエナメル質が殻のように象牙質を守り、刺激が歯の内側に伝わらないようになっている。しかし、歯の根元のエナメル質は薄く、はがれたり溶けたりするほか、歯茎が下がることもある。こうして象牙質が露出し、象牙細管を通じて歯髄神経に刺激が伝わる。知覚過敏が歯の根元で起こりやすいのは、こうした理由からだ。
知覚過敏になると歯磨きがしにくくなり、虫歯や歯周病になりやすい。最近は歯がしみるのを防ぐ硝酸カリウム配合の薬用はみがきもあり、利用するのも一手だ。
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