戦時のような今こそ、平和な自転車に乗ろう
出典:DVICE(Adario Strangeさんのブログ)



 こんな時こそ、自転車が力になる。大地震発生後3日目の今朝、首都圏では計画停電が始まった。「首都圏の電車の運行にも支障が出るでしょう」というテレビニュースを横目に、私は7時に自宅最寄り駅(新松戸)へ。


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 うかつにもネットのニュースで運行中と勘違いした。駅に着くとJR常磐緩行線(綾瀬~松戸)は運行中止。今日は仕事場の開業をしたいし(ギャラリー・展示会を開催中)、何とか行きたい。そこで松戸駅までテクテクと3駅分歩いた。



 道沿いには梅も咲きほこり、春はそこまで来ている。実に平和だ。実際にはみんな、心の底に不安を抱いているというのに。でも花の横を、すこぶる冷静に行列して歩いている。クルマもクラクション1つ鳴らさない。日本人の胆力はすごいものだ。



●災害時の自転車通勤



 だが、ガソリン供給もいずれストップするかもしれない。それにどこもかしこも渋滞ばかりだ。電車も今日は動いているが、明日は分からない。歩くにも限度がある。こういう時こそ自転車である。



 私は時々チャリ通の自転車派。だが、仕事場で夜を明かした先週土曜日は、花粉症もひどくて25キロの運転に自信が持てないので、自転車は置き去りにした。何しろエレベータが止まって、6階の自転車を1階まで降ろすのも億劫(おっくう)だったし。何とか間引きの電車で帰宅したが、通常1時間ちょいが4時間半かかった。やっぱり自転車しかないな。



 被災地の仙台からのブログでAdario Strangeさん、コンビニから食べ物が無くなったことと合わせて、「移動手段は自転車だ」と書く。次のような写真を掲載してくれた。



 iPad、iPhoneに乾電池、良い感じだが足したいのはなるべく明るいライト(前照灯)、できれば後方ランプ、手袋、取り替え用チューブ、パンク修理セット、そしてヘルメット。普段走り慣れていない人は地図も携行すべき。iPhoneで行く先をナビすることもできなくはないが、バッテリーは大切にしたい。「自転車大好きマップ(全国版)」も大変役に立つサイトだ。



 バッグは両肩に掛けるバックパックがいいだろう。会社用のカバンは家に置こう。どうしてもスーツという事態でもないので、動きやすい服装とカバンと靴で乗ろう。こんな時でも「絶対スーツ着用」なんて会社はないはず(と思いたい)。



 もちろん安全運転。原則として車道を走ろう(危ない道以外、自転車の歩道走行はNG)。どんな道でも左通行は絶対。タマに長い距離を走ると、筋肉疲労で痙攣(けいれん)を起こしやすい。私もよくある。そんな時は急がば回れ。屈伸運動で休んでいる時でも地球は回っているとはいえ、ゆっくり急ごうぜ。



●今できること、中長期で取り組んでほしいこと



 いくつか自治体や民間事業者にお願いもある。今できることと、中長期で取り組むべきこと。



今できること:自転車の無償提供



 自治体は、放置自転車の整備済み車両などを移動手段として、移動手段に困っている人に提供してほしい。いや自転車業界(メーカーや販売店)でも「寄付」ができるものなら、東北地方の避難者たちに、自転車を無償提供してほしい。



 2004年のインド洋津波の時、自転車メーカーの米SRAM Corporationと米Trek Bicyclesは合わせて2万4400台の自転車をスリランカ市民に提供した。その自転車は数年にわたり大切に使われ、住民に喜ばれたという。2社の企業イメージが上がったのは言うまでもない。



今できること:自転車走行支援施設



 街には電動自転車も数多く走る。充電サービスステーションだ。どんな業種であっても、街道沿いの店舗は「電動自転車の充電」と張り出してほしい。特に自動車ディーラーや中古車販売業、もちろん自転車販売業なら、スペースもあるし設備もある。



 銀行やファミリーレストラン、カフェは休憩所兼「携帯装置の充電ステーション」としてスペースを提供してほしい。情報伝達の拠点としても活用できる。



中長期的に取り組んでほしいこと



 首都圏の主要国道には自転車専用道を整備してほしい。災害時に役に立つばかりか、普段でもチャリ通勤を促進すれば、国民の健康に役に立つ。もちろんクルマとの接触の危険をいつも感じて走るぼくらには心強い。



 あわせて自転車用の道路案内表示や地図も欲しい。歩行者やクルマには標識や地図があるが、サイクリストへの情報はとても少ない。



●自転車は平和だ



 今、自転車がバカ売れだ。同僚Kさんは、今朝最寄り駅で人があふれていてJRの通勤をあきらめ、近くの自転車店でルイガノを衝動買いした。アルミフレーム、24段のマウンテンバイク、しめて5万円だったというからお得だ。地震発生当日のニュースでは「30万円でも買います!」という話もあった。



 緊急時だけでなく、平和時にも自転車愛好家になろう。自転車はエンジン音もなく、石油も食わず、排気ガスも出さない。戦時のような今こそ、平和な自転車に平静な気持ちでまたがりたい。【郷好文】





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