ミュンヘンの新制作「ローエングリン」の座席を入手した。既に立ち見をオファーされていたのだが、椅子席が欲しかったからだ。結果としてバルコンに座る。しかし視界も制限されるので僅か18ユーロしか払わない。歌手はこの役として当代随一で世界的に人気のあるフォークトである。日本でも何度か歌って大成功しているようだ。だからそれ目当てに観に来る人もいる、しかし、指揮者がロートというフランス人で、誰も彼のヴァ―クナーなどには期待をしていない。支配人がベルギー人でなければこの選択は無かったろうか。誰が演出するのかも知らない。序に観に行くだけだ。だから20ユーロ以上払うつもりなどはなかった。

歌手のフォークトも何回も聴いていて分かっている。その他の配役でも独語歌唱の模範的なマルリス・ペーターセンが下りて、然したる興味も失せた。声の調子もあまりよくないのだろうが、そこ迄の歌手に合わせた指揮が出来ないと見越した決断なのか、演出が受け入れられなかったのかは全く分からない。歌手陣はそれでももちろん悪くはないのだが、なによりも期待しているのはドラマテュルギーのクラ―スティングで何度も顔を合わせている指揮者ペトレンコのブレーンである。

このことにも関していることが大きな話題になっている。事の始まりは、日本の作曲家細川のオペラ「松風」が来年五月に他の二作品と共に新制作される予定だったが延期になったことである。その突然の発表が釈然としなかった。理由は人件費の拡大など諸経費の高騰によってが主たる原因とされて、そこから劇場内部での問題が語られるようになった。その筆頭に合唱指揮の契約延長を遮ったとあり、更に劇場長とも齟齬が起こっているとされる。それを伝えたジャーナリストに、劇場から抗議文が送られていた。

抗議を受けたジャーナリストが書いている。今シーズンに入って、高い席が売れなくなって、大人気のカウフマンのオペラでさえ買い手市場になっているというのだ。恐らくそれは事実で、上で購入した様に普通では入手の難しい新制作の格安席を入手したことにも表れている。そして新たな新フェスティヴァル「ヤーマイ」のような新しい作品を諦めて猫も杓子もの「指環」などをやっても意味がないということで、今年成功の「ブルートハウス」も音楽監督ユロウスキーの功績としていいだろうと書いている。

これこそはまさしく指揮者エンゲルの大功績もそこにしっかりと組み込んで欲しいと同意したい。要するに市場が小さいものでも芸術的な価値を落とさない限り必ず道は拓ける。ユロウスキー指揮の新制作もそこそこの成功しているのだが、その他指揮者の「ピーターグライムズ」、「トロイ人」や「賢い女狐」など再演回数が全然足りていない制作もあって持続性に問題があるとされている。個人的には来年二月の「ジュディッタ」再演も大成功して欲しい。

事の始まりの「松風」が2024年に延期になることで、既に延期になったハース作三部作の「コーマ」と共に上演される予定である。そもその「コーマ」が上演不可能となったのはロシアからのムジカエテルナと指揮者クレンツィスに頼ったからであって、その演出の暗闇で暗譜で演奏するのは他の楽団では不可能だったという話しであった。その通り延長となるならば三つの新制作の費用が一先ず順送りとなる。

モルティエ博士一派としては、こういうことになれば何が何でもドルニー支持に動く。なるほどこまごまとしたことには疑問もあるが、芸術的な方向では正しく、様々な予算に関する努力も伺える。やはり書かれるようにチームワークだけでなくてコミュニケーション能力の問題もあるだろう。



参照:
Staatsoper muss Premiere verschieben: Haussegen in schiefer Lage, Robert Braunmüller, Abentzeitung vom 15.11.2022
オペラ賞ノミネート推薦 2022-08-04 | 文化一般
音楽劇場指揮者の実力 2022-08-01 | 文化一般