先日試飲して購入したミュラーカトワール醸造所のオルツリースリング「ハールト」2013年を、もう一つの「ギメルディンゲン」に、続けて開けた。試飲会では、もう一つのそれのように直接的な柑橘系の酸でもなくて、まったりしたなれた酸であったのとミネラルの強さから、二番手の評価であった。しかし、オーナーの目下の愛飲リースリングであり、購入して比較してみなければいられなかった。それほどこの二種のオルツリースリングの優劣を決めるのは難しかった。だからこの二つの前で飲み比べし続けた。そうした人も少なくなかった。

食事は、豚のタタール翌日は海老中華であった。前者との絶妙な相性は間違いなかったが、生玉ねぎと半熟卵が味わいの精査を邪魔した。二日目は、酸が前面に出てきて、2013年の強い酢酸的な酸を味わった。しかし味筋は、かなり重くがっしりしているのだが、培養酵母のおかげか赤いバラの香味などが長い減衰を伴って塩辛いミネラルで終わるのは見事であった。ビュルクリン・ヴォルフ醸造所のオルツリースリングではなかなか味わえないミネラルの余韻であり、むしろレープホルツ醸造所のそれを意識させた。

ミネラルの味筋としては、ゲオルク・モスバッハー醸造所のシュティフトなどと共通しているが、その複雑さと分厚さで圧倒している。こうした比較から、この価格での提供はとても高いCPを示している。なるほど、やや技巧を感じさせる仕事振りではあるが、市場での評価として決して引けを取らないに違いない。

当日は、修理されたミュラー・カトワール家の二百年前のピアノがお披露目となった。旅行に携行できるようなティッシュクラヴィーアより大きいが、横に引いた簡易なターフェルクラヴィーアと呼ばれるものである。これまた微妙な音色であり、チェムバロ系のスピード感は無いが、ぼこぼこしたハムマークラヴィーのあのような音色ではない。モーツァルトのヴァイオリンのためのソナタではガット弦でなければ音が大きすぎて、クラヴィーアが聞き取れないほどの音量である。そう思って、モーツァルトのハムマークラヴィーアを生家で録音したまじめなシフと塩川のCDを聞いてみる。やはりバランスは同じような感じだ。こうなると先日入手した名人ツェートマイールの録音が離せない。

因みにオーナーに尋ねてみると家督相続とは言えないが少なくとも親父さんからの相続らしい。作曲を残している家系であり、当然楽器などは身近にあった筈だ。なにはともあれ、再びハールトからこうした文化的なリースリングが世に問われる意味は少なくない。



参照:
なんと内容の濃い試飲会 2014-10-29 | 試飲百景
ライフスタイルにそぐわない 2014-10-25 | ワイン