ユダヤ人のナチの追跡組織シモン・ヴィーゼンタール・センターのディレクターのインタヴューが文化欄第一面に載っている。1948年ブルックリン生まれで、歴史を学びホロコーストで博士号を習得したツロッフ氏は、2001年から最後の生き残りを法廷の場へと引き出すオペレーション・ラスト・チャンスに従事する。

実際の活動は、情報収集や分析のみならず、各国でのロビー活動が大きくものを言うらしい。いくつもの興味深い話が聞けるが、お尋ね者ナンバーワンのアイヒマンのアシスタント95歳になるアロイス・ブルナーに続く、医師アリベルト・ハイムの件が大変興味深い。

現在93歳になると言う強制収容所の医師は、スペインかチリに潜伏中と予想されているが、身長190CMの47サイズの靴を履いて、右頬に傷があるいることから、他の一般的なナチ戦犯よりも見つかり易いとされる。

顕著な罪状は、生体実験による生臓器の取り出しと、ユダヤ人の皮膚を使ったランプの製作依頼のようで、米軍に逮捕されながらも、その後バーデンバーデンで開業していたことは特記される。

どうも、戦争犯罪人として裁かれる以前に、米情報局との裏取引があったとされる。そのような例は、方々であるのだろうが、このように明白に不思議な例は、氷山の一角としても、あまり多くないのだろう。

ニュルンベルク裁判や東京裁判の正統性云々を言うならば、こうした裏取引をも含めて語るべきで、戦争犯罪がそれに終わらないことは、2001年1月から3人のドイツ人を含む48人が全世界で訴追されていることを肝に銘ずるべきであろう。

あまりにも執拗なユダヤ人の活動に対して、ドイツの当局は百年を待つかのような様子であると批判されている。それでもハイム逮捕に向けて、ドイツ当局はチームを組んで動いていると言う。その一方、イスラエルのモサドは、既にナチ問題からは手を引いていると言う。

更に興味深いのは、ミュンヘン近郊に住むヒムラーの娘グデゥルン・ブルヴィッツが、ナチの逃亡者やその組織に資金援助をしている事実を挙げていることで、その互助会的組織の存在は生々しい。

肉親やその家族関係などを中心にして、半世紀以前の人道に反する戦争犯罪者が、なんらかの繋がりをもつ「オデッサ」のような積極的な活動支援ではない静かな組織が存在しているのである。

そのような組織は、ある種の軍人会や遺族会のような形態を隠れ蓑とすることも出来るのであろうか?

もう一つ、この記事で取り上げられている面白い視点は、アドルノが言うような遠く及び知れない東欧で起こったことは、決してオランダの警察が護送の出発点にいて発送のみにて 関 与 を終えたことを意味するだけでなく、リトアニアにおいては其処で98%の地元のユダヤ人が抹殺されたことに見るように、エストニアやクロアチアやウクライナにおいても、ナチの 積 極 的 な協力者が多く居り、態々自国ユダヤ人をアウシュヴィッツに送り込む必要がなかったことである。

これは、現在も東欧を考える場合に見逃せない要素となるのである。



参照:Die Jagd nach den letzten Kriegsverbrechern, FAZ vom 10.7.07