新たに2005年産のリースリングを試した。先日の2004年産の後釜である。どうも新年度産の販売時点で前年度の商品は棚卸で専買するお得意さんがいるらしい。先日、旧年度産の試飲記を纏めておいて良かった。比較すると酸味が強く出ているようだが、後味の薬臭さが無い。より単純な醸造をしていると想像する。何故ならば一般的に2004年の方が酸の出方が苦味が出たりして難しかったからである。

リッターワインであるので、2005年産も期待された構築感などは無いが、風味がある。リッターワインとしては素晴らしいのではなかろうか。此れだけを飲むとすると、この酸味が幾分きついかもしれないが、食事には丁度良い。甘味も少ないだけカロリーも少ないだろう。しかし、アルコールは12%あるので強さも充分である。先日試したラインガウの物と比べると、柔らかみがあるが薄っぺらい感じがして、土壌の違いが如実にでている。一リッター5,60ユーロは、他の対抗馬の甘みのあるリッターキャビネット6,80ユーロと比べても、CPはかなり高い。

リッターワインでは、惚れ込むほどのワインは決して見付からない。つまり美味くても欠点があってそこに目を瞑るか、不味くは無いが甲も不可も無いと言うワインである。経済性にも増して、日常のワイン消費(日々の運動量が落ちてまた強いアルコールを必要としなくなったので、ビールや蒸留酒よりワインの水和量が快くなった)では、高級ワインを味わう精神的時間的余裕が無くて惜しいので、リッターワインを本年度から本格的に吟味している。こうしたワインを基準にする事で、余計に素晴らしいワインを時々楽しめる。特別な機会にはそれよりも良い特別なワインを開けるのが至福の喜びとなる。

普段から惚れ込んだワインを飲みつけていると、「いづれそれにも飽きて来る」と、昨年2003年産の恋人ワインを見つけたが早い時期に倦怠を一旦経験した。その恋人と一時ご無沙汰して、改めて此れを試すと今でも出会った時の喜びに再会出来る。そして再会した時に、一目惚れとは違う「熟れた良さ」をさえ発見出来る。もちろんワインの経年は避けがたい事実で「良くも悪くも、あの日と同じ時は二度と戻って来ない」と認識を強くする。

何故またこのような小学生の作文のようなものを書くかと言えば、一体、高級とか贅沢とか言う基準が何処にあるのか?その価値はどの様に市場経済で認定されているのか?言い変えると、対価を支払えばどれ程の贅沢が可能なのか?と言う素朴な疑問をワインを通して感じたからである。

此処で記しているリッターワインの半額のドイツワインも存在する。それらとの品質の違いも改めて点検してみないといけないが、判定の基準は変わり無くて、価格は品質と比例しているべきであり、通常はそのように厳密に機能している。

2005年産の特徴を探りながら、またその水準を探りながら、此れから瓶詰めされて発売される高級なワインを判定する事が出来るならば、お気に入りのワインに出会う可能性が一段と高くなる。反対に、こうした判定の基準が定まってくれば、「お金を積むようなワインは存在しない」と言う摂理が分かる。言い方を変えると、芸術品であれ嗜好品であれ工業生産品であれ、審美眼があれば価格の上限は自ずと定まり、自由市場価格には無限と言うような数学的概念は存在しない。それを逸脱する価格設定は、需要と供給から導かれる骨董希少価格や投機価格を示すのだろうか?

ワインにおいては、ネゴシアンと言うような中間業者が介在しない限り、価格は手間に相当する人件費で一次的に定まり、天候などに左右される供給量は材料費・設備投資や維持経費等と並んで二次的な要素でしかない。もちろん農作物である果物の葡萄との間に市場と言う意味で大きな相違がある。これを需要と供給関係の市場秩序に原理原則を持って組み入れたのが、ユダヤ人達が構築した歴史的なネゴシアン組織ではないのだろうか。そして実際の個人需要は、質と価格の設定に敏感に影響される。実際、数年前までは直接買い付けをする個人消費者は、当たり年の高級ワインを選んで買い込んで置くと、外れ年には試飲しても購買欲が刺激されなかった。何故このような現象が起きるかと言うと、ワインはアルコール需要としては大変割高で、特別な愛好家以外には「興味の湧かない飲料」だからである。また、美味いワインは探し求めなければ得られない事実とその味覚自体が個人差の大きい嗜好に依存してだけで無く、個体差が大きい事など、大量消費需要を妨げる要素が元々存在するからであろう。(試飲百景)



参照:
リースリングに現を抜かす [ ワイン ] / 2006-01-23
採れ取れリースリング [ ワイン ] / 2005-12-20
レーマーグラスのワイン[ ワイン ] / 2006-01-07
地所の名前で真剣勝負 [ ワイン ] / 2006-02-06
化け物葡萄の工業発酵 [ ワイン ] / 2005-12-23
本当に一番大切なもの? [ 文学・思想 ] / 2006-02-04
多声音楽の金子織り [ 音 ] / 2005-10-20