生きているとどうしても落ち込むときがある(今がそうだというわけではない)。

そんな時、僕が思い浮かべるのは、なんといってもこの一節である。


「もう一度だけSuperstition廻れ

 悲しいことも愛に変わるように」

サザンオールスターズ「YOU」より


「Superstition(迷信)」は宗教学の用語だけど、ここで歌われているのはスティーヴィー・ワンダーによる1972年の楽曲のこと(たぶん)。「廻る」のはもちろんアナログレコード(まあCDでもいいんだけど)。

桑田佳祐のこの歌詞は、願いの表明、さらにはある種の祈り文句となっている。(面白いことに、スティーヴィー・ワンダーは「理解できないことを信じると 後で苦しむことになるよ 迷信を信じるなんてやめときな[Superstition ain't the way]」と歌っている。)

願いや祈りを口にすることって、実は言葉の力だけでなく、自分が有している「ある種の力」を信じていることのあらわれなんだと思う。
演奏前の「toi toi toi(うまくいきますように)」もそう。

「YOU」のこの一節によって、すべてが良い方向に廻り始める。
そう信じることで僕はこれまで生きてきた。そんな気がしている。


追記

昨日、都美の「デ・キリコ展」(イタリア研究者としては「デ・キーリコ」と書きたいところ)を観てきました。

とても惹きつけられました。
彼の絵画のなかの広場は音がしないんですよね。「イタリア」広場(Piazza d'Italia)なのに。
それから、彼におけるギリシアの要素はニーチェからも来ているのですね。ギリシア生まれだからだと思っていました。

「発見」が多い、優れた企画展でした。東京開催は残り二日です。