中森明菜のベスト盤が“想定外”の大ヒット中 本格的な復活へとつながるか? | TAKA OHANA

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今週は約32万5000枚という圧倒的な売り上げを記録してNMB48の『世界の中心は大阪や~なんば自治区~』が1位。昨年のアルバム『てっぺんとったんで!』では、初週に本作とほぼ同じ32万8000枚を売り上げ、年間アルバムチャートでも5位(ベスト盤を除くと年間2位)に食い込むという大健闘を見せたNMB48。今回も年間トップ10入りは固いところ。

アルバム冒頭を飾る本作のリード曲的存在の「イビサガール」(セカンド・サマー・オブ・ラブ世代の一人として、その歌詞/サウンドにおけるイビサ感のなさには度肝を抜かれました)は、もともと6月にNMB48にとって10枚目のシングルとしてリリースが予定されていて、テレビの音楽番組などでも精力的なプロモーションが組まれていたにもかかわらず、急遽配信限定でのリリースとなってしまった楽曲。その理由は公式にはアナウンスはされてないものの、直前の5月25日に起こったAKB48握手会傷害事件を受けて、48グループの全国握手会の開催が一時的に凍結されたことによる影響と見られています。そして、実は今回のアルバムリリースも、その「イビサガール」のCD発売中止を受けて、急遽前倒しになったものだとも。そんなバタバタの中で、今回NMB48はキッチリと数字を残したというわけです。

さて、今週注目したいのは、先週に続いて3位にランクインした8月6日リリースの中森明菜『オールタイム・ベスト -オリジナル-』について。同日リリースの『オールタイム・ベスト 歌姫(カヴァー)』も先週7位から今週10位とトップ10をキープ。新曲(2年前のレコーディングと言われています)を1曲含むものの、相変わらず活動休止中ということで本人の露出がまったくない中、2週連続2作同時トップ10入りというのは大快挙。店頭では品切れが続出、一時期はAmazonやセブンネットなど通販サイトでも品切れになったことからもわかるように、明らかに関係各所の想定を超える反響があったということでしょう。増産体制が整ったのか、発売から2週過ぎた今週(8月18日)になってから新聞に全面広告を打つなど、レコード会社もここにきてようやく本腰を入れてきた様子が伺えます。

言うまでもなく、中森明菜は松田聖子と並ぶ80年代アイドル2大巨頭ですが、これまでも今回のように予測のできない売れ方をしてきたシンガーでした。通常、アイドルというのは「ブレイク以前」、「ブレイク」、「全盛期」、「低迷期」(もしくは、ごく限られたアイドルのみ「安定期」)という段階を踏んでいくものですが、中森明菜はシングルチャートで30位止まりだったデビュー曲「スローモーション」に続くセカンドシングル「少女A」でいきなり「ブレイク」。そして、サードシングル「セカンド・ラブ」でシングルチャート初の1位を記録して、あっという間に「全盛期」に突入。その期間わずか半年と、同時代のアイドルと比べて、そのスピード感は別次元のものでした。また、本作『オールタイム・ベスト -オリジナル-』にも冒頭から順番に収録されているその3曲を聴けばよくわかるように、曲ごとのイメージの変化と進化のスピード感にも、当時日本中が驚かされました。

その後も、松田聖子における松本隆・呉田軽穂のような固定化された鉄板ソングライターチームと敢えて組むことはなく、曲ごとに様々なチャレンジを繰り返してきた中森明菜。1990年まで、途中「ミ・アモーレ」「DESIRE~情熱~」「Dear Friend」などのビッグヒットを挟みながら、約9年間という長期間にわたってトップ女性シンガーとして君臨し続けます。そして、セールスダウンが顕著になってきた90年代半ば(その時期の作品も批評面では高く評価されていました)、苦肉の策のようにリリースされたカヴァーアルバム『歌姫』が久々の大ヒット。この作品は、一般的にカヴァーアルバムブームの先駆けとされている井上陽水『United Cover』よりも7年も早く、今やカヴァーアルバムの代名詞的存在となった徳永英明『VOCALIST』第一作よりも11年も早い、まさにカヴァーアルバムのパイオニア的作品でした。

1994年にカヴァーアルバムで見事に復活し、そのちょうど20年後の2014年にベストアルバムで再び見事に復活した中森明菜。きっと今回の大ヒットは、彼女の本格的な復活をいろんな意味で後押ししてくれたはず。もちろん、身体のコンディションにかかわることなので安易には言えませんが、多くの人がこの国の「歌姫」としてワン・アンド・オンリーの存在である中森明菜が帰ってくるのを待っています。最後に一つだけ。次の作品のジャケットのアートワークは、もうちょっと素敵なものにしてくださいね。