かなこ、という女の子が居た。
大学のときのはじめの頃、健康診断があった。まだ同じ学科の子たちとも仲良くなれていない状況だった。私が専攻していたのは「映像・舞台芸術学科、舞台芸術コース」という名前のものだった。とにかくなにもかもははじめてで日々不安で仕方がなかった中、健康診断という集団の行列に並ばされて、私は消えたいくらい緊張していた。
「ま、み、む、め、も。」
かなこは「み」私は「ま」から始まる名字を持つ。かなこはちなみに「映像・舞台芸術学科、映像コース」の生徒だった。私は男に関してはあまり瞬間的に運命を感じてもあまり信じたくないが、女に関してはわりとすぐに信じてしまう。かなこは私の後ろか前か、もしくは横にいた。なにを最初に喋ったのかは覚えていない。しかし第一印象は覚えている。「なんて男らしいかっこいい女の子なんだ」と思った。一瞬頬を赤らめたていたかもしれない。
健康診断の行列はなかなか前に進まなかった。そこで私たちは息統合して、延々と続くその行列を待ちながらちっとも退屈になどならなかったのを覚えている。
かなこは三重から出て来た女だった。そして少し、いやかなり口が悪くて、はじめはその口調に少し傷ついていた。「お前、一回死ね」とかなんだかそういうようなことを平気で言えちゃうのだった。傷つく反面、かっこいいと思った。私も友達に「お前」とか言って接してみたいってね。
だんだんかなこの口の悪さに慣れてきた。だってそれはかなこの愛情表現であり、かなこは口は悪くて恐そうに見せておいて実はとっても乙女で、照れ屋さんな面があるのを私はもう、気付いていたから。だからかなこが柄悪く私になにかを言うたび「愛されてるなあ」と本気で思えた。
私たちは全く違うもの同士でお互い違う彼氏もいたのに、どこかしら似ている部分もあった。カラオケはお互い大好きだった。かなことはじめてカラオケに行った時私はまた緊張のあまり、選曲ミスをした。なぜかX-JAPANの「Forever Love」を大熱唱した。いつもの癖だ。はじめに自分のきちがい的な面を見せたらあとは、もう恐いものなしっていうやつ。私はそういう手段でよく人と仲良くなって行った。あとから、「ももことはじめてカラオケいったときのX-JAPANの選曲にはびっくりしたわ」って言われたことも覚えてる。その話が出るたび、お互い爆笑しちゃうのだ。
私は19の彼氏とも半年くらいで別れ違う恋をしてはすぐ捨てられ(一発やられ)、それでもめげずに恋をし続ける女だった。まあ、いまでもそうかもしれない。その回数が減っただけで。
「あたし、今恋してんねん」と得意げにかなこに伝える。大抵の女の子の場合、なんというかそういう話はうざがられるのでタブーだ。それか遠慮がちに「うん、ちょっと好きな人はいるかも」などという。かなこにはなんでも話せた。そしてかなこは恋してる私にあきれながらも「まーたー」と言って話をつれづれ聞いてくれる。そして私はたっぷりのろけ話をしたその数日後あっさり恋に冷めていたり、あるいはまた捨てられていたりする。
はじめはかなこも同情して、私と「一発だけヤッた」男の家までおしかけるのに途中まで一緒にきてくれたこともあった。しかしそのあとも私は相変わらず恋をしていた。そしてまた私はかなこに「あたし、恋してんねん。」と言う。それのくり返しが何度あったことか。普通の女の友達にはとてもじゃないがこんなこと言えない。かなこにだからこそ言えたんだ。
ある男は私を無理矢理押し倒してやろうとしてきたが、必死で抵抗した。はじめて本当に力では男に勝てないこと知った。「ちゃんと空手習ってたのに」「防御の仕方も覚えたのに。」とても悔しかった。
次の日私は部屋のカーテンを空けることもできず、布団の中にうずくまっていた。震えながらかなこに電話して事情を話した。かなこは言った。「よし、殴りにいこう!」すぐにマンションの部屋まできてくれた。もうひとりの友達もきてくれた。こういうときは多ければ多い方がいいという、ヤンキーカルチャーか。かなこは本当はすっごくヤンキーなのだ。
泣いている私を二人は私の肩を抱きなだめてくれた。そして、「殴り込み」にその男のいる部屋へ3人で押し掛けた。そんなこともあった。そしてそれはすっきり私のなかで解決した。
大学生の頃は本当に不安定きわまりなかった。病院では「両極性感情障害」と名付けられた。アップダウンがはげしすぎるということだ。そしてたまに発狂して過呼吸になる。
発狂とは私は今だから思えるがあれは完全なる憑異だ。その瞬間なにかがくる。「ああやつがくる」というのがわかる。しかしよくかなこは本当にヒーローみたいに飛んできてくれた。そして私の呼吸がもとに戻るのをゆっくりと手伝ってくれた。
あるときはリストカット、あるときはおさけとOD。
ODをしても絶対病院へは行きたくなたった。親にバレるからだ。しかしかなこは救急車を呼んだ。「ももこはいやかもしれんけどほんまに苦しそうやったから救急車を呼んだよ、ごめんね。」と言った。その優しさに意識が半分とびながらわたしはODをしたことを後悔した。そのときはじめて胃洗浄とやらをされた。びっくりした。あれほど苦しいものはないんじゃないかと思った。それからODをやめれたわけではないがそれから少しずつ減っていった。
なにがあってもかなこは飛んできてくれた。
京都の部屋でハムスターを買っていたのだが、一日だけ旅行に出かけたときにそのハムスターが一日で、たった一日で死んでしまったことがあった。とても残酷な死に方をしたんだ。読みたくない人は読まないでくれ。網からでようと、そこに首をつっこんで死んでいた。固まっていた。
声がでなかった。「ただいまー」と部屋にもどりまずそのこに挨拶をしていたのだが一瞬なにが起こったかわからなかった。一人なのに2Kの部屋に住んでいた私は別の部屋に移動して、「インディが、インディが、インディが・・・!!!」とかなこに泣き狂いながら電話した。かなこはかなこの彼氏と二人ですぐに飛んできた。かなこの彼氏がペンチを持ってきれくれていた。泣き狂う私にかなこは「ももこはあっちいっとき!!」と言った。
かなこの彼氏がさくをペンチで切って、インディをきれいにとりだしてくれた。ティッシュで優しくつつみ、近くの公園に一緒に埋めに行った。かなこの彼氏にもとことん、お世話になっていた。
かなこは本当に私にとって完璧だった。料理もうまくてよくかなこの部屋にも行って食べたことがある。そんな私も負けずとかなこを部屋に招待してつくってはみたがいつもなにかしらつっこまれていた。
かなこは映像科、私は舞台科で、うまい具合にバランスがとれていたように思う。全く違う目線で物事をみているから。
だから私のはじめての企画のときもかなこはやはり助けてくれた。またまた無茶な企画を用意して、完全に未完成なパフォーマンスを学園祭でやったとき、そのときも。私が表現したいこと、やりたいことを、お金の問題、その他、話しているつもりが言葉がへたくそすぎで全然伝わらない。そんなときかなこは「やから、ももこがしたいのはこうこうこうでこうで、・・・」というふうにとても的確に伝えてくれた。
私はそのパフォーマンス自体、練習の時間もそんなになかったし、完成度の低さに消えたい気持ちでいっぱいだった。しかしその夜、そんな無茶なパフォーマンス企画に付き合ってくれたのに、かなこは「ちゃんとがんばって最後までやり遂げたももこを誇りに思うよ」とメールで言ってくれた。私はなにが大事かをかなこにたくさん教わった。完成度なんかはじめはどうでもよくて、やり遂げるということが大事だと。確かに無謀な企画だったのだ。なにせ、準備に10万くらいかかったし、完璧主義者な私は衣装もひとつひとつこって、探すのに一苦労だった。そして、それを行う場所というのがまた、大学内のわかりにくい山奥で。
だけどまたやってみたいと思うが、しかし今度やるなら今度こそ完璧にしたいから。しかしまあ、それはまた突然やってくるかもしれないしやってこないかもしれない。
そういえばこんなこともあった。かなこはいつも私のことを「可愛い」と言ってくれた。かなこの部屋でだ。みんなでほろ酔いになっているときかなこの彼氏が「そんなに可愛いと思うなら抱けるんじゃない?」みたいなことを言って「じゃあ、俺らトイレにこもっとくからごゆっくり~」といってベッドにいる私の方へかなこの背中を押した。
私は正直あのときもうちょっとしてもいいとさえ思っていたよ。かなこは私に、少しだけディープなキスをして服の下から手を入れ、胸をさわろうとするところで、手をとめやめた。期待はずれな私だった。かなこはかなこの彼氏に言った。「これ以上したらほんまにももこのこと犯してしまいそうやわ」と。私はちょっと嫉妬した。かなこの彼氏にはやっぱり勝てないんだと。
このように書いているとあれはまぎれもない恋だったじゃないか。私はいつだってヒーローのように飛んできてくれて私を可愛いと褒めてくれるかなこが大好きだった。それ以来、キスもなにもしていないが。
私の誕生日のときはかなこは私にアリエルのグッズをたくさんプレゼントしてくれたし、本当にあのときの私にとってかなこは恋人だった。わがままで勝手すぎた私をあんなに愛してくれた人は、かなことあともう一人の男しかいない。と今でも思う。
かなこみたいになりたかった。
お酒のみで、ヘビースモーカーで、歌がうまくて、料理が上手で、物事の分別がいつもしっかりついていて、それでも恋人のまえでは乙女で、人のいいところをぐんと伸ばしてくれる。その変わりだめだと思ったことははっきり言う。
かなこが大好きだった。
かなこの映像の合評のときにどでかい花束を最後にプレゼントしたこともあった。みんなの前だったのでかなこはとても恥ずかしそうに「え、ちょ、むちゃでかいし!!なに?」と教授の後ろにかくていた。おかまいなしで花束をプレゼントした。「おめでとう。」本当に大好きな人に言う目だった。かなこといるときは私はいつだって乙女だった。かなこに怒られるとしゅんとして、褒められると犬の様にしっぽをふって喜ぶ単純娘。
誕生日サプライズを友達とがんばって、かなり完成度の高いものにしたりしてかなこをとにかく喜ばせたかった。
大学を卒業し、お互い違う環境になって、ときどき会ってもらぶらぶだった。
お互いのこと、知り尽くしていた。
発狂も過呼吸もリストカットもODもしなくなって少し落ち着いて会うと、また少し感覚が違った。大学のときはどちらかといえば、私がひたすらかなこに惚れていた。本当に大好きで、私の中では完璧なヒーローで完全に「彼氏」だった。
当たり前だがそんなかなこだって恋愛で苦しむことだってある。私はかなこのためにそういうときにちゃんと相談にのってあげられなかった。
かなこは強がりを私の前じゃ装うので、「大丈夫なの?」と聞いても「大丈夫」って絶対に言うんだった。
かなこが他の映像科の子と仲良くしていると嫉妬した。本当は独りじめしたかったのかもしれない。私はぽんぽん彼氏をつくっときながら・・・。
大人になってからもたまに会う。私はお酒は弱いが、お酒を飲んで対等に語れるようになったのは本当にここ3年以内くらいじゃないだろうか。
かなこはいまはまた三重の実家に帰ってしまっているが。やはりたまに思い出しては胸がきゅんとするときがある。
かなこみたいにかっこよく生きたかった。
かなこをもっと私も支えてあげられればよかった。
そう思った。
かなこはずっと長かった彼氏と今日終わらせたらしい。
「大丈夫?会いたいよ。かなことあたしなら絶対うまくいくのにね。」と。
すると、「ももこは本気であたしを愛せばよかったのに。」と返ってきたんだ。なんだか胸の奥がきゅうっとしめつけられるかんじでとても苦しく、そして切なくなって、涙が溢れ出てしまった。
「あたしはかなこのこと今でも愛してるよ。かなこが男ならよかった。もしくはあたしが。」そう送った。「本当にあたしが男ならよかった。」しばらくやりとりした。
かなこは今でも相変わらず私をかわいいと言ってくれる。
最後にこんなことをメールで言った。
「私は桃子に御執心だからね あんたの愚かさも弱さも可愛さも美しさも才能も 愛してるよ 本当に、男ならよかった。」と。
そうだ、かなこはいつもそんな風に私を愛してくれていた。かなこをフった男なんて許せない。だけどかなこが愛した男だから、許す。
「きっと次またいい出会いがあるよ」なんてきれいごとは言わない。「なんで男と女なんやろうね。切なすぎるよ。」って言った。だから私はもうどうしようもないこの気持ちを、やはり書いておくべきだと思ってかなこに許可を得て、書いてみた。
私とかなこは確かにひとつだったんだ。性別は同じだけど。
女同士なんて余計恥ずかしすぎて、ハグすらもどきどきしちゃうのにね。
やっぱり私たちはこんなに愛し合っていても男にまだ抱かれたいなんて夢みているんだよね。
愛してたよ、かなこ。
私はとてもいやかなりひどい女でわがままで勝手で自分のことしか考えてないやつだったのに、かなこはいつも全力で向き合ってくれた。
私の女の基本は、あのときから「かなこみたいな女」になっているよ。無論、いまでこそかなこはそんなにヒーローではなく、私の知らないところでたくさん泣いていたんだろうなって思うと本当に、自分の思いやりのなさにがっくりくるけれど。
今でも愛している。もちろん。
心の中でかなこの片割れは気まぐれに過ごしているよ。
だからやっぱり、男にフラてもまだまだ諦めない女でいようね。
今は少し遠くから、ぽっかり空いたその隙間を少しでも埋めれたらと願いながら、私は別の男に恋をしながら、だけどやっぱりこういいたいよ。今だから言いたい。
「私の胸で泣いてもいいよ。いっぱいいっぱい抱きしめるから。」
そんなくさい台詞でも、かなこになら自然と言えるしいいたくなる。
でもかなこはそんな女じゃない。
次あったときにはけろっしていて、また強がって、お酒を飲んで、カラオケに行って、私は尾崎豊と浜崎あゆみのライブものまねを披露するのだろう。
全くあれはもう特別なときにしかしないけど、かなこの前だったらいつでもいいよ。
男にはなぜかたやすくは言えないし言いたくないし、今まで聞かれてしか言った事ないけどかなこになら心から言えるんだ。「愛しているよ。」と。
完。
大学のときのはじめの頃、健康診断があった。まだ同じ学科の子たちとも仲良くなれていない状況だった。私が専攻していたのは「映像・舞台芸術学科、舞台芸術コース」という名前のものだった。とにかくなにもかもははじめてで日々不安で仕方がなかった中、健康診断という集団の行列に並ばされて、私は消えたいくらい緊張していた。
「ま、み、む、め、も。」
かなこは「み」私は「ま」から始まる名字を持つ。かなこはちなみに「映像・舞台芸術学科、映像コース」の生徒だった。私は男に関してはあまり瞬間的に運命を感じてもあまり信じたくないが、女に関してはわりとすぐに信じてしまう。かなこは私の後ろか前か、もしくは横にいた。なにを最初に喋ったのかは覚えていない。しかし第一印象は覚えている。「なんて男らしいかっこいい女の子なんだ」と思った。一瞬頬を赤らめたていたかもしれない。
健康診断の行列はなかなか前に進まなかった。そこで私たちは息統合して、延々と続くその行列を待ちながらちっとも退屈になどならなかったのを覚えている。
かなこは三重から出て来た女だった。そして少し、いやかなり口が悪くて、はじめはその口調に少し傷ついていた。「お前、一回死ね」とかなんだかそういうようなことを平気で言えちゃうのだった。傷つく反面、かっこいいと思った。私も友達に「お前」とか言って接してみたいってね。
だんだんかなこの口の悪さに慣れてきた。だってそれはかなこの愛情表現であり、かなこは口は悪くて恐そうに見せておいて実はとっても乙女で、照れ屋さんな面があるのを私はもう、気付いていたから。だからかなこが柄悪く私になにかを言うたび「愛されてるなあ」と本気で思えた。
私たちは全く違うもの同士でお互い違う彼氏もいたのに、どこかしら似ている部分もあった。カラオケはお互い大好きだった。かなことはじめてカラオケに行った時私はまた緊張のあまり、選曲ミスをした。なぜかX-JAPANの「Forever Love」を大熱唱した。いつもの癖だ。はじめに自分のきちがい的な面を見せたらあとは、もう恐いものなしっていうやつ。私はそういう手段でよく人と仲良くなって行った。あとから、「ももことはじめてカラオケいったときのX-JAPANの選曲にはびっくりしたわ」って言われたことも覚えてる。その話が出るたび、お互い爆笑しちゃうのだ。
私は19の彼氏とも半年くらいで別れ違う恋をしてはすぐ捨てられ(一発やられ)、それでもめげずに恋をし続ける女だった。まあ、いまでもそうかもしれない。その回数が減っただけで。
「あたし、今恋してんねん」と得意げにかなこに伝える。大抵の女の子の場合、なんというかそういう話はうざがられるのでタブーだ。それか遠慮がちに「うん、ちょっと好きな人はいるかも」などという。かなこにはなんでも話せた。そしてかなこは恋してる私にあきれながらも「まーたー」と言って話をつれづれ聞いてくれる。そして私はたっぷりのろけ話をしたその数日後あっさり恋に冷めていたり、あるいはまた捨てられていたりする。
はじめはかなこも同情して、私と「一発だけヤッた」男の家までおしかけるのに途中まで一緒にきてくれたこともあった。しかしそのあとも私は相変わらず恋をしていた。そしてまた私はかなこに「あたし、恋してんねん。」と言う。それのくり返しが何度あったことか。普通の女の友達にはとてもじゃないがこんなこと言えない。かなこにだからこそ言えたんだ。
ある男は私を無理矢理押し倒してやろうとしてきたが、必死で抵抗した。はじめて本当に力では男に勝てないこと知った。「ちゃんと空手習ってたのに」「防御の仕方も覚えたのに。」とても悔しかった。
次の日私は部屋のカーテンを空けることもできず、布団の中にうずくまっていた。震えながらかなこに電話して事情を話した。かなこは言った。「よし、殴りにいこう!」すぐにマンションの部屋まできてくれた。もうひとりの友達もきてくれた。こういうときは多ければ多い方がいいという、ヤンキーカルチャーか。かなこは本当はすっごくヤンキーなのだ。
泣いている私を二人は私の肩を抱きなだめてくれた。そして、「殴り込み」にその男のいる部屋へ3人で押し掛けた。そんなこともあった。そしてそれはすっきり私のなかで解決した。
大学生の頃は本当に不安定きわまりなかった。病院では「両極性感情障害」と名付けられた。アップダウンがはげしすぎるということだ。そしてたまに発狂して過呼吸になる。
発狂とは私は今だから思えるがあれは完全なる憑異だ。その瞬間なにかがくる。「ああやつがくる」というのがわかる。しかしよくかなこは本当にヒーローみたいに飛んできてくれた。そして私の呼吸がもとに戻るのをゆっくりと手伝ってくれた。
あるときはリストカット、あるときはおさけとOD。
ODをしても絶対病院へは行きたくなたった。親にバレるからだ。しかしかなこは救急車を呼んだ。「ももこはいやかもしれんけどほんまに苦しそうやったから救急車を呼んだよ、ごめんね。」と言った。その優しさに意識が半分とびながらわたしはODをしたことを後悔した。そのときはじめて胃洗浄とやらをされた。びっくりした。あれほど苦しいものはないんじゃないかと思った。それからODをやめれたわけではないがそれから少しずつ減っていった。
なにがあってもかなこは飛んできてくれた。
京都の部屋でハムスターを買っていたのだが、一日だけ旅行に出かけたときにそのハムスターが一日で、たった一日で死んでしまったことがあった。とても残酷な死に方をしたんだ。読みたくない人は読まないでくれ。網からでようと、そこに首をつっこんで死んでいた。固まっていた。
声がでなかった。「ただいまー」と部屋にもどりまずそのこに挨拶をしていたのだが一瞬なにが起こったかわからなかった。一人なのに2Kの部屋に住んでいた私は別の部屋に移動して、「インディが、インディが、インディが・・・!!!」とかなこに泣き狂いながら電話した。かなこはかなこの彼氏と二人ですぐに飛んできた。かなこの彼氏がペンチを持ってきれくれていた。泣き狂う私にかなこは「ももこはあっちいっとき!!」と言った。
かなこの彼氏がさくをペンチで切って、インディをきれいにとりだしてくれた。ティッシュで優しくつつみ、近くの公園に一緒に埋めに行った。かなこの彼氏にもとことん、お世話になっていた。
かなこは本当に私にとって完璧だった。料理もうまくてよくかなこの部屋にも行って食べたことがある。そんな私も負けずとかなこを部屋に招待してつくってはみたがいつもなにかしらつっこまれていた。
かなこは映像科、私は舞台科で、うまい具合にバランスがとれていたように思う。全く違う目線で物事をみているから。
だから私のはじめての企画のときもかなこはやはり助けてくれた。またまた無茶な企画を用意して、完全に未完成なパフォーマンスを学園祭でやったとき、そのときも。私が表現したいこと、やりたいことを、お金の問題、その他、話しているつもりが言葉がへたくそすぎで全然伝わらない。そんなときかなこは「やから、ももこがしたいのはこうこうこうでこうで、・・・」というふうにとても的確に伝えてくれた。
私はそのパフォーマンス自体、練習の時間もそんなになかったし、完成度の低さに消えたい気持ちでいっぱいだった。しかしその夜、そんな無茶なパフォーマンス企画に付き合ってくれたのに、かなこは「ちゃんとがんばって最後までやり遂げたももこを誇りに思うよ」とメールで言ってくれた。私はなにが大事かをかなこにたくさん教わった。完成度なんかはじめはどうでもよくて、やり遂げるということが大事だと。確かに無謀な企画だったのだ。なにせ、準備に10万くらいかかったし、完璧主義者な私は衣装もひとつひとつこって、探すのに一苦労だった。そして、それを行う場所というのがまた、大学内のわかりにくい山奥で。
だけどまたやってみたいと思うが、しかし今度やるなら今度こそ完璧にしたいから。しかしまあ、それはまた突然やってくるかもしれないしやってこないかもしれない。
そういえばこんなこともあった。かなこはいつも私のことを「可愛い」と言ってくれた。かなこの部屋でだ。みんなでほろ酔いになっているときかなこの彼氏が「そんなに可愛いと思うなら抱けるんじゃない?」みたいなことを言って「じゃあ、俺らトイレにこもっとくからごゆっくり~」といってベッドにいる私の方へかなこの背中を押した。
私は正直あのときもうちょっとしてもいいとさえ思っていたよ。かなこは私に、少しだけディープなキスをして服の下から手を入れ、胸をさわろうとするところで、手をとめやめた。期待はずれな私だった。かなこはかなこの彼氏に言った。「これ以上したらほんまにももこのこと犯してしまいそうやわ」と。私はちょっと嫉妬した。かなこの彼氏にはやっぱり勝てないんだと。
このように書いているとあれはまぎれもない恋だったじゃないか。私はいつだってヒーローのように飛んできてくれて私を可愛いと褒めてくれるかなこが大好きだった。それ以来、キスもなにもしていないが。
私の誕生日のときはかなこは私にアリエルのグッズをたくさんプレゼントしてくれたし、本当にあのときの私にとってかなこは恋人だった。わがままで勝手すぎた私をあんなに愛してくれた人は、かなことあともう一人の男しかいない。と今でも思う。
かなこみたいになりたかった。
お酒のみで、ヘビースモーカーで、歌がうまくて、料理が上手で、物事の分別がいつもしっかりついていて、それでも恋人のまえでは乙女で、人のいいところをぐんと伸ばしてくれる。その変わりだめだと思ったことははっきり言う。
かなこが大好きだった。
かなこの映像の合評のときにどでかい花束を最後にプレゼントしたこともあった。みんなの前だったのでかなこはとても恥ずかしそうに「え、ちょ、むちゃでかいし!!なに?」と教授の後ろにかくていた。おかまいなしで花束をプレゼントした。「おめでとう。」本当に大好きな人に言う目だった。かなこといるときは私はいつだって乙女だった。かなこに怒られるとしゅんとして、褒められると犬の様にしっぽをふって喜ぶ単純娘。
誕生日サプライズを友達とがんばって、かなり完成度の高いものにしたりしてかなこをとにかく喜ばせたかった。
大学を卒業し、お互い違う環境になって、ときどき会ってもらぶらぶだった。
お互いのこと、知り尽くしていた。
発狂も過呼吸もリストカットもODもしなくなって少し落ち着いて会うと、また少し感覚が違った。大学のときはどちらかといえば、私がひたすらかなこに惚れていた。本当に大好きで、私の中では完璧なヒーローで完全に「彼氏」だった。
当たり前だがそんなかなこだって恋愛で苦しむことだってある。私はかなこのためにそういうときにちゃんと相談にのってあげられなかった。
かなこは強がりを私の前じゃ装うので、「大丈夫なの?」と聞いても「大丈夫」って絶対に言うんだった。
かなこが他の映像科の子と仲良くしていると嫉妬した。本当は独りじめしたかったのかもしれない。私はぽんぽん彼氏をつくっときながら・・・。
大人になってからもたまに会う。私はお酒は弱いが、お酒を飲んで対等に語れるようになったのは本当にここ3年以内くらいじゃないだろうか。
かなこはいまはまた三重の実家に帰ってしまっているが。やはりたまに思い出しては胸がきゅんとするときがある。
かなこみたいにかっこよく生きたかった。
かなこをもっと私も支えてあげられればよかった。
そう思った。
かなこはずっと長かった彼氏と今日終わらせたらしい。
「大丈夫?会いたいよ。かなことあたしなら絶対うまくいくのにね。」と。
すると、「ももこは本気であたしを愛せばよかったのに。」と返ってきたんだ。なんだか胸の奥がきゅうっとしめつけられるかんじでとても苦しく、そして切なくなって、涙が溢れ出てしまった。
「あたしはかなこのこと今でも愛してるよ。かなこが男ならよかった。もしくはあたしが。」そう送った。「本当にあたしが男ならよかった。」しばらくやりとりした。
かなこは今でも相変わらず私をかわいいと言ってくれる。
最後にこんなことをメールで言った。
「私は桃子に御執心だからね あんたの愚かさも弱さも可愛さも美しさも才能も 愛してるよ 本当に、男ならよかった。」と。
そうだ、かなこはいつもそんな風に私を愛してくれていた。かなこをフった男なんて許せない。だけどかなこが愛した男だから、許す。
「きっと次またいい出会いがあるよ」なんてきれいごとは言わない。「なんで男と女なんやろうね。切なすぎるよ。」って言った。だから私はもうどうしようもないこの気持ちを、やはり書いておくべきだと思ってかなこに許可を得て、書いてみた。
私とかなこは確かにひとつだったんだ。性別は同じだけど。
女同士なんて余計恥ずかしすぎて、ハグすらもどきどきしちゃうのにね。
やっぱり私たちはこんなに愛し合っていても男にまだ抱かれたいなんて夢みているんだよね。
愛してたよ、かなこ。
私はとてもいやかなりひどい女でわがままで勝手で自分のことしか考えてないやつだったのに、かなこはいつも全力で向き合ってくれた。
私の女の基本は、あのときから「かなこみたいな女」になっているよ。無論、いまでこそかなこはそんなにヒーローではなく、私の知らないところでたくさん泣いていたんだろうなって思うと本当に、自分の思いやりのなさにがっくりくるけれど。
今でも愛している。もちろん。
心の中でかなこの片割れは気まぐれに過ごしているよ。
だからやっぱり、男にフラてもまだまだ諦めない女でいようね。
今は少し遠くから、ぽっかり空いたその隙間を少しでも埋めれたらと願いながら、私は別の男に恋をしながら、だけどやっぱりこういいたいよ。今だから言いたい。
「私の胸で泣いてもいいよ。いっぱいいっぱい抱きしめるから。」
そんなくさい台詞でも、かなこになら自然と言えるしいいたくなる。
でもかなこはそんな女じゃない。
次あったときにはけろっしていて、また強がって、お酒を飲んで、カラオケに行って、私は尾崎豊と浜崎あゆみのライブものまねを披露するのだろう。
全くあれはもう特別なときにしかしないけど、かなこの前だったらいつでもいいよ。
男にはなぜかたやすくは言えないし言いたくないし、今まで聞かれてしか言った事ないけどかなこになら心から言えるんだ。「愛しているよ。」と。
完。