シニア犬 最期まで幸せでいてほしいから

シニア犬 最期まで幸せでいてほしいから

ブログの説明を入力します。


テーマ:

行動修正と体罰 その4
 飼い主に対する攻撃行動への体罰使用に関する解説の最終回、今日取り上げる攻撃行動は捕食性攻撃行動です。この攻撃は私が全責任を持って飼った最初の犬だったハスキーの「びく」と「さら」が数々の問題を引き起こしてくれたので(笑)、以前にも書いていますが、今回は体罰との関連を含めて書きたいと思います。
 この攻撃は日頃、主に面倒を見ている飼い主ではなく、飼い主家族に向けられる攻撃行動と言った方が正しいでしょう。さらには、その犬が飼育された当初からいて十分な接触をしてきた家族に対して生じることはありません。後から加わったメンバー、具体的には乳児、または接触が少ない家族が年齢を重ねたり身体に障がいが生じたりした時に対象に成ることがあるのです。さらに、このブログを読んでくださっている方にとっては「家族」には、当該の犬以外の飼育動物たちが含まれますよね?そう、犬より後で飼育され始めた小型犬や猫、モルモットやねずみなども対象に成りえます(子犬のころから十分な接触をしながら一緒に育った個体に対しては攻撃は生じません)。

 捕食攻撃行動は、対象の何らかの動きに触発されて突然に、全く抑制がかからないで生じるという特徴を持っています。犬をじっくり観察していれば、攻撃の前にその対象を柔らかな目ではなく獲物を追う時の鋭い目でじっと見つめているのに気づくかもしれません。家族に対して捕食性攻撃行動を起こしたなら、二度目の攻撃は対象が大けがをしたり、致死的なものとなる可能性を否定できません。
 さて、この捕食性攻撃行動に対する治療に体罰を使うことの是非です。体罰の定義は動物に対して殴る、蹴る、首を掴んで振る、首を絞める、食事や水を与えないなど、身体的および精神的な苦痛を与える行為でしたね。犬にとって嫌な刺激、つまり嫌悪刺激の一種です。すべての動物は嫌悪刺激が与えられると、その原因となった行動を避けようとします。与えられた嫌悪刺激が大きければ大きいほどその行動をしなくなるものです。捕食攻撃に対し嫌悪刺激を用いるタイミングとは、家族に致死的な怪我を負わせるわけにはいきませんから、犬が攻撃を間違いなくすると確信できた瞬間、攻撃の直前と言うことになります。このような瞬間に殴る、蹴るなどの体罰をタイミングよく繰り出すことが出来る人はかなり限られます。しかも、犬に攻撃行動と嫌悪刺激を結びつける学習をさせることが出来ない(強さが不足していたり、タイミングにずれがある)体罰を与えるなら、自分の犬を虐待しているだけということになります。さらに、興奮状態にある犬はこれまでの対象から、体罰を与えた手や足、もしくは体罰に私用した棒などに対して攻撃を仕掛けてくる可能性、つまり転嫁が生じる可能性が大です。この時、犬はまったく感情をもつことなく攻撃をしてきます。うーん、とても難しい・・・。私には捕食攻撃をしようとしている犬に正しく体罰を与える自信はありません。だって、手を振り上げて動いている犬に対して振り下ろす間に、犬は攻撃をし終えてしまいそうです。嫌悪刺激として体罰ではなく、たとえば犬が腰を抜かすような大音量の爆発音とか雷鳴音を用いるほうが上手くできそうです。それでも、タイミングを計れるかどうか・・・。一発で犬が絶対にもう二度としないぞと学習するような強さの嫌悪刺激をタイミングよく繰り出すことは本当に難しいでしょう。いつも犬を監視していなくてはいけないなら日常生活が破たんしてしまいますよね!

 だからやっぱり環境を整えて犬が捕食対象とする家族を守ることを第一に考え、時間をかけてその家族と犬との関係を変えていく、その家族に慣らしていくことの方が安全だし、安心だし・・・と言う話になるわけです。
 

 家族に対する攻撃と体罰について長々と書いてきましたが・・・結論!家族に対して攻撃的に吠える、唸る、咬もうとする、咬むなどの攻撃をする犬に体罰を使うのはやめましょう!日本獣医動物行動研究会の声明文と資料http://vbm.jp/seimei/85/をもう一度お読みいただければ幸いです!

 次回から先日、天にお返しした「るか」の行動について、かれの思い出として数回にわたって書いてみたいと思います。See you!


テーマ:

行動修正と体罰 その3

 飼い主に対する攻撃行動への体罰使用に関する解説その3になります。

 私が行動診療を始めた1990年代、飼い主に対する犬の攻撃行動の約9割、いやそれ以上が優位性(支配性)攻撃行動、一般的には権勢症候群とかα症候群などと呼ばれた攻撃行動だと考えられていました。簡単に言っちゃえば、飼い主が犬にバカにされているから、犬が飼い主より上に立っているから、犬は飼い主が気に入らないことをすると攻撃するのだという考え方でした。

 行動学で「優位性」とは、二個体間で両者にとって価値あるものに対しアクセスする際の優先性を意味します。価値あるものとは、飢えているときの食べ物、心地よい休み場所、交配相手などを指します。飼い主と犬との関係をちょっと考えてみましょう。私たち人間は犬と同じような価値感を持っているでしょうか?つまり、犬の食事がとてもおいしそうなので犬を差し置いて食べたいとか、犬のベッドが気持ちよさそうなので奪い取って寝てみたいとか、あの雄犬がとってもかっこいいので自分で独占するためにわが家の雌犬を近づけたくないとかです!ありえなーい(笑)。そう、根本的に「優位性」をめぐる戦いという考え方には間違えがあったのです。犬と飼い主を一つのパック(群れ)と考えて説明をしたところから間違えが生じました。種が違いますもの。

 動物行動学の研究が進んだことにより、飼い主に対する攻撃行動がこれに該当すると診断される割合は急減し、現在は1割以下になっています。9割以上あったのに、1割以下ですよ!本当に稀にではありますが、超大型犬や大型犬で飼い主に対してこの攻撃を示すことがあると考えられています(まあ、そうですよね。小型犬はどう考えたって人間よりも強いなどと思うはずがありません)。ちなみに、行動診療に携わる獣医師は、現在この攻撃行動に対して「序列関連性攻撃行動」という診断名を使用しています。この攻撃行動は他の攻撃行動と全く異なり、犬は耳を倒したり、口角を後ろに引いたり、上目づかいをしたり、体重を少し後ろにかけるというような不安や恐怖を全く示すことなく、唸りながら、睨みつけ、耳を前方にしっかり向け、体重を前足にかける、つまり攻勢的な攻撃姿勢をとります。ところで同種動物の群れの中での優位性をめぐっての戦いではほとんど相手を傷つけることはありません。群れ全体の力をそぐことになるからです。劣勢の動物がすぐに降参して、たとえば、見据えられて唸られた時点でその場を去れば、優位な動物はさらに攻撃を加えて傷を負わせるようなことはしないのです。

 でも、過去に多くの人(私もそうだったことを告白します!)が信じていた「優位性神話」、つまり犬が飼い主の上に立とうとしているまたは立っているので攻撃するという考え方は、いまだに一部のドッグトレーナーや獣医師に信じられており、行動修正の方法として、自らの強さを示す必要を説き、強制的な方法がとられていることが多く、時にはこれが体罰となります。優位性を示すのは群れ仲間と認識している寝食を共にしている家族に対してだけです。そして、前述したようにもしすぐに手をひけば、犬は襲ってこないはずです。攻撃した後で、申し訳なさそうな様子を見せたり、おべっかを使っていると思われるような態度を取ることも決してありません。そして真の序列関連性攻撃ならば、価値あるものの管理をし直し、飼い主の対応を変えることで争いを避けることが可能なのです。つまり、やっぱり、この攻撃行動であっても体罰は不要と結論づけられるかと思います。

 問題なのは序列関連ではなく不安や恐怖が関連している攻撃行動を正しく診断せずに序列関連性攻撃(またはいまだに権勢症候群とかα症候群)だとして、体罰を使って矯正しようとする試みです。その1に書いたように、犬により強い不安や恐怖を抱かせることになるからです。まだまだ攻撃行動にはいろいろあるのですが、次回はもしかすると体罰が有効かもという唯一の攻撃行動について触れ、飼い主に対する攻撃行動と体罰使用についての話を終わろうと思います。

 


テーマ:

行動修正と体罰 その2
 飼い主に対する攻撃行動の多くが恐怖とか不安が関連しており、この治療には飼い主と犬との良好な絆を結びなおすことが必須です。犬に対して、飼い主を怖がったり不安に思ったりする必要はないこと、逆にいつもあなたを守ってくれるやさしい保護者であることを教え直すことです。ですから、体罰は用いるべきではないと前回、書きました。今日は飼い主に対する他の攻撃行動を修正するための方法と体罰について書きます。

 はじめにわかりやすい攻撃である、母性攻撃行動を考えてみましょう。現代では非常に少なくなりましたが、自分の子犬を守るために、子犬に触ろうとする、飼い主を攻撃する犬です。この攻撃は生得的な行動ですから、可能な限り母犬と子犬をそっとしておくように伝えます。母犬が子犬のそばを離れているとき、たとえば、排泄や食事、散歩に出かけている最中などに子犬に対する必要なケアを行うように進言します。母性行動に対して体罰を与えるのは動物福祉に反すると思いませんか?ですから、攻撃行動が生じないように環境を整えるという対処によって「予防」を考えるわけです。また、幸いなことにこの攻撃行動は、放っておいても子犬の成長とともに収束します。
 次に子犬を守るのに少し似ていますが、お気に入りのおもちゃや食べ物を守ろうとして飼い主を攻撃する場合を考えてみましょう。所有性攻撃行動、食物関連性攻撃行動と診断します。診断名は異なりますがどちらも所有欲、つまり、自分の物を取られたくないという欲が関連しています。これらの犬はおもちゃ、骨、ガム、食器などを護ります。そして、これまでに所有性攻撃行動、食物関連性攻撃行動と診断した犬は数多くいますが、9割以上の犬が恐怖性攻撃行動を同時に診断しています。これらの犬は、おもちゃや食物に近寄られるとおびえた様子を見せながら(たとえば、白目が見えるような眼の見開き方、わずかに後方に引いた耳、口角を後ろにひいて固く閉じた口など)、奪われたくないので必死になってそれを護ろうとして攻撃してきます。これらの犬には、護るものを与えない、または、護っているものをむりやり取り上げず、母性攻撃行動と同じように、犬がその場を離れている時に取り上げるようにするのが初めにすべき対処として進言します。まずは環境を整えることによって攻撃を予防することから始めるわけです。その後、犬に、大切な物であっても護るのではなく、飼い主に委託できるように人道的な方法を用いて教えて行きます。具体的には「トレード(とりかえっこ)」、「リーブ(離れて)」、「ドロップ(口から離して)」というようなコマンドをゲームの中で教えること、ガム・骨を食べたり、食事中に犬のそばに飼い主が来ると良いことがあるという経験を段階的に教えることなどをしていくわけです。このような犬に体罰を用いると多くの場合、攻撃がひどくなります。もしかすると上手に体罰を使えば、おもちゃや食べ物を護ろうとする攻撃を止めさせることはできるかもしれません。でも、なぜ犬がその行動を止めたのかを考えてみてください。犬は「あの嫌な経験をするくらいならおもちゃや食べ物を渡した方がいいいや」と学習したのです。そこに家庭犬と飼い主との間の理想的な信頼関係はないと思うのです。犬のただの服従、降参です。家庭犬には安心して飼い主の横で骨やガムを齧ってほしい、ゆっくり食事をしてほしい、多くの飼い主はそう願っているのではないでしょうか?
  そうそう、引っ張り合うおもちゃで犬を遊ばせ、興奮した犬が唸りながら必死におもちゃに食いついてくる犬は所有性攻撃行動とは診断しませんよ!どんなに唸っていても、これは、攻撃ではなく遊びだからです。私はわが家の犬たちと良くこのようにして遊びますし、彼らは私のほうが強いことはお見透しですから、負けてやったりもします。大きい犬が小さい犬と遊ぶとき、小さくなってお腹を見せたり、上に乗らせてやったり、咬みつかれてやったりしますよね?あれと同じです。もちろん「離せ」と言うコマンドをかけて咥えているものを離させ、もう一度それを投げて持ってこさせて引っ張り合いを再開したりもします。私も犬たちもだーいすきな遊びです。 

 飼い主さんに対する攻撃行動はたくさんあるので、まだまだ続きます(笑)。