25歳で結婚をした。恋愛だった。


26歳でこどもを産んだ。女の子だった。


幸せだった。


優しい旦那さまに、可愛い娘。何の変哲もない日々。





28歳で、恋をする。あろうことか。





***


もう一度働きたい。


ずっとずっと、願っていたことだった。


少しばかりパソコンが使える自分をもっともっと


試してみたかった。


どこまで行けるのか、知りたかった。




ただ、それだけだったのに。




同じ部屋にいながら、チームが違うというだけで


話すこともままならないひとに、恋をした。


ひどく旧式な体質の、身分制度がきっちりしすぎた


昔まみれの仕事場で、私と彼は対角線上に座る。


部屋の隅と隅に配置された机が、私と彼の距離。




働けることが嬉しくて、初めはそれしか頭になかった。


上司ばかりのその場所で、なんとか生きて行こうと。


結婚していても、子どもがいても、やれると言いたい。


そればかりを考えていた。




一変したのが、何の変哲もなかったはずの朝。





毎朝通勤に使うバスの中に、彼が座っていた。


面接の時以来、話したことなどなかった。


彼は、部屋でナンバー2の位置にいる上司。


目が合ってしまったので、会釈をして隣に座る。


普段は車で通勤しているはずなのになぜ?




「実は・・・二日酔いなんです(笑)」




恥ずかしそうに笑っていた。


お酒、好きなんですねと私も笑った。


だってまだ、木曜日の朝。




「仕事には慣れましたか?」




はい、なんとか。と答えておいた。


本当に、そうだったから。


直接関係ないから、彼も私の仕事について


特に情報が回る立場でもないようだった。


バスを降り、一緒に部屋まで歩いた。


それじゃあ、と言って仕事に入る。




チームには女性上司が2人いて、彼女らから


私は指示を受け仕事をする。


忙しい部署なので、山ほど仕事を言いつかる。


だから、気づかなかった。気づいたのは、翌日。




『朝の話の続きです』




社内メールで、業務連絡以外の表示があった。


送信元は、彼。




『お酒が好きなら、今度飲みに行きましょう。


まだ歓迎会もしていないし、あなたは楽しそうだ。


都合の良い日を携帯にでも入れておいて下さい。


仕事中は忙しくてメールは返せないから。』




歓迎会。そういえばまだだったな。


ありがとうございます、と返しておいた。


その日、一週間の仕事を終えて帰宅後、


娘を寝かせてからメールを打った。




仕事の感想と、平日しか都合はつかないこと。


私の夫は不定期でしか休めないから。


夫と一緒に過ごした時間は、さほどない。


(そんなことはもちろん書かなかったけれど。)




週末に何度かメールをやり取りしているうちに、


仕事の悩みを相談するまでになってしまった。


そしてそれを、普段は話すことは出来ないから


やっぱり2人で行きましょうと言われた。


敬語も、メールで使うのはどうかなと言われて


素直にやめてしまった。




罪悪感など全くなかった。


ただ上司と話をするだけ。


それ以上の感情など、欠片もなかった。


ほんとうに。