【書評】日本の論点2011 | 書評に魔法はない

【書評】日本の論点2011

日本の論点2011/文藝春秋編

¥2,980
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Amazoレビューで星一つの方が「論者によって差がありすぎる。」っていうのは仰る通り。確かに、論述のレベルが低すぎたり、明らかに偏っている意見も見受けられる。
しかし、それらを差し引いてもこの量で2980円なら充分安いと言える。
自分が知らない分野において合理的な考えを持っていて面白い論客を発見できて収穫あり。

論文の最後に「著者が推薦する基本図書」でその分野の意見の正当性がある程度予測できる。自分が信頼できない人や土地勘がまったくない分野に関しては、編集部がまとめたデーターファイルだけ読めばいいかも。データーファイルは数字と歴史の成り立ちがわかるしバランスもいい。

【論点28上杉隆】
「起訴後の有罪率が99%を超える捜査機関が、この多様化している現代社会において存在していることが不自然だ。」

【論点5島田裕巳】
「現在の焼き方だと、骨の主たる成分であるリン酸カルシウムがセラミック化し、そのままでは何年経っても土に帰らない状態になる。」散骨すれば、すぐにでも自然に還るかと。

【論点35橘木俊詔】
「経営者の報酬は社員の20倍程度が望ましい。」反対、データーファイルにある久保克行氏の意見の方に分があると思う。
「優秀な外国人経営者を確保するためには、高額な報酬が必要だ。引き下げでなく、経営者の報酬に成果主義をもっと採り入れることで対応するべきだ。」同意。規模の大きい会社はトヨタのように日本人が1億の報酬で非効率な経営にあたるより、日産のゴーン氏のような経営者にグローバルな報酬を与えて経営にあたってもらったほうが株主の利益になると思う。ゴーン氏が株主にもたらした利益は8億9千万以上はあるでしょう。

【論点47福井健策】
「国会図書館で、かつて明治期刊行図書の著作者を調べようとしたことがある。すると、7割強の著者について連絡先はおろか没年すらわからずいつ著作権が切れたか判断がつかなかった。」孤児作品の一部無償化も検討すべきであるには賛成。

【論点48池田信夫】
「地域防災無線は一日一回しか使っていないし、船舶無線やタクシー無線の帯域は半分以上が開いたままだ。土地に例えると、丸の内の一等地で超高層ビルの隣に平屋の一軒家があるようなものだ。」例えがうまいl

全てを読み通すような本ではないと思う。
正論とトンデモ論を見極める力がないとこの本の効用を得るのは難しいかも。
僕のように海外に住んでいて情報ソースが限られている人間にとって、幅広く日本の出来事や論争が把握できてよかった。