【書評】ニワトリ 愛を独り占めにした鳥 (光文社新書)/遠藤秀紀 | 書評に魔法はない

【書評】ニワトリ 愛を独り占めにした鳥 (光文社新書)/遠藤秀紀


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既にアルファーブロガーが紹介しているので「屋上屋を架す」になるかもしれない。

僕が興味があり、かつ印象に残ったのが、肉か卵の分離体制についてと廃鶏についてだ。
第2章 家畜の最高傑作、ニワトリ

古く、効率的でない伝統的なやり方が、新しい技術や発想で大幅改善、効率化されるのは工業生産品だけでない。
畜産動物も早熟巨大な品種に限定されて行き、兼用種では競争力がないということだ。

「卵を採って産まないお婆ちゃんになったら、殺して肉にする。」というのが伝統的なニワトリ飼育の図式。
ブロイラー飼育の確率と、大量の卵量を達成した卵用種の実現で瓦解した。
現在では「卵を採るか」「肉にするか」が完全に分離体制が敷かれており、経済合理性から見て兼用種ではまったく経営の競争に勝てないのが常識になっている。

卵用種であれば、初産日齢が160日と進化を早くうながされた。
(初産日齢が遅ければ遅いほどただ飯食いの時間が長くなり飼育コストが増える。)
産卵能力が高く安定するもの
ニワトリは通常15年ほどの寿命があるが、生まれて700日を経つと産卵能力が落ちるため廃鶏と呼ばれ廃棄物処理される。
日本で廃鶏は毎年1億羽。
もったいないように思えるが、経済原理はこの線を譲れない。
廃鶏は無料か数十円で輸送費さえ負担すれば手に入るという。
現在のところ、研究室で解剖されたり、化粧品の成分抽出に利用されようとしているが未だ決定的なものはない。

ちなみに同書に記載はなかったがオスに生まれたら、ビニール袋で圧殺されるらしい。
以下写真が載っている。
(むごくみえるのかもしれないのでご注意ください。)
http://mbis0.tripod.com/animalfactory/chickens.htm

P176「日齢や健康状態や生産能力において、コストに見合わない個体がとうたされていくのは現場の必然である。私はそうした廃鶏を見て感傷に浸ることはない。」

同意。
こういった合理化がなされていったから安くおいしい卵が買えるんだから。

とはいえ、廃棄物処理が大半というのはもったいない気がするのでちょっとぐぐってみた。

肥料に使えないのかな?って思ったら既に利用されていた。
http://www.zenkei.ne.jp/letter/letter_20040531.htm

他にも身が固いのを利用して一部レトルト食品に使われていたり。
JAS法で飼育条件の規定があって法律的にはダメらしい。
人間の舌的にはどうだろう?
インチキ業者が廃鶏を比内地鶏と偽って、気付かずありがたく食べていた人もいたんだしダメなのかな?
うまいキャッチコピーと売り方次第で有効利用喪できると思うのは素人の浅知恵かな。

卵用種の話だけでずいぶん長くなってしまった。

ちなみに同書は、家畜だけでなく、いろいろな品種も紹介しているし江戸時代からの起源、各国の闘鶏事情なども面白い。