
で、大通公園のベンチでしばしぼうっとしていて、思い出した。
高校1~2年のときのこと。
当時大通3丁目東側にバス停があり、よくその近くのベンチで本を読みながら、バスが来るのを待っていたものだ。
ある春の日、この日も本を読みながらバスを待っていたら、隣に160センチくらいの痩せた男が座った。
ちらっと見遣ってからほどなく読書に戻り、改めて物語に入り込もうとしたが、なにやら隣からぼそぼそ声がして集中できない。声のほうを向くと、先ほどのやせぎすな男が自分に向ってなにやら話しかけてきていた。良く見ると、この男、病的な浅黒い顔色をしている。
迷惑だなとは思ったが、昔は気の弱かった自分。仕方なく話を聞いていると、どうやら病気の話らしい。オウム病がどうのとか、犠牲者がこうのとか、言っている。そして彼は目の前に群れる鳩の一羽を指差した。
「ほら、あれ、片足がないでしょう。あれもそう。」
男は押し殺すような、ひそひそ話の一歩手前くらいの小さな声で話す。
しかし、実は、男の声がはっきり聞き取れたのはこの瞬間だけで、
あとは声が小さいのでよく聞き取れず、自分はただ流れにまかせて頷いていただけだった。
すると、男は

と自分の肩に手を置きながら、突然立ち上がった。
え?なに??
という感じの自分。何が起ころうとしているのか、飲み込めない。
「さあ、行きましょう」
痩せぎすの冴えない男は更に促す。
自分は何が起こっているかわからないながらも、やっと断りを入れることが出来た。
「オレはどこにも行かないよ。これから帰るんだから。やりたいことが、あるんだから。」
今の自分を知っている人なら、こんな答え方しないだろうというに違いないが、高校前半の自分は本当に気の弱い青年だったンだ。
すると、男はさも何事もなかったように、さらっと向こうへ向き直って去って行った。
あとで、自分はどこへ連れてゆかれるところだったんだろう?
医療機関?実験施設?あるいは、単なるホモ男によるナンパ?
今の自分を知っている人なら、信じないだろうケド、当時自分は結構かわいい少年だったンだ。
・・・・て自分で言うなってか?
ともかく、あのまま連れて行かれていたら、今の自分は居ない気がする。
そんなことを、思い出したのDeath.
写真は「ぶらり北海道観光」から拝借しました。