鰯が転校生でやってきたのは六月終わりのことだった。
聡明な読者のことだもう理解してくれただろう。
そう、転校生の名前が鰯!ではなく
放課後の水泳部で見せた彼の泳ぎはまるで鰯!ではなく
顔が鰯!それを見た人はSAN値減少!でもなく
教卓に一つの水槽。そして、中に一匹の鰯が泳いでいたのだ。
「今日から君らと同じ教室で学ぶ鰯だ。仲良くしてやってくれ」
「先生、意味がわかりません」
「うむ。先生も君らと同じ気持ちだ。朝来たら、校長に渡されてな。校長に聞いても、よくわからんの一点張りなんだ」
どうやら、闇は思いの外深いらしい。こりゃ、関わらないが吉だ。
「とりあえず、皆と同じ授業を受けさせてほしいとのことだ。仲よくしてやってくれ。席は、そうだな。相原、お前の隣を使わせてくれ」
どうやら思い切り、関わることになりそうだ。
まぁ話し手である以上ある程度関わることになるとは思っていたけれども。
「先生、相原くんの周りの席は既に埋まってますけど」
ナイス、委員長!できれば、このまま委員長とのラブコメを書かせてほしい。
「あーおれ、席退くからいいっすよ」
「おう、長谷川すまんな」
長谷川、てめー!俺と委員長との恋仲を邪魔しやがって!
「それじゃ、相原。ついでに鰯の世話も頼むな」
「え?ちょ、」
「先生!」
ここで委員長の追撃。委員長、俺のためにこんなに頑張ってくれるなんて・・・。
「転校生の名前をまだ聞いてないんですけど」
って、そだちかーい!
「悪い。俺もまだ聞いてなくてな。えっと、転校生?自己紹介できるか?」
先生がそういった瞬間、鰯は勢いよく水中から飛び上がった!そして、空中で、勢いよくぴちぴちと体を跳ねさせると再び水中へと戻る。それを二、三回繰り返すと鰯は水中の中で大人しく泳ぎ始めた。
しん、と静まり返る教室。そりゃそうだ、鰯と人間のコミュニケーションなんて
「わかりました」
って、委員長、わかったのかよ!
「ただ、名前で呼ぶのは鰯世界ではタブーのようで。呼び方は鰯でいいそうです」
わからなかったから適当言っているようにも聞こえるが。すると、再び鰯が跳び跳ねた。
「ごめんなさい。鰯ではなく、イワシと読んでほしいそうです」
がちで通じているようだった。委員長何者?
「えー・・・ま、そういうことらしいので鰯ではなくイワシをよろしくな」
まるで小説だから違いがわかるよね?的な発言のあとイワシは俺の隣の席へ置かれた。隣を見てみると、イワシと目があった。
「よろしくな、イワシ君」
返事をするかの如く、跳び跳ねるイワシ。しかし、残念なことに俺にはイワシ言語がわからない。と、そこへ委員長がやってくる。おお、麗しの委員長!ついに俺に告白を?
「相原くん。君ではなく、ちゃんだって」
って、そっちか!
どうやら、イワシは女の子らしかった。
こうして、俺のスクールライフに銀色の光が差し込んだわけだが
まさか、これからもこんなことが続く訳じゃないだろうな?
頼むから、やめてくれよ。イワシじゃなくて委員長との甘酸っぱい青春を!
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