「お誕生日おめでとう、あさひー!」
僕は大きな声でお祝いを伝える。視線の先にいるのはその当人。国民的アイドル、ストレイライトの芹沢あさひ。彼女は1月4日が誕生日なのだ。しかし、僕のウキウキした喜びの舞を踊るような気持ちは彼女に届いていないようだ。それどころか、しばらくポカンと僕を見つめたかと思うと(照れるぜ)手元にあった自分のスマホの操作に戻るのであった。
「って、塩対応!」
これを読んでくれている希少な読者にも思わず突っ込んでしまうこの気持ちをわかってほしい。とか何とか思っていると、彼女は操作していたスマホをテーブルに置いた。
「えっと…ありがとうございます?」
「お礼なんていいよ。気にしない気にしない」
「気にしないついでに質問いいっ…ですか?」
「敬語なんて不要さ。なんだいなんだい?なんでも聞いておくれたまえよ」
「あなた、誰っすか?」
彼女の質問に僕は何も答えられなかった。それもそうだろう。彼女の質問は直球で的を射ている。そう、僕はただのいちファンであり
全くこの事務所に関係がない。本来ここにいるべきでない人物だからだ。

静かな時間が流れる。聞こえるのは時計の音だけだ。他には誰もいない。当然だ。そういうタイミングを僕は狙ったのだから。とはいえ、いつまでも彼女を不安にさせてはいけない。僕は踊るようにくるりと回ると大袈裟に貴族のような頭を垂れた挨拶の姿勢をとる。
「僕は芹沢あさひさん。いや、ストレイライトのファンです」
「ファンの方、っすか。であれば、申し訳ないですがこの事務所は関係者以外立ち入り禁止っす。ライブの時にまた来るといいっ…ですよ」
ファンと聞いて彼女は笑顔で答える。当然本心ではないだろう。目がこちらをじっと見ている。何かをするかもしれないと警戒する目だ。それでも丁寧な対応を頑張っているのはチームメイトである彼女のおかげだろうか?
そんなことを考えながら僕も笑顔を絶やさない。
「そうか。それは残念。というより、申し訳ない。ファンとして恥ずべき軽率な行動だった」
元の姿勢に戻ると僕は彼女に背を向ける。
「改めて会いに来るよ」
「待ってるっす」
出口に向かって数歩歩いたところで僕は足を止める。振り返って、彼女を見ると不思議そうにこちらを見ている。
「どうかしたんすか?」
「いやさ。最後にひとつお願いを聞いて貰えたらなと思って」
「それは……少し図々しくないっすか」
彼女の目がやや険しくなる。いいね。その表情。
「さっきも言ったっすけど、ここは関係者以外お断りっす。勝手に入ったらダメなんすよ?」
「そうだね。でも、僕は君にお祝いを言いたいがためだけにここまでやってきた。君にお祝いを言うまで誰にも気付かれずにね」
僕の言葉を聞いて彼女驚きの表情に変える。これだけで気づいてくれるとは聡い子だ。
「……どうやってここまで来たんすか?」
「さてね。それを考えてもらうのが僕のお願いかな?」
そう言うと僕はまた出口に向かって歩き出す。
「待つっす!」
彼女が僕を呼び止める。はてさて、どうする芹沢あさひ。ここまで僕の考え通り。そして、次の彼女の言葉も予想した質問が来るはずだった。
「ストレイライトのファンって言ったっすか?」
「……そうだね。僕はストレイライトのファンだ」
「前に冬優子ちゃんが言ってたっす。ファンの人には親切にしなさいって。だから、せめて私のサインだけでもお土産に渡すっすよ」
先ほどの険しさはどこへやらにこやかな笑顔を浮かべる芹沢あさひ。その上、サインを渡すか。何を考えているんだろうか。しかし、この話乗らないわけにもいかないか。
「そうかい。それは嬉しいねえ」
僕は帰ろうとしていた足を止め再び彼女と向かい合う。メモ帳でもいいっすかと彼女はテーブルにあったメモへ手を伸ばす。もちろん何でも構わないよ。と返事をした時、ブブッと音が聞こえてくる。彼女が先ほど机に置いたスマホだった。グループチャットか何かだろう。裏向きで通知は見えないが何度も彼女のスマホが音を鳴らす。彼女は最初に目を向けたが気にせずサインを書くためのペンを取りに立ち上がっていた。
「見なくていいのかい?」
「大丈夫っすよ。ところでサインに書く宛名を教えて欲しいっす」
「素晴らしいファンサだね。でもいいよ。宛名はなくていい」
「それはダメっすよ。転売防止のために宛名も書かなきゃってプロデューサーが言ってるっす」
彼女はボールペンをこちらに向けてビシッと決める。そうか。それなら、と僕は名前を口にする。そして、彼女はその名前も記入するとメモを剥がして僕に渡してくれる。
「次はきちんとイベントの時に来て欲しいっす」
「そうだね。是非検討させてもらうよ。でも、ダメだよあさひちゃん。不用意にファンの人に近寄ったら」
「大丈夫っすよ。もしお兄さんが何かしても私の方が早く動けるっす」
「…それもそうか」
思わず笑いがこぼれる。作り笑いではない心からの笑み。そして、僕はサインを受け取るとポケットに入れた。
「さて、それじゃあ僕はこれで失礼するよ」
では、とドアノブに手をかけると同時に扉が向こうから開いた。


「あさひ!」
ドアを押し開けて部屋に入ってきたのはプロデューサーと愛依ちゃんと冬優子ちゃんだった。そして、椅子に座る私を見つけると冬優子ちゃんは飛びつくようにぎゅっと私を抱きしめた。
「冬優子ちゃん?」
「あさひちゃん、ケガはない?」
「愛依ちゃん、無事っすよ。むしろ冬優子ちゃんの方が痛いっす」
そう告げると冬優子ちゃんは力を緩めて体を離すと私の両肩に手を置いた。
「……バカあさひ!なんで逃げないの!」
「冬優子ちゃんも聴いてたんすよね?」
男が現れたあの時、私はスマホを操作してプロデューサーに電話をかけてスマホをテーブルに置いていた。通話状態にしておけば異常に気づいてくれると思っていたからだ。あの段階ではうまくやり過ごすか。隙を見て逃げるつもりでいた。そして、男は早々に帰ると言ってくれた。だけど、男は言った。
「あの男はストレイライトのファンって言ったっす。だから、ここで逃がしたら愛依ちゃんと冬優子ちゃんも危ないと思って。だけど、結局逃げられちゃったっす」
あの時、男が出ていくタイミングでプロデューサーが連絡した警察が事務所に入ってきた。通路側に開く扉だ。男は扉に釣られて警察に捕まるはずだった。だが、男はいなくなった。
「わたしが捕まえればよかったっすかね」
「バカ!何言ってるのよ!」
「でも、冬優子ちゃ」
「でもじゃない!それであんたに何かあったらどうするのよ」
冬優子ちゃんは再び私を抱きしめた。首筋が何か濡れる感触がする。
「良かった。本当に無事でよかった……」
「冬優子ちゃん。ごめんっす。だから、泣かないで欲しいっす」
「泣いているのはあさひちゃんだよ」
愛依ちゃんに言われて泣いているのは自分だと気づく。それと同時に体が急に重くなる。心がようやく現実に戻ってくる。

そうか。私は怖かったのか。

覆うように愛依ちゃんもぎゅっと抱きしめてくれる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
静かな部屋にすすり泣く声だけが部屋に響いていた。

日本某所。

高層ビルが立ち並ぶ大都会。

ここの人々は24時間休みなく働いている。

昼か夜かもわからないくらい常に明るいこの街にも暗い部分は存在する。

そんな闇に絡んだトラブルを解決するのが俺の務めるこの町屈指の探偵社。「虎上探偵事務所」だ。

え?探偵はそんな職業じゃない?気にするな。どうせ作者の夢なんだから。

 

そんなこの町屈指の探偵事務所にとある危機が訪れていた。

「え?今日も依頼ゼロ?」

「そうなんですよ」

「なんでもいいんですよ。猫探しとか浮気調査とか出前の配達とか」

「そう言われても無いもの無いですから」

慌てて捲し立てる俺とは反対におっとり落ち着いて話すのはここの事務員さん。

豊かな丸みを帯び出るとこが出ている体。何度見ても目を引くおじさん。

「って、ここは素敵な女性の出番だろう!頑張れよ、俺の想像力!?」

「ど、どうしたんだい。急に叫んで」

セルフツッコミに驚く事務員さん。そんな俺たちの会話に部屋のソファから声が混ざる。

「なーにどうせ坊のことだ。また変な妄想でもしてたのさ」

「年中頭の中が桃色だからなー」

ソファで向かい合い何やらボードゲームみたいなものをして遊ぶ大人2人。俺の先輩であるベテラン探偵たちだ。そして、

「というか、なんでライバル探偵事務所の貴方がここで遊んでるんですか?」

「んー?そりゃー僕も暇だからねー」

そう2人のうち1人はこの事務所の斜向かいビルに事務所を構える「龍々探偵社」のエースだった。

ここ最近、仕事がないのはてっきり相手側の探偵社に仕事を取られているからだと思ったのだが。

「いや、あってるよー。バリバリ仕事ウチが横取りしてる」

「やっぱり元凶じゃねーか。先輩、そんな奴追い出しましょうよ」

「んーま、別にいいんじゃね。ほい、アガりと」

「なー!ちょ、待った。待ったー」

「待ったなし。がっはっは!」

本当にこの人ら俺の憧れであるベテラン探偵なのかと疑いたくなる。そんな2人にいそいそとお茶を用意する事務員さん。なんだろう。転職考えた方がいいのかなとか考えていると、事務所のインターホンが鳴り響く。

「お客さんかな?」

はーいと事務員さんが扉を開けると1組の男女が部屋に入ってきた。そのうち長い髪を後ろで束ねた女性が言う。

「こちらに龍々探偵社の方がいると伺ったのですが」

「あー僕僕ー」

「って、お前の客かい!?他の探偵事務所を待ち合わせ場所にするなー」

大声で怒鳴る俺を気にすることなく彼はヒラヒラと手を振り続ける。

「いやーでも、これ向こうさんの要望でね」

「へ?」

「そうです。私が彼にここで話をさせて欲しいとお願いをしました」

驚く僕に説明するのは依頼人の女性。そして、横の男が2つのアタッシュケースをこちらに差し出す。

「これが今回の前金です。双方の事務所で1つずつ。そして、解決した際には解決した事務所にこの倍の金額をお支払いします」

そう言うと2人は同時に頭を下げる。

「ちょっと待ってください。まだ依頼の内容を我々は伺ってません」

「うちもー。ここで教えて貰えるって聞いたんだけどー」

「…………」

2人は何も答えない。いや、どう話したらいいか言い淀んでいる感じだった。そして、


というところで目が覚めた。

続かないよ。




久々に小説風に纏めたけどブランクありすぎのせいか読める物になってないね。

ごめんなさい。

2022年あけましておめでとうございます


半年ぶりか?

編集中で放置されてる下書きは沢山転がってるのに

投稿は5月末がラストとは


見に来る人はいないとはいえ

間を開けて申し訳ね


去年は仕事の方に全力投球して趣味は疎かにしてたからなー

本もそんなに読んでない

でもグラブルはやりこんでる。沼だわ。

なので、今年は自分のために時間を使いたい。

それも、休養ではなく成長する方向で。


具体的に何するとかは決めてないけれど

去年よりは落書きをしていきたい。


という今年の抱負。