「なぁ受付の高嶺さんってどう思う?」
 唐突な話題にたこ焼きを口に運んでいた手が止まる。発言者である彼は画面の向こうで少し照れくさそうにしていた。私は意味を考えつつ、ひとまずたこ焼きを口へと放り込む。熱々のたこ焼きを噛みながら私は質問に答えた。
 「どうって…素敵な人だよな」
 「だよなあ。本当、憧れだわ」
 そう言うと、彼はテーブルに腕を組み突っ伏す。その拍子に押し出された飲みかけのチューハイ缶が彼の姿を見えなくした。
 「画面が隠れてるぞ。私はチューハイ缶とオンライン飲み会やるきはないぞ」
 「あ、ごめん」
 缶が動いて、画面にまた彼が映し出される。ちなみに突っ伏した状態は変わっていない。私は自分で作ったシャンディガフを飲みつつ、彼が何を悩んでるか推理する。ほどなく、原因らしきものが思い浮かんだ。
 「もしかして、5月の飲み会でやらかした話?」
 「………なんで知ってるの」
 「そりゃあ、噂になってたからね」
先月の事だ。彼の部署でちょっとした飲み会があった。いつもなら、彼も大丈夫だったのだろうが、その日はたまたま夜更かししていたこともあり。宴席でべろんべろんに泥酔してしまった。 
私はその日、出張に出ていたのだが。後日、社内ですぐに噂が回ってきたためこの話を知っていた。 
「その時、介抱してくれたのが高嶺さんか」
 「………正解」
 彼は突っ伏したまま、画面向こうのこちらに指をさす。その手でチューハイ缶に手を伸ばすとようやく顔を起こした。軽い音。どうやら一気に飲み干したらしい。
 「…何か噂になってないことがその日にあった?」 
「いや、それはない。ごく一般的にかつ適切な介抱をしてもらったよ」 
「?それじゃ、何を悩んでるんだ?」 
「悩んでるっていうか…」
 画面向こうで不貞腐れ気味の彼を見て、私はようやく本当の原因に気がついた。
「そういえば、高嶺さんには好きな人がいるらしい」
 「…知ってる」
 「噂では最近、食事に誘ったのだとか」 
 「………」 
 「だけど、その相手は断ったらしい」 
 「え?なんで?」
 「さてね?ただ一つだけわかることがある。彼女は高嶺さんのようなイケメンとの食事より、こうして画面越しでも恋人と話す方を選んだ。それだけの話さ」
 そう言って、私は画面向こうの恋人に微笑んだ。