空かずのロッカーといえば、誰しも一度は耳にしたことがあるのではなかろうか?

例えば都市伝説で。例えば怪談で。

その中でも一番多く聞くとすればやはり学校の七不思議ではないだろうか?

歩く二宮金次郎やトイレの花子さんなど聞くだけで恐ろしい七不思議の中で、ただ開かないだけのロッカーがなぜ七不思議に含まれているのか?

不思議ですね。

残念ながら、私はその答えを知りません。

ですが、代わりに違う形の空かずのロッカーについてお話しさせていただきましょう───




***




学校は共同生活を学ぶための場所であり、基本的にそこにあるものは公共のもの。すなわち、誰が使ってもよいことになっている。

とはいえ、人というものは自分のスペースというものを必要とする生き物であるらしい。

特に年を重ねれば重ねるほど、自分のスペースの必要性は増していく。

その一つはやはりロッカーであろう。

小学生の頃はただの棚だったものが、小さいながらも鍵付きの場所を割り当てられるのだ。

しかしながら、そこはやはり子供のための公共施設。セキュリティはものすごく低く一般的に3~4桁のダイヤルキーだ。

つまり、1000~10000通りの確率で誰にでも開けられてしまうのだ。


最近ではスマートフォンの普及や個人情報管理の観点でダイヤルキーに加えて別の鍵を任意で取り付けられたりもするらしいが。

残念ながら、私の学校では行われていない。

ダイヤルキーも3桁ならぬ2桁。もはや、お飾りレベルである。

とまぁここまで言ってみたものの。私には特に大事にしまわなければならないものもないわけで2桁のダイヤルキーでも全然問題ないのだけれど。

「また増えてる・・・」

目の前のロッカーにはダイヤルキーの他に南京錠が二つ。電子キーが一つ。更に別のダイヤルキーまでついていた。

そう。これが私の抱える問題。「もう一つの空かずのロッカー」だ。


こうなり始めたのは、一ヶ月前くらいからだ。

始めはダイヤルキーの番号が変えられていただけだった。

もちろん、びっくりしたものの2桁であることが幸いし、すぐに開けることができた。

だが、それはしばらくするとまた変わっていて。そして、違う鍵をつけられていたのだ。

さすがのこれには困惑したものの、学校の備品である金切りのこを借りることで難をしのいだ。

そして、鍵をつけられては解除し。切り離し、破壊し。そんな日常生活を送っていた。


「いったい、何が楽しいのかしらね。その人」

「さぁね。強いて言うなら、私への嫌がらせじゃないかしら?」

久しぶりに違う学校へと行った友達と遊びに出掛けた日。途中で寄ったカフェでなんとなくその話になった。

「嫌がらせねぇ?ねぇその鍵って毎回壊してるわけ?」

「元々のダイヤルキー以外は。流石に四桁のダイヤルキーを合わせるの大変だし」

「それって、本当に嫌がらせなのかしら?」

「どういうこと?」

「ほら、鍵って結構な値段するじゃない?それを毎回、つけてるわけだからそれは嫌がらせというより好きな子をつい虐めたくなる的なあれじゃない?」

「好きな子を。ねえ」

なるほど。そういう考え方もあるのか。


その事があってから、私は鍵を開けるのがだんだん楽しくなってきた。

毎回切ると、マンネリになるかとも思ってたまにはピッキングしたり、薬品でとかしたり。

そんな私に対抗するかのように彼も多種多様な鍵を使ってくる。

面白くなってきた私は中にメッセージを残すことにした。

もちろん、彼に対するメッセージだ。








「うわ!また、やられてる」

「派手だなぁ。相変わらず、犯人わかんねーの?」

「わかんねえ。やめてくれよ。勝手に人のロッカーをあけるの」

「もう先生にロッカー代えてくれるように頼んでみれば」

「頼んだんだけど、空いてるロッカーがないからダメだって。もう最悪だよ。なんか取られてるなら、まだしも何も変わってないってのが余計に怖いんだよな。・・・なんだこれ?」

「手紙?」

「早く・・・私を見つけてごらん?・・・気持ち悪!」

「あー、これ、完全に楽しんでるわ。このストーカー」




***




死にかけの猫が入った箱がある。

箱を開けなければ中がどうなっているかわからない。

ということは、確認するまで猫が生きている世界と死んでいる世界の二つが存在する。

というのは、有名なシュレティンガーの猫という話。

開けて確認するまでに色々な想像を膨らませられる。それが人間のすごいところでもあるんですけどね。

貴方は空かずのロッカーがあったら、あけてみますか?












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