AKB48小説 「干支物語」

AKB48小説 「干支物語」

48グループのメンバーと十二支を題材にした小説です。

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side月哉





物心ついた時には僕の生きる意味を知っていた。


何百か何千かのその心がどっと空っぽの容器に水が満ちていくように僕という入れ物に流れ込んだ。



どの心にも、姿、形が変わっても同じ人が見えた。


今は僕の兄…


それは彼も感じるものだと思っていた。でも僕だけだと知った。


僕の生きる意味とは彼をあらゆるものから守る事…


理不尽には感じたことはない。


彼のそばは明るく暖かいから…



月哉「現れたね。」


恐らく、兄さんは未と憑かれた子に会った。


兄さんが追い詰めたのか、それとも未に仕掛けられたか。



ポケットの携帯を取り出す。


一人暮らしの部屋から出て、学生マンションの階段を降りながらいじる。

今は酷く冷静だ。

それは手中に収まってしまった兄さんが殺される可能性はないと踏んでいるから。

未は兄さんが画策している十二支の多数決の保険なんて強気には言っていたが、恐らくなんとしても手に入れたいはずなんだ。


予想すると、十二支達がいる世界にも未の分身がいて十二支の何匹かが兄さんに賛同をする事、そしてまだ午が憑かれた子から縁を切られてないのをあちらに戻ってないと知ったんだろう。

そこから半数に届く見込みが少ないと悟った。


とすると…


携帯が震える。

知らない番号。


月哉「お掛けになった電話は現在電波の届かない所にあるかやる気とか元気とかそういうのないからつながりません。用件を手短にどうぞ。」


未「お前の兄貴を捕まえた。取り返しに来い。」


月哉「そのうち行くから、場所を教えてもらえるかな。」


未「猫がついた娘に教えた。一緒に来い。」

月哉「面倒だな…。」

通話は一方的に切られる。


「さて…どうしたものでしょう。」


あからさまな罠だけど。ここで動くことが得策なんだろうか…でも、何か策があるわけじゃないしな。

携帯がもう一度震える。メールだ。


=from*****=
=title Fw:
陽斗さんの弟さんですか?島崎です。

陽斗さんからこんなメールが来て

すぐに来てください!
私も向かいます。


《転送元のメール》

ぱるるちゃん、未に遭遇した。
今から送る地図の場所に月哉と来て欲しい。



……………

………



全く…わざわざ人質増やすような事しなくても。



いや…ここは、飛び込むほうがいいのか。



添付された地図に従い、兄さんが捕らわれたであろう場所に向かう。




港に面した廃倉庫。

ベタだな。



遥香「こっちです!」

月哉「なんでこんな簡単な罠にのったの!?今、君の存在がどれだけこの状況を左右するかわかっているのか!!」

遥香「私は助けたくて!それで!」

月哉「はあ…わかってるよ。とりあえず猫さんを。」

遥香「それが…」


猫さんは兄さんと一緒か…

月哉「それもわかった。とりあえず行こう。」


廃倉庫の少し開いた扉から中に入る。

入り口付近の高い天井にぶら下がる電灯からの光でははっきりと奥までや全体は見通せない…

窓は全て塞いであるため蒸し暑い。


入ると入り口の扉が閉められる。

遥香「え!?」

月哉「いい、どうせこのままじゃ帰れないんだ。」

遥香「は、はい!」



奥の一点に照明が当てられる。


兄さんが椅子に座らせられている。


特に縛られた様子もない。

気を失っているのか。



未「やっと来たか。お前の兄貴と猫はこちらで預かる。こいつらをかけて遊ぼうぜ?」

暗がりで未の所在が確認できない。

月哉「僕に嘘つかれたのまだ根に持ってるのかな?」

未「そんなことは今更どうでもいい。純粋にお前のほうが遊びがいがあると思っただけだ。」

月哉「そう、それで何して遊ぼうか?」


未「これだ。」

照明が落とされ、何も見えなくなる。

島崎さんの手を掴み引き寄せる。


ドタバタと足音が聞こえ、収まるともう一度今度は全体の明かりがつけられる。


月哉「…」


先ほどまで兄さんが1人座っていた所に今度は沢山の人間が現れる。

全て同じ服装、全てが同じ顔…

月哉「悪趣味だな…」

遥香「陽斗さんが沢山…。」

未が、憑いたであろう女の子と現れる。

美優紀「初めまして、渡辺美優紀です。」

遥香「みるきーが…未に憑かれた子?」

美優紀「ぱるるさん、おはようございます。そんな顔せんでくださいよ。イライラするから。弟さんも負けてくれると助かるんやけど。」

月哉「さあどうだろうね。」


未「名を”真実の選択”300人いる中からお前の兄貴を見つけろ。お前らには5回質問する機会をやる。こいつらは意識を失っているが深層心理に訴えかけると答える。問いと選択肢の数を宣言してその選択肢の中からお前の兄貴が答えた物以外を除外していけ。最後にお前の指名した奴が本物ならお前の勝ち、俺の出した分身を選ぶかその前にお前の兄貴を除外したら俺の勝ちだ。」

月哉「言っとくけど…僕は兄さんとそれ以外くらい見分けつくけど?」

未「そんなハッタリ動揺すると思ったか。少し前ならそうだろうが、しかし、俺はある分身を元にほぼ完璧な分身を作った。」

ある分身…

月哉「ヨウ君か…」

未「あのガキは失敗かと思った、しかし作り出した瞬間からあれだけの自我を持っていた。こいつの力で歳は違ったが美優紀の力も借りて誤差がない存在を生み出した。99%以上お前の兄貴と変わらない存在だ。」

月哉「なるほど、僕の方が圧倒的不利な訳か…。」

未「それじゃ面白みにかけるからな…お前に有利な部分もある。密約の契りだ。」

月哉「どういうこと?」

未「俺の分身は性格、記憶なんかをそっくりそのままに作り出せる…が、その人間と他者1人が体験したこと、秘密にしたことは引き継げない。」

月哉「じゃあそこから、質問したら兄さんを見つけやすいってわけだ。」

未「それが本当に2人しか知らないと言い切れるか?少しでも第三者に漏らすか関わられたら、密約じゃなくなるんだぜ?」

秘密だと思っていたことが周りが知ってるなんて人間なら不思議なことじゃない。
つまり確信が持ててもリスクがある。安易には問えない。


遥香「そんな…。」

月哉「僕もそんなに馬鹿じゃない。これでフェアに行えると思うな。」

未「それでは、お前の兄貴を賭け」

月哉「あ、待った。」

未「なんだよ!始まってからじゃダメな事か!?」

月哉「ダメだね。まず一つ聞きたい、真実の選択ってぐらいだから兄さんへの質問や答えが正しくないとだめなのかな?兄さんが選べれば問題ない?」


未「知った事かお前の兄貴とお前らがどれだけ信頼し合ってるかを試すだけだ。真実とはお前の兄貴のことであって問題の答えじゃない。お前の兄貴が答えるのを見抜けるなら何だっていい。当然、見抜けないような質問したら全てを除外せず残せばいい。問いを一つ減らすことになるがな」

なるほどな…うまく使えば勝負はやりやすくなる。ただ、兄さんがそこまで僕の考えについてこれるかはいささか不安が残る

遥香「今のどういうことですか?」

月哉「いや、特に意味はないよ。君には僕が質問する事に困ったら頼むから考えておいて。」

遥香「はい…わかりました。」

月哉「あと、未やそこの君が分身に対してこれから干渉することは無しにしてほしい。」

あとはここが勝負を分ける…

美優紀「ええで、うちらが指示するより、ここにいる299の分身の中の1人が指示出した方が良さそうやし。」

未「さっきも言ったが、99%以上同じ存在の分身が自分が残る為に最善の策を取る。俺らから指示することはない。」

月哉「そう。ならいいんだ。始めようか…」


未「改めて、お前の兄貴をかけて”真実の選択を始める。さあ、一つ目の質問を出せ。」

遥香「もう、決まっているんですか?」

月哉「まあね…選択肢は3つ。
問いは、僕について…僕が初めて人を好きになった時、僕はその人に告白をすることはなかった。その理由は次の内どれ?
1.その人が兄さんを好きだったから
2.その人が僕の名前を間違えて呼んだから
3.その子は引っ越して会えなくなったから

これでうまくいけば…




未「選択が終了した。では、第1問の選択の内訳を発表する…1番100人、2番99人、3番101人だ。この中からお前が残す奴らを選べ。」

美優紀「あーあ、こんなに人数いる中から選べるかなー。」
遥香「ほぼ同数ですよ!?どうするんですか!?」

月哉「君達は何故この様な分かれ方をしたかわかってないようだね…残すのは3番だ。」

3番を選んだであろう101人を残しその他のが音もなく消えた。

遥香「そんなあっさり決めていいんですか!?」

月哉「いい。さあ、今の中に兄さんはいるのか未?」


未「…いる。真実の選択は第2問目に入る。」

遥香「良かった…。でもやっぱり2人だから解る事があるんですね。」


月哉「え?君まだわからないの?今の問題に答えなんかないよ。」


美優紀「何言うてんの、現に当たったやん。」

月哉「今の問題は適当に作った嘘さ、でも選択肢にはそれぞれありえそうな物を用意した。考えてみてよ、兄さんとほぼ同じ分身達がいるのにどうして3つに分かれるのか?それは明確な解答は導き出せないからだ。そして彼らが1番と思った解決策が分散させること。」

遥香「じゃあ陽斗さんはわからないけど一つ選んだんですか!?」

月哉「そういう事だね。そしてこの問題によって公平性は更に増した。」

遥香「なんでですか?」

月哉「分身が兄さんの答えを確認することは出来ないことの証明にもなったからね。答える番号がわかるとすれば300、0、0とか全部に100なんてことも出来たろうし…ただ…」

遥香「ただ…なんですか?」

月哉「いや…別に。」

101になったってことは分身が100、100、99に分かれたってことになる。兄さんが3分の2選んだのか…

遥香「こういう問題を出していけば陽斗さんを見つけやすいってことですね!」

月哉「それは2問目にかかってる。」

未「では第2問目の選択肢と問いを出せ。」

月哉「ではこれも選択肢は3つ。問いは…僕が今日食べた朝食は?
1.パン
2.パンケーキ
3.ご飯
さあどれ?」

遥香「これも、月哉さんしかわからないですよね。」



未「選択が終了した。内訳を発表する。1番33人、2番33人…」


遥香「2までで66人だから101から引いて…3が1番多く!」

いやこの分かれ方は…

未「3番33人だ。さあ残す物を選べ。」

遥香「なんで!?2人足りないじゃないですか!!」

未「今の問題では2人の分身が無回答をした。よってこの内訳になった。」

やられた…