マティスが好きな方、結構多いですよね。

 

https://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2019-01-20/31/11508/1902789/

 

「色彩の魔術師」と呼ばれたアンリ・マティス。
病気療養のために絵を描きだしたのをきっかけに、その後、美術学校で基礎を学びながら新しい表現方法を研究していきます。

当時は印象派が自由な絵を描いていた頃。マティスも南フランスの「コリウール」という色とりどりの建物が立ち並ぶ街の景色を、窓をモチーフにして非現実的な色彩で描きました。

しかし、あまりにも強烈な色彩のため、それらは「野獣派(フォーブ)」と呼ばれました。
元々マティスは病気療養での「癒し」として絵を描き始めたこともあり、その絵を「野獣」などと評価されることにものすごく抵抗を感じたようです。

スタジオでは、マティスファンの俳優である津田寛治さんが「マティスの描く赤い色」に注目して話されました。
津田さんはマティスの代表作である「赤のハーモニー(リンク先にある左側の大きな画像)」で描かれている赤が好きだそうで、「マティスの赤は、人の心を温かくする赤。べたっと塗られた赤だが、そこにネガティブさはなく、温かさやチャーミングさを感じる」とのことでした。


「赤のハーモニー」では、窓から見える外の「緑」と室内の「赤」は対比色です。

直に隣り合わせにするとお互いがお互いの色をより鮮やかに見せてしまい、ぎらつき感が出てしまいます。それをなくすために外と室内の境にある窓枠にオレンジ色と黄色を使い、室内から窓の外に視線を移しやすくしています。
また、絵に散りばめられた黄色の配置も鑑賞者の視線を動かすキーポイントになっています。

この絵を見ると、最初に目がいくのは女性だと思いますが、女性の持つ果物入れにある果物の黄色、そこから左向きにお酒や果物の黄色が並び、窓枠の黄色を越えて外の景色の黄色の小さな花へと視線が移っていくルートが一つ、もう一つは女性の持つ果物入れから室内の真ん中にある果物入れの果物の黄色、さらにその上にある花瓶の花の黄色、その左に同じ高さにある外の景色の黄色の小さな花に視線が移るルートが見えてきます。

どちらにしろ、マティスは鑑賞者の視線を赤い室内から緑が萌える外の景色へ誘導するように意図的に描いていることは確かで、野獣どころではない熟考と緻密さで描かれたものであることがわかります。

マティスの作風は一時、第一次世界大戦の影響を受け、暗く重い、黒がメインのものになります。

同じコリウールを題材にした絵でも、以前の丸さは消え、エッジの効いた線で描かれた窓の奥に描かれたのはべた塗りの黒の景色。

ただマティスの場合、単に暗い時代の雰囲気に飲まれただけではなく、その時代の雰囲気を利用して積極的に新しい表現へのチャレンジをしていたようです。

マティスは、「自分のデッサンというものはすでに確立しているが、色彩については新しい平塗りの方法に縛られている」と思っていたようで、色彩の魔術師と言われるわりには晩年まで自分らしさを表現するための色彩方法を模索していました。

それは晩年、病気で絵筆を持てなくなった後も続きます。ベッドと椅子から動けない生活でもできる創作活動として、切り紙絵(カットアウト)に没頭。切り紙絵だと最初から紙の色は変えられないことから、今までとは違う色彩ありきの表現方法にチャレンジすることになりますが、これがマティスには合っていたようで「絵画の制約から解放された」と話しています。

その後手がけた南仏ヴァンスのドミニコ会修道院ロザリオ礼拝堂はすべてマティスがデザインした教会で、青と黄のステンドグラスの反対側の白壁に太く黒い線だけで描かれた単純な絵があり、ステンドグラスに光がさすとその色が絵が描かれた白壁に移ります。

これもマティスの色彩に関する新しい試みだったのでは、と私には思えました。

以前の放送で紹介した染色家の柚木沙弥郎氏が、番組内のVTRでマティスの切り紙絵を「単純ではないが、単純である」と評価していました。

また、津田さんも「スタイルを変えられるというのは、芯が通っているということ。逆に言えば、芯さえあればスタイルをいくら変えても『らしさ』は残るし、芯があるから新しいスタイルに臆せず挑戦できる」とマティスを評価していました。

自分の芯であるデッサンにブレがない分、色彩の追求のためにあらゆる方法を試したとしても「マティスらしさ」は消えず、むしろ極限にシンプルな色彩になった「切り紙絵」という方法によって最も自分の理想に近付いたのは、以前紹介した篠田桃紅氏や坂本龍一氏の「ピュア」の話に通じるものを感じました。

 

 

 

【ここからはファッションの話】

 

「赤のハーモニー」で書いた視線の誘導ですが、これはファッションでも使える方法です。

私は髪を染めていないので黒髪ですが、茶髪以上に色の主張が強く、特に白っぽい服とのコントラストがつきやすいので、そういう服を着た際には靴に黒をもってくることで、自分を見た人の視線を全身に散らせて統一感を感じさせるようにしています。

また、頭と足先の中間に位置するバッグにはグレーなどの中間色、もしくは服の中に使われている一色をもってくるようにすることでより統一感が出ます。

 

統一感があると体のパーツが分断されないため、背が高くスタイル良く見えるのと同時に、相手の目に負担なく、心地よく、自分の姿が入ることで、自分に対してより良い印象やずっと見ていたい感情をもたせることができると思います。