20年ほど観るのを避けていた映画、「星になった少年」をようやく観ました。


なぜ避けていたかというと、主人公の少年が死んでしまうことを知っていたので、


そんな映画は悲しすぎて辛くなると思ったからでした。


この映画は実話なので余計に耐え難いと思えました。


でも、NHKの番組「地球ドラマチック」でなんどもゾウを目にするうちに、どうしても観たくなったのでした。


主人公の少年はゾウ使いになるために日本から初めての外国人生徒として、タイのゾウ使い学校に入学します。


食事は虫やトカゲが出され、どうしても食べられない少年は孤立していきます。


でも、ファーという子ゾウの母がわりになり生活するうちに、次第に仲間と打ち解けていきます。


とくに校長のおじいさんの愛情は厚く、少年の心を育んで行きます。


2年間のゾウ使い学校を卒業し、日本に帰国し高校生となった少年は、年老いたゾウたちが最後に憩えるゾウの楽園を作ることを夢見るようになります。


そうしたなか、動物キャストを育てる動物園の実家で、日本初のゾウさんショーを行うことになります。


困難を極めるなか、タイ語で子ゾウのランディを調教し、立派にショーを成功させた少年は、ショーの冒頭であるスピーチをします。


それは、子ゾウを調教するためにはまず母親から引き離さないといけない悲しさと、そんな悲しい思いをさせてまで人間とともにいてくれるゾウたちをいかに大切にしないといけないかを切々と訴えるものでした。


息子のややきつめの調教に疑問を抱いていた母親も、ようやくその真意に気づくのでした。


ゾウ使いとして立派に成長した少年は、ある日用事のためにバイクで出掛け、飛び出してきた猫をよけようとして、トラックに跳ねられてなくなってしまいます。


その瞬間、遠くの音も聞き分ける能力を持ったゾウたちが一斉に叫び泣き出すのです。


ゾウたちの迫真の演技に、普段映画ではあまりなかない私がつい泣いてしまいました。


少年がバイクに乗らなければ生きていたのでしょうが、亡くなったことで映画にもなり、彼の思いが世界中の人々の心に届いたことを思うと不思議な気持ちになってしまいます。


音楽は坂本龍一で本当に美しく、俳優陣も、倍賞美津子さん、常盤貴子さんを始め実力派ぞろいでした。


そしてやはり主人公哲夢(てつむ)くんを演じた柳楽優弥(やぎらゆうや)くんの演技が本当に素晴らしかったです。


名作といわれる邦画はたくさんあるでしょうが、マイナーながらもこの映画も、間違いなく名作なのではと思わされたのでした。