星野道夫「早春」 アラスカの自然を旅していると、 たとえ出合わなくても、 いつもどこかにクマの存在を意識する。 今の世の中でそれは何と贅沢なことなのだろう。 クマの存在が、 人間が忘れている生物としての緊張感を呼び起こしてくれるからだ。 もしこの土地からクマが消え、 野営の夜、何も怖れずに眠ることができたなら、 それは何とつまらぬ自然なのだろう。 (星野道夫著 「旅をする木」)