登山靴に蜜蝋を塗りこんでいたらこんな時間になってしまった。
登山道具の整備は全て素手で行う。
素手が一番いい。
道具の痛み加減や調子が一番はっきりと把握できる。
目ではよくわからない。
五感のうち俺が一番信頼を置いているのが、この触覚である。
次が味覚かな。
その次が嗅覚。
視覚や聴覚は最後の方だ。
平時において視覚が狂うことは滅多にないけれど、
山でこの感覚に頼り切ってしまうとすぐに遭難する。
視覚から得られる情報は計器や地形図で補正しながらでないと使えない。
ちなみに聴覚はほとんど当てにはならない。雪崩、落石、落雷この三つの予兆
をつかむときに使うだけ。
聴覚を信頼する人は「耳元でささやく霊」に一晩中悩まされたりする。
チャートや板は視覚的情報である。
これを補正してくれるものが俺の中に芽生えないものだろうか。