四年ぶりに帰郷した。
ここで挙式するという妹のためだ。
四年ぶりのこの地は、相変わらず湿気が多く、幹線道路沿いのコンビニにはいちいち丁重に駐車場まで完備されている。
チェーン店のデカデカとした看板を眺めながら、家路についた。
久しぶりに実家の戸をくぐると、相変わらず母は不機嫌だった。
随分と小さくなった身体で、不機嫌を精一杯表現する母を見て、
果たして疲れないのだろうか、という心配さえした。
それを父に訊ねると、母親に期待しすぎだよ、と半笑いで返ってきた。
それ以上、両親と深い話をすることはなかった。
妹の結婚式は感動的だった。
愛しい妹の晴れ舞台にせめて良い姉を演じたくて、元夫がくれた1ctの婚約指輪をつけた。
時たまふんわり触れる、ファンデーションが綺麗に施された妹の肌は、
柔らかく清らかで、高貴に満ちたものだった。
彼女の目前には、誰もが想像する幸せな結婚生活が広がっているようだ。
車を買い、戸建てを買い、子供好きの配偶者のために子を2人もうけたいという。
お姉ちゃん、どうやったら料理上手になれる?と訊く妹に、ひたすら勉強して場数をこなせ、とだけ伝えておいた。
結婚において何が幸せか、誰と結婚したら幸せなのか、
その答えは堂々巡りのままである。
ただ、最近核心に近づいた事実がある。
友人に、あなたって元旦那さんと仲の良い親友みたいな関係よね、と言われて気付いた。
夫婦になると、恋人の頃の恋心など、ほんの数年で消失する。
その後、恋だの色情だのが消滅した夫婦のいく末の関係性は、親友なのだ。
何でも言い合える、相手の幸せを願える、まるで親友のそれである。
浮ついた恋心が完全に消滅したとて、親友として彼のことを愛したいと思えるか、
そしてそう思えるほど尊敬に値する相手であるか、
男たちの瞳の奥を覗き込む日々である。
空港まで送ってくれた父に別れ際、新しい婚約者ができたら今度連れてくるよ、と言い残し、飛行機のシートに身を埋めた。
機体が羽田に近付くと、窓から見える高層ビル群に心底ホッとした。
優しい友人達との別れは名残惜しいが、
当分、あの家畜臭く湿った空気を吸うことはないだろう。